寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

不登校の要因、認識にズレ

主観にはズレがあるもの、ですが、

その情報を基に施策を組み立てるとすれば、

そのズレをきちんと意識しておくことが重要ですね。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

不登校になった要因について、当事者である児童生徒と保護者、教員で認識に大きなずれがあることが(3月)25日、文部科学省の委託調査で分かった。児童生徒が「いじめ被害」や「教職員からの叱責」と回答した割合は教員の6~8倍に上った。子どもの事情を学校側が十分把握できていない状況が浮き彫りとなった。

 

今回公表された調査結果は、2023年7~8月に、

文科省から委託を受けた「子どもの発達科学研究所」が、

大阪府吹田市広島県府中市、宮崎県延岡市山梨県

2022年度に小3~高1だった児童生徒と保護者、当時の担任教員らを対象に

当事者のヒアリングも含めて調査したものです。

 

この結果によりますと、2022年度に不登校として報告された

児童生徒239人について不登校の要因を複数回答で聞いたところ、

教員は「いじめ被害」「教職員への反抗・反発」「教職員からの叱責」

との回答がそれぞれ2~4%だったのに対し、

児童生徒と保護者は16~44%と大きな開きがありました。

また、児童生徒と保護者の6~7割が「体調不良」「不安・抑うつ

といった心身の不調を要因として挙げた一方で、

教員は2割弱にとどまっていたそうです。

 

文科省による2022年度の問題行動・不登校調査では、

不登校の理由の半数以上が「無気力・不安」とされましたが、

詳細は分かっていなかったとのことです。

 

 

同調査で教員が「無気力・不安」とした児童生徒にヒアリングなどをしたところ、いじめ被害や生活環境の激変、家庭不和など様々な回答があった。同研究所は「いじめやトラブルなど象徴的なきっかけがない場合に(学校側が)無気力・不安と回答しやすい可能性がある」と分析する。

 

さて、多くの学校では現在、学校評価の一環として

アンケート調査をされていることと思います。

そして、そのアンケートの対象者として設定されるのは

「保護者」「生徒」に加えて「教職員」であることが多いでしょう。

さて、これら三者の比較はどのくらいなされているでしょうか。

 

私自身、この調査や集計分析のお手伝いをする機会が

毎年与えられていますが、

生徒保護者の回答結果と、教員の回答結果が大きく異なることは

とても多くみられます。

要するに、

「先生方は頑張ってやっていると思っていても、

 生徒保護者には伝わっていない」

「先生方が大したことをしていないと思っても、

 生徒保護者がとても喜んでいる」

といったことがとてもよく起こるものだと感じています。

 

行動の起点は気持ちにあると思いますから、

こうしよう、こうしたい、という気持ちはまず大切。

そして、教育機関は専門機関として、

生徒保護者が望むこと以上に、どんな学びの機会を確保すべきかを

自らの専門性のもとに組み立てることが大切です。

 

あくまでもそのうえで、先生方の気持ちや言動が

「どんなふうに伝わっているか」

についてアンテナを高くしておく必要があるように思います。

そして、私学であることを前提とすれば、

貴校園を選んでくれた生徒保護者にとって

魅力的に映ることは何なのか、を知っておくことも重要だと感じます。

 

主観にズレは生じやすいものです。

そのズレを認識し、すり合わせる機会を常々持っておきたいものですね。

そして、今回の記事を他山の石として、

各種の調査を行う際の適切さ、目的適合性を意識しておきたいですね。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp

「社会が求める博士」育成 文科省計画、40年に3倍

昨日に続けて大学院の話題になります。

が、お伝えしたいニュアンスはだいぶ変わります。日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

文部科学省は(3月)26日、不足する博士人材を2040年に3倍に増やす計画を公表した。社会が求める人材を育てるため大学院教育を見直すとともに、産業界に採用拡大や処遇改善を要請した。博士はイノベーション創出のカギとされ、主要国は人材増に努めている。企業で活用が進まない現状を変え、国際競争力の向上につなげる。

 

このたびまとめられた「博士人材活躍プラン」。

2040年に、人口100万人あたりの博士号取得者数を

2020年度比で約3倍の300人超にし、

世界トップ級に引き上げる目標を掲げたそうです。

学士号取得者に対する博士号取得者の割合も8%に引き上げ、

博士課程学生の就職率は80%と23年比で10ポイント高める構想のようです。

 

現状、博士号取得者が増えない理由について、

記事には「大学院のカリキュラムと産業界の期待のズレ」があることに加え、

修士から博士課程に行かず就職を選んだ理由として

「進学すると生活の経済的見通しが立たない」

「博士になると就職が心配だ」

といったお金の面が多くなっていることが指摘されています。

 

ただ、個人的にはこういったことも理由のひとつでありながら、

近年の国の政策として、学者を軽視したり、基礎研究を軽視したり、

教育機関を「競争」「監視」の下に置こうとしたり、

といったことが繰り返されていることこそが

博士号取得に意欲を持つ人たちの先行きを暗くしたのだと感じています。

事実、博士課程の入学者数のピークは2003年度となっており、

人口カーブとは若干異なる動きをしているようにも感じます。

そういった流れを断ち切ったのはこの国の自業自得とも言えなくありません。

 

とはいえ、学問を究める人材が減ってしまうことは本当に危機的な状況です。

一方で昨今、自らの興味をどんどん深めていくことのできる子どもたちは

以前よりも多く存在するのではないかと思えるほどですから、

そういった興味関心を学問的に追究していく人材を

きちんとした環境で後押しできればとも思います。

 

今回の記事にはこうもありました。

博士課程学生が安心して研究に打ち込める環境もつくる。優秀な博士課程学生を対象にした生活費相当額の支援や授業料減免を促進し、25年に18年度比3倍の学生に行き渡らせるとした。

 

「優秀な」博士課程学生。懲りないものですね。

博士課程に進んでいるにもかかわらず、

優秀かどうか、という評価を経ないと支援できないということが

現状を招いているようにも思うのですが。

私学関係各位には、そういう進路を目指す子どもたちの背中を

しっかりと押していただければと願うばかりです。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp

文系修士の学生 共同育成

ちょっとだけPRも兼ねてのブログ…かな?

でも、取組は今後を見据えた重要なものだと感じます。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

複数の大学が連携し、社会課題の解決に貢献する人材を育てる取り組みが広がってきた。大学院の人文・社会科学系の研究科同士で共通の教育プログラムを開発。得意とする研究分野を他大学に開放し、足りない分野を補い合う。文系修士卒のキャリアパスを広げるのが狙いで、産業界で即戦力となる人材輩出を目指す。

 

この記事のメインを飾っているのは、2025年度から始まる

龍谷大学京都文教大学琉球大学の共同プログラムです。

これは、地域の社会課題を解決する人材を育てることを目的とした、

文系の修士課程の教育プログラム。

京都府沖縄県が抱える地域課題を持ち寄り、

公共とビジネスの両面から解決策を考えるもので、

学生は所属する研究科の基礎科目を履修したうえで、

キャップストーンと呼ぶ3大学共同の仕上げ科目を受講します。

京都府沖縄県でのフィールド調査や合同報告会を通して、

多面的な思考を養うそうです。

 

この企画を引っ張ったのは、弊社顧問も務めていただいている

龍谷大の中森孝文政策学研究科長です。

以前の弊社情報誌で語ってくれた文系大学院の取組というのは

これだったんですね。

(当時のインタビューの様子は、

 https://www.ysmc.co.jp/magazine/index.php

 より、No.81(2023年8月号)をご参照ください)

 

文部科学省の科学技術・学術政策研究所によると、国内の人口100万人当たりの文系修士号の取得者数は109人(20年度)と、諸外国平均(20~21年度)の1割にも満たない。産業界での文系修士卒の社会的な評価や認知度の不足が課題となっている。

 

こういった状況を打破するため、上記龍谷大他の取組をはじめ、

記事には茨城大学常磐大学宇都宮大学と共同で行う

文系修士課程の教育プログラムや、

神戸大学小樽商科大学和歌山大学と連携して開講する教育プログラムが

紹介されています。

これらの取組は社会人も念頭に置かれていて、

リカレント、リスキリングも強く意識されているのが特徴です。

 

さてこういった取組から、皆様は何にお気づきになるでしょうか。

私が特に感じたのは以下の2点です。

 

ひとつは、学校間の連携の重要性。

専門分野を深掘りしていくためには、その基礎となる知識や、

専門分野の周辺の知識など、幅広の学びが必要になります。

そういった意味で、それぞれの学校が自らの強みを活かし、

幅の広い学びを提供できることは学ぶ側に大きなメリットをもたらすことでしょう。

 

もうひとつは、より深く学ぶことの意義。

私自身、大学院での学びは人生にとってものすごく大きかったことを

今さらながら感じます。

(大学時代があまりに不真面目だったせいも大いにありますが…)

そして、これは当然学ぶ側にもあてはまりますし、

教える側、学校側にも当てはまるのではないかと思います。

中高でも探究活動が重要性を増していますが、

探究活動が学校そのものの力量を高めることにつながるとも思うのです。

 

以前の中森教授へのインタビューの中では、

私学において経営の採算性は重要であることを踏まえつつ、

「車に例えると大学は大衆車(一般車)、

 大学院はF1(Formura1)みたいなもので、

 F1のような高性能車の開発や研究が、

 一般車の発展や販促につながると考えれば、

 大学院は教育研究力を高めるための存在であって、

 採算をとることを目指すべきではない」

とお話しいただいたことを改めて思い出します。

大学院に限らず、学びを究めていくという活動が

各校園の足腰を鍛えてくれることを忘れてはなりませんね。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp

日本の最低賃金、世界に見劣り 正社員の45%どまり

ここ数年で最低賃金が一気に上がり、

経営への影響を嘆く経営管理職の方も多いかもしれません。

が、これまでが低すぎた、だけという見方もありそうです。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

経済協力開発機構OECD)のデータから内閣府が各国の最低賃金を比べたところ、日本の低さが顕著となった。2022年の正社員ら一般労働者の賃金中央値に対する最低賃金の比率は日本が45.6%と主要国を下回った。賃上げ機運を維持するには最低賃金による底上げも重要になる。

 

2022年度に最低賃金が上がった際、

その新たな最低賃金の水準を下回る労働者の割合は19.2%で、

10年前に比べ10ポイント以上高まったそうです。

その要因は、パートタイム労働者の増加であると記事は述べています。

最低賃金を上げることで、2割近い労働者の賃金を上げる必要が出てくるとなれば、

経営への影響は確かに小さくないと感じます。

 

ところが、です。

 

 

内閣府の23年末の分析によると、一般労働者の賃金中央値に対する22年の最低賃金の比率は、フランスと韓国が60.9%、英国は58.0%、ドイツは52.6%だった。このデータは国際的に最低賃金の妥当性を確かめるために使われる。

欧州連合EU)は22年10月に「最低賃金指令」を採択し、加盟国が最低賃金を引き上げる際の目安として同水準で60%を目指すと決めた。英国も24年までに賃金中央値の3分の2まで最低賃金を引き上げる方針を掲げた。

日本の最低賃金厚生労働省の審議会などの議論を経て決まる。これまで段階的に上げてきており、12年の38.3%から22年に45.6%まで上昇した。

 

上のグラフを見ても、日本の割合は他と比べてかなり低いですね。

ただ、それだけであれば、正規雇用者の賃金水準が高いからそうなるのでは?

という疑問も生まれますが、さにあらず。

実額を確認しますと、2022年の1時間当たりの名目最低賃金は、

月平均でフランス10.85ユーロ、ドイツ10.52ユーロ、英国9.35ポンド。

これを2022年のレートで円換算するとそれぞれ1500円前後となります。

日本は2023年度の全国加重平均が1004円。

仏独英に比べて3割以上低い水準です。

 

さて、こういった状況を鑑みますと、

今後も最低賃金は上がっていくことが想定されます。

そして、貴校園内に最低賃金を意識した賃金水準が採用されているなら、

その影響が貴校園の経営に及ぶこともほぼ確実でしょう。

あくまで個人的見解ではありますが、

安全性の高い経営を続けていくためには、

すべての教職員さんに時給1,500円をあてはめても問題ないくらいの

財政状態を実現することが求められるように思います。

中長期を見据えた収支構造、財政状態を検討いただければと思います。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp

中学用教科書大半にQRコード AIの利点・課題、教科書に

今日のブログでは2つの記事をご紹介します。

同じテーマを扱ったものです。日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

文部科学省は(3月)22日、2025年度から中学校で使う教科書の検定結果を公表した。学習用端末で読み取って音声や動画などのデジタル教材を再生する2次元コードQRコード)が100点中97点に載った。全小中学生に配った端末の活用を前提とした教科書づくりが加速している。

 

 

というわけで、自然な流れではありますが、

教科書にもデジタル素材がどんどん入ってきています。

実際に授業参観などにお邪魔してみると、

紙面ベースの教材に加えて、デジタル教材や映像などが

組み合わされることによって、興味関心を引きやすくなりますし、

理解が深まっている様子も見て取れます。


今回合格した英語教科書は全てで大半のページにQRコードが載り、

掲載数は中1で現行教科書の約1.6倍に増加したそうです。

発音チェック用のリスニング教材や会話の手本動画、

意見を書き込むシートに誘導する例が目立つとのこと。

三省堂の担当者は、生徒が自らのレベルに合った学び方を選べるようになるとし、

「自己調整をしながら学んでいく力を身につけてほしい」と話しています。

 

さてそこに課題はあるのか。もう1つの記事を見てみましょう。

同じく日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

2025年度から中学で使われる教科書の内容が発表され、生成AI(人工知能)に関する記述が登場した。子どものスマートフォン保有率が高まるなどインターネットに触れる時期が低年齢化するなか、ネット上のいじめや情報リテラシーを題材とした教科書も目立った。

 

ある中3道徳の教科書では「AIさんは僕の助っ人」という文章を題材に、

長い文章を読んだり書いたりするのが苦手な主人公が、

兄の助言でAIの力を借りて感想文を書いてもらった結果、

先生にも褒められ、クラスで発表するよう頼まれることになったが、

この文章に自分の考えや価値観は入っているのか、

と主人公が悩む様子が描かれているそうです。

 

他の教科でもAIの記述はいろいろあるようで…

中3公民のある教科書は「フェイクニュースにご用心」とのコラムで、近年はAIが大量の情報をもとに作成したディープフェイクと呼ばれる偽画像も出回ると指摘した。

技術科でも、AIの発達を中心に、モノがインターネットにつながる仕組み「IoT」や翻訳機械、遠隔手術の例を取り上げる教科書があった。

中2理科の教科書はコラムで生成AIを「対話型AI」として紹介した。問いかけに対してまとまった回答を出すため膨大な情報を吟味する必要がない半面、正確さなどを自分自身で判断しなくてはならないとした。

 

さて、このように見てきますと、教材はデジタル化やAI社会を反映したものに

どんどん変わってきている様子が見て取れます。

一方で、教える側の知識や技量はそれに見合ったものになっているでしょうか。

 

学校教員に限らず、日本の大人は勉強しない、研鑽しない、

というのがひとつの特徴にすらなってしまっていますが、

教鞭をとる先生方には決してそうなっていただきたくありません。

これまでの経験を土台にしつつ、新たな知識や教養、教育技術を身に付けて、

子どもたちのよりよい学びのために最善を尽くしていただきたいと思います。

 

そして、そのために経営側が準備できる環境とは何か、

校園として検討を続けていくことも同様に重要だと感じます。

学びの環境、働く環境が向上していくように努めたいものですね。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp

性犯罪歴確認、学校に義務 日本版DBS法案

これだけ不祥事が多いとやむを得ない措置なのかもしれません。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

政府は(3月)19日、学校や保育所が従業員や応募者の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」制度の創設のための法案を閣議決定した。性暴力被害を防ぐ狙いで、犯罪歴がある人が子どもに接する業務に就かないようにする。個人情報への配慮から不正な照会をした事業者や個人には罰則を設ける。

 

 

法案の概要については、上の表のとおりです。

こども家庭庁が運用するシステムを通じて、

それぞれの事業者が、就業を希望する人やすでに働いている人の

性犯罪歴を照会し、それを受けてこども家庭庁が犯歴の有無を記載した

「犯罪事実確認書」を事業者に交付する、という流れのようです。

 

そして、小中高校や幼稚園、保育所などにおいては、

在職している教職員や採用予定者についての情報の確認を

「義務付け」られるとのこと。

またひとつ、学校側の業務が増えることになります。

 

そして照会の結果、性犯罪歴があったとなれば、

子どもに接しない業務に配置転換するといった措置が必要となります。

職業選択の自由との整合性から就労自体は禁じられないそうですが、

「事業者側の判断で採用を制限することがある」と記事にはありますので、

採用内定を取り消したり、場合によっては解雇したり、

といったことが現実に起こる可能性が十分ありそうです。

 

一方で、犯罪歴は従業員や応募者のプライバシーに関わる重要な情報です。

この法案では、事業者の担当者以外の第三者が不正に照会したり、

情報漏洩したりした際の罰則も規定されます。

情報管理にも十分な留意が必要になりますね。

 

いろいろと気を遣うことになりそうなこの法律。

各校園では制度主旨と情報の取得や管理の方法等について

しっかり共有しておいていただきたいと思います。

そして、子どもたちの安全を守るという目的に沿って、

厳格な運用がなされることを願っております。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp

大手賃上げ、5%超相次ぐ 中小も高水準4.42%

世間の賃上げ率、ものすごいですね。

改めて経営環境のひとつとして押さえておきましょう。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

今回ご紹介する記事はやや古いのですが、今年の3月13日、

2024年の春季労使交渉の集中回答日の翌朝に掲載されたものです。

トヨタ自動車や日本製鉄など主要製造業の8割が、労働組合側の賃上げ要求に対して満額回答やそれを上回る回答をした。多くの企業で連合が掲げた賃上げ率の要求方針「5%以上」を超える。約30年ぶりの高水準となった23年春季交渉を超える勢いだ。

 


上の表をざっと見ても、高い率の回答が多いですね。

自動車や電機など大手製造業に加え、人手不足感の強い外食でも、

満額回答、高水準回答が相次いでいます。

連合の3月4日時点の集計では、参加する労組の要求平均は「5.85%」。

2024年の全産業の賃上げ率見込みは、いくつかの民間予測によって

多少の差はありますが、概ね4~5%程度のようです。

 

ではこれが「実質的な賃金アップ」になるのかどうか。

物価高が続いていますので、気になるところなのですが…

23年の賃上げ実績では物価高を超えられずに実質賃金のマイナスが続いている。1月の民間試算では、今年の賃上げ率が3.6%を超えるかどうかがプラスに転じる目安となっている。

 

3.6%が目安なんですね。

大企業の平均値はこの目安を超えそうですが、さて中小はどうでしょう。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

連合が(3月)15日発表した2024年春季労使交渉の第1次集計で、中小企業の賃上げ率は4.42%に達し、32年ぶりの高水準となった。引き上げ機運は中小にも広がり、物価と賃金が持続的に上がる好循環に弾みがつく。

 

というわけで、中小企業の賃上げ率もかなり高めのようです。

ただ、記事にはこうも書かれています。

組合員数300人未満の労働組合の結果をまとめた。賃上げ率は前年の同時期から0.97ポイント上昇した。最終集計と比べると5.10%だった1992年以来の高い水準だ。基本給を底上げするベースアップ(ベア)率も明確に分かる268組合で2.98%と0.86ポイント上がった。

 

注意点は2つ。

1つは、組合員数300人未満の結果をまとめたものだということで、

これは中小でも比較的規模の大きな企業が多く含まれている可能性があります。

もう1つは、ベア率を区分した場合、ベアは3%弱で、

残りは定期昇給だということです。

 

さて、今回の賃上げを定期昇給も含むものと考えた場合、

貴校園の賃上げ率はどのくらいでしょうか。

この機会に、ぜひ一度計算してみてください。

賃金制度が古いままだと、

ベアなしでも3%くらいになっているケースが

ままあるのではないかと思います。

報道されている数値を確認する場合は、

こういった前提条件に留意しておいてくださいね。

 

とはいえ、賃上げは職場や立場を問わず、

かなり広がっているのは間違いありません。

アルバイトについても、こんな記事がありました。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

リクルートが(3月)14日発表した2月のアルバイト・パート募集時平均時給は、三大都市圏(首都圏、東海、関西)で前年同月比50円(4.4%)高い1192円だった。伸び率は現在の方式で算出を始めた2018年3月以降で最高だった。新年度に向けた新規募集が本格化する中、春季労使交渉での大幅賃上げをにらみ、企業はアルバイト・パート時給の引き上げに動いた。

 

 

ちなみに、この記事によりますと、

職種別にみた場合に「専門職系」が61円(4.6%)高の1381円で、

これまでの最高額を更新しているそうです。

中でも塾講師の募集の伸びが大きく、子供の塾の利用が増える中、

講師になる学生が減少していることが背景にある、とのこと。

学生時代のバイトで塾講師をしていた人材が、

学校に就職して本給が下がった、といった笑えないことが

起きないとも限りません。

貴校園の賃金水準を確認しておいていただければと思います。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp