寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

学び直し、税制で背中押せ

誰しもに学び直しの機会を実現するためには、

こういった観点が欠かせないと私も思います。

日経新聞より。

 

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生産年齢人口が減少する中で経済成長していくには、1人当たり労働生産性を高める必要がある。それには人的資本の質の向上がカギを握る。継続的な賃金の引き上げは、人的資本と労働生産性の向上があってこそ可能になる。

 

記事の冒頭は上記のような文章が掲載されていますが、

人的資本の質の向上を図るためには、

研鑽が鍵になることは言うまでもありません。

新聞記事では企業レベルでの学び直しについて採り上げられることが多いですが、

その取り組みと同時に必要になるのが、

雇われる個人が自ら学び直しをしようという動機と具体的な行動、

ではないでしょうか。

 

個人が学び直しをする場合、給与所得者は特定支出控除として研修費・資格取得費が認められている。一方、自らリスクを取り会社を辞め貯金を取り崩して学び直しをする者は、そもそもの所得がないので、費用を控除することはできない。そこで、彼ら・彼女らに、転職後の収入から複数年にわたって学び直しの費用を控除できる制度(能力開発控除)を創設してはどうだろうか。学び直しに向けたインセンティブも高まる。

このような税制は決して理論から外れたものではない。設備など物的投資の場合には、費用と収益とを対応させる減価償却制度があり、投資費用は複数年にわたり費用化され控除できる。学び直しの費用を人的資本投資ととらえれば、転職後の収入から複数年にわたって控除させることは理にかなう。学び直しによる人的資本の形成は、将来より大きなリターンを生む投資なので、物的投資と同様に扱うことには説得性がある。

 

以前に「人的資本会計」というジャンルについて耳にし、

また論文もいくつか読んでみたのですが、

まさに上記に近い内容が書かれていたことを思い出します。

人にかかる投資を複数年度にわたって費用化する、

という考え方があっても何らおかしくないと思いますし、

人に対する投資は単年度で成果が現れるほど単純でないことが多いことからすれば、

こういった考え方の方がむしろ自然で正確な費用の捉え方なのではないか、

と思うくらいです。

 

そしてこのような考え方は、私学における研鑽のしくみにも

採り入れることができるかもしれません。

すなわち、各教職員に対する研鑽にかかる費用の援助を行う際、

その費用を単年度で負担するのではなく、

効果が発現する期間にわたり按分するなどの方法を採ることで、

より長期を見据えた研鑽に力点を置くことができ、

研鑽の活発化を図ることができるのではないか、ということです。

もちろん、外部公表用の決算書においては

公のルールに従う必要がありますので上記のような処理は難しいですが、

学内の管理会計であれば十分に対応できるでしょう。

 

目の前のことだけでなく、中長期で組織力が高められるような

学び直しが進めばいいですね。

 

(文責:吉田)

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ウィズコロナの新年度 対面授業再び、その先に

新年度に入り、日経新聞に連載された記事から。

 

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記事の最初に登場するのは関西学院大学

今春、原則対面授業に全面移行しました。

半分までとしていた教室の定員制限も撤廃し、

食堂ではキッチンカーを増やして混雑を解消するなど、

感染対策とキャンパスライフの両立に知恵を絞っておられます。

慶応大学では9割超、そして東洋大学でも原則対面を基本に据え、

新年度の大学生活がスタートしました。

 

一方、コロナ禍で向上したオンライン授業の技術を生かし、

新しい学びのカタチを模索する動きも芽生えつつある、

と記事で紹介されているのは東北大学

来日できずにいる留学生と日本の学生が、仮想の教室で、

動物をモチーフにしたアバターなどで議論する授業を取り入れました。

東北大学は対面復帰を急ぐ他大学とは一線を画し、

対面か遠隔かを学生が自由に選べる「ハイフレックス型授業」を掲げています。

この授業ではイヤホンを通じて左側にいる学生の発言が

実際に左耳から聞こえる技術も採用したと言いますから、

その本気度が伝わってきますね。

 

ちなみに、ハーバード大より行きたい大学と言われるミネルバ大学には、

8年前の開校時からキャンパスがなく、授業は全てネット上の討論。

ただし学生は4年間で世界7都市を巡って寮生活を送るそうです。

「ネットと対面のいいとこ取り」をどのように実現するか、

というのがこれからの学校のスタイルを決めるような気がします。

 

さて貴校園の新年度の姿はいかがでしょうか。

コロナ以前に戻りたい、という気持ちの本質が何なのか、

学校や個人がそれぞれにしっかりと考えた上で、

今後の貴校園の在り様を形作っていくことが肝要なのではないでしょうか。

そこに必要なのは、慣れ親しんだやり方、ではなく、

あくまでも「より良い学びの実現」でしょう。

 

(文責:吉田)

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運用益でトップ大学育成

政府が設置したファンドは今後機能していくのでしょうか。

日経新聞より。

 

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日本の研究力低下が止まらない状況を改善しようと、政府による10兆円規模の大学ファンド(基金)が本格的に動き出す。「科学技術立国の推進」を掲げ、国内大学の研究力を世界レベルに高める切り札と位置づける。ただ対象は数校に限られ、世界のトップ大学に迫るのは簡単ではない。有効な活用法を模索する必要がある。


以前このブログでも採り上げましたが、

本件ファンドのしくみは下の図の通り。

10兆円規模の資金を運用し、

5年以内に年間3,000億円の運用益を生み出したうえで、

そこから1校あたり年間数百億円を支援することで

研究力で世界と渡り合える可能性を持つ国内大学を生み出す、

というストーリーが立てられています。

 

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現在の日本の研究力は決して高くなく、

文部科学省の科学技術・学術政策研究所によりますと、

指標となる被引用数がトップ10%に入る「注目論文」の数は、

主要7カ国(G7)で最低の10位。

しかも順位の急落は2000年代の半ばから顕著とのことですから、

基礎研究を軽視し、短期的な成果を狙うようになったことの

影響が及んでいるのではないでしょうか。

 

そして、この新たなファンドによる研究の活性化には

いくつかの問題点がすでに指摘されています。

 

ひとつは運用益をあてる仕組み。

関西学院大学の宮田由紀夫教授は

「米国では私立大学も研究費の多くが政府の資金で支えられている。

 日本も研究力を高めるには科学研究費補助金科研費)や

 大学院生への奨学金を増やす施策の方が本筋だ」と指摘しています。

 

そして、資金の使い方。

米国の名門私立大の場合、寄付による収入や資産運用益は

「研究だけでなく奨学金などの教育活動にも活用し、

 優秀な学生を集めて大学ランキングが向上する要因になっている」

(宮田教授談)とのこと。


さらに、ファンドでの支援対象。

政策研究大学院大学・永野博客員研究員は

「大学格差が比較的少ないドイツと比べると、

 日本では東京大学京都大学などのトップ層は比較的強みを持つが、

 中間層の弱さに課題がある」と指摘しています。

実際、2013~17年の平均の論文数を調べると、

各国それぞれで上位7位までの大学の比較では、

日本はドイツよりも多く論文を出しているにもかかわらず、

8~50位ほどまでの中間層では一転ドイツが上回るそうです。

「ファンドによる支援対象が数校にとどまれば、

 国内上位層と中間層の格差がより一層広がる懸念があるのではないか」

と永野研究員は話していらっしゃいます。

 

大学はもちろんのこと、高校以下の学校種においても、

収入が限られる中で、教育機関としての生業を

どうやって維持、発展していくのか、

知恵を絞るべき局面が到来しています。

限られた収入をいかに配分し、学校の活動を活性化させるのか。

しっかりと考えておかねばならないテーマではないでしょうか。

 

(文責:吉田)

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東京学芸大に専門学校

今後ますます、収入確保は重要性が高まっていくことでしょう。

このような例が日経新聞に掲載されていました。

 

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東京学芸大学(東京都小金井市)は(3月)31日、辻調理師専門学校を運営する学校法人辻料理学館大阪市)と連携協定を結んだ。辻料理学館にキャンパス内の土地を貸与し、2、3年内をめどに専門学校を開校する。国立大学は2016年の法改正で土地の貸与が可能になったが、専門学校の誘致は初めて。

 

上の文章に「国立大学は2016年の法改正で…」とありますが、

私学はそれ以前から土地の貸与が可能であることを押さえつつ、

今回の例では、東京学芸大学が貸与するのは

キャンパス内の約3,900平方メートルで期間は40年とのこと。

賃料は非公開ですが年間数千万円とみられると記事に書かれています。

収入額もなかなかの規模ですね。

 

東京学芸大学は昨今人気が衰えている教員養成系大学で、しかも単科大。

国立大学とはいえ、収入確保はそれなりに重要なテーマだと思われます。

 

ただ、この土地貸与は単に収入を得るためのものではなく、

学びの機関としての意図もあるようです。

詳細は検討中だが、数百人規模の定員で、「食と環境」の教育研究拠点を目指す。お互いの教員や学生、地域社会との交流も進める。

(中略)

専門学校との連携は教育研究の幅を広げるとともに、安定した外部資金確保につながるメリットがある。

 

さて、土地貸与の例としては、以前このブログでも紹介した

駐車場利用が多くを占めるような気がします。

そのような中で、同じ教育機関に貸与する例は興味深いですね。

大学法人のみならず、その他の私学でも検討が可能かもしれません。

今後の生徒数を見通しながら、

施設の有効活用について考えてみてはいかがでしょうか。

 

(文責:吉田)

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長期休校、学力に影響なし

え?そうなの?と思ってしまった記事です。

日経新聞より。

 

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文部科学省は(3月)28日、小学6年と中学3年を対象に同一問題を使って学力の変化をみる「経年変化分析調査」の結果を公表した。最長で約3カ月に及んだ2020年春の新型コロナウイルスによる長期休校の影響は顕著には見られなかった。一方、家庭の経済状況による学力格差が広がった懸念があるといい、同省は引き続き慎重に調査結果を分析する。

 

この調査は、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の一環として

昨年6月に実施されたもので、

2013年度、2016年度に続き今回は3回目となります。

国語と算数・数学のほか、中学では今回から英語も追加し、

全国の国公私立の小中学校約1300校を抽出して調査したそうです。

そして、経年での変化を確認するために、本体調査とは別に、

非公表の同一問題を出しての比較もされているとのこと。

その結果が下の表の通りとなっています。

 

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コロナ禍前後で変わっていない、どころか、成績は上がっていますね。

もちろん、休校以外の要素もたくさんありますから、

確定的なことは言えないと思いますが、それでもやや意外です。

 

この結果の背景には、休校による学習の遅れを取り戻そうとする

学校側の取り組みがあるとみられる、と記事は指摘しています。

夏休みなど長期休暇を短縮して授業を行った小中学校は

いずれも9割超で、そういった効果が出たのでは、

ということなのでしょう。

なるほど、それなら学校の意義は依然大きいと言えるのかもしれません。

少しほっとした気持ちです。

 

一方、28日に開かれた学力調査に関する専門家会議では、結果について「上位層と下位層の差が開いた可能性もある」といった指摘もあった。

文科省も学力格差について調査を進める必要があるとみており、今回は児童生徒の保護者にも教育に対する考え方や年収、最終学歴などを調査した。今後、この回答内容と経年変化分析調査の結果を合わせて分析し、家庭の環境で学力格差が開いた可能性がないかなどを詳しく調べる。

 

調査結果をどう分析するか、によって

今後の方向性は変わってくるものと思われます。

事実を正確に把握し、適切な分析がなされることを期待したいですね。

そして貴校園におかれましても、

コロナ禍によるイレギュラーな運営を経ての影響を考慮しつつ、

今後の活動を進めていっていただければと思います。

 

(文責:吉田)

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こども家庭庁は本来の役割を果たせるか

久しぶりに社説のご紹介です。

日経新聞より。

 

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政府は「こども家庭庁」を創設するための法案を国会に提出した。厚生労働省内閣府から子ども関連の業務を集約し、子ども政策の「司令塔」にするという。2023年4月に内閣府の外局として設置することを目指している。

 

2021年に生まれた赤ちゃんの数は過去最少の約84万人。

その要因のひとつが、子育ての大変さにあると考えられています。

経済的にも、社会的にも、子育て世帯への負担が大きい現状を、

少しでも変えられるようにという意欲を持っての

新省庁の設置であると捉えたいところです。

 

ただし、組織さえつくれば解決するわけではもちろんない。そもそも行政の縦割り排除を創設の目玉にしながら、実際の制度設計はそれに背反する。就学前の子どものための施設のうち、幼稚園の所管は文部科学省に残すからだ。

文科省側の強い抵抗が背景にあるとされるが、幼児教育は重要だけに、幼稚園と保育所の縦割りの温存は納得いかない。国会でしっかり議論し、今後の一元化に道筋をつけてほしい。

 

目的を達するための手段がちぐはぐ、あるいは不十分、

といった状況は私学ガバナンス関連でもありましたが、

今回もそうなってしまうのでしょうか。

そうであるなら、役所を作る意味はほとんどないのではないか、

とすら思ってしまいます。

 

子どもは未来の担い手であり、子どもへの投資は未来への先行投資だ。日本は家族だけで育児を抱え込みがちだ。育児の密室化と負担感を軽減し、社会で支えるという意識をどこまで定着させられるかも、大きな課題だ。

 

さて貴校園のしくみは目的に合ったものになっているでしょうか。

時間の経過によって、目的がよく分からなくなってしまった、

というしくみもあるかもしれませんね。

すでにあるものを変える、あるいはなくすことにはエネルギーを要しますが、

それを持ち続けることのロスはそれ以上に大きいようにも思います。

組織は戦略に従う、という言葉もありますので、

貴校園の方向性に合った体制を整えて、

より大きな推進力で前進していただければ幸いです。

 

(文責:吉田)

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働く60歳以上、10年で1.7倍

人生100年時代、60歳以上の働き手は増えているようです。

日経新聞より。

 

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働く高齢者は増えている。厚生労働省によると、従業員31人以上の企業約16万社の常用労働者の約3234万人(2020年6月時点)のうち、60歳以上は1割超の約409万人を占めた。10年前から1.7倍に増え、過去最多を更新し続けている。

 

記事に付されていた下のグラフを見ても状況は明白です。

特に70歳以上の増え方が顕著であるとも感じますね。

 

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このような状況の背景にあるのは

企業の受け入れ体制の拡充だと記事は指摘しています。

人手不足による労働力確保、労働者全体の高齢化、

さらには政府からも定年の引き上げや廃止が求められ、

一般企業をはじめ、さまざまな組織で高齢者雇用が進んできました。

 

さて貴校園では高齢者雇用の今後をどう考えておられますでしょうか。

現時点においては定年延長が義務化されているわけではありませんし、

仮に定年を延長するとなれば賃金制度の改定は不可避だと思われますので、

その時期は慎重に見定める必要があるとは思いますが、

少なくとも、今後を見据えた検討は始めておく必要があるのではないでしょうか。

 

厚労省の調査では、66歳以上が働ける仕組みを設けているのは約5万5千社、70歳以上は約5万2千社に上る。一方、定年制を廃止したのは全体の2.7%の約4500社にとどまる。シニア人材の技能や経験を生かす環境づくりは、引き続き日本社会の課題だ。

 

年代に応じた働き方を模索し、誰もが働きやすい職場を目指したいですね。

 

(文責:吉田)

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