寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

いじめ相談、頼りは探偵 膨らむ学校不信反映か

記事のタイトルには少々違和感を覚えますが、

向き合うべきテーマではあると感じます。

日経新聞より。

 

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(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

いじめをなんとか止めたい――。切迫した事態を前に、被害者側が民間の探偵に駆け込むケースが増えている。具体的な証拠を集め、学校や加害者側に示し早期の解決に導こうとするためだ。教員らによる危険な兆候の見逃しや、事後の調査の不十分さが指摘される事例も相次ぐ。「学校には頼れない」。子どもや保護者の切実な声は、安全・安心を守る立場にある教育現場の課題を浮き彫りにしている。

 

この記事に登場する東京の探偵さんは、

主に企業などから信用調査を請け負う傍ら、

2004年に初めていじめ調査を引き受け、2015年にはNPO法人を設立。

企業や個人から寄付を募り、無償で調査を担っていらっしゃいます。

寄せられる相談は、なんと年間1000件以上、累計で1万件超とのこと。

中には学校の対応が鈍いケースもあるようで、

「証拠があれば学校は動く」とのコメントが重く響きます。

 

13年のいじめ防止対策推進法の施行以来、教育現場に調査などが義務化された。その後も子どもが自殺したり不登校になったりする事案は後を絶たず、各地の第三者委員会により学校側の対応の不備がたびたび指摘される現状がある。

 

確かに過去にニュースになった事案では、

学校や教育委員会の対応が不十分だった、

という原因が指摘されたものも記憶にあります。

ただ忘れてはならないのは、

いじめは子ども同士の関係性から生まれるものであるということです。

 

大阪府立高で約30年間教員を務めた阿形恒秀・千里金蘭大教授(生徒指導)は探偵の介入に「違和感がある」とする。「いじめが疑われるとき、被害者を守ることはもちろんだが、加害者にも向き合い、人間的成長を促すのが教育のあるべき姿だ」

 

いじめの解決に正解はないでしょう。

ただ、何を理由にしても、命を絶たれることがあってはならない、

と強く思います。

状況が切迫している時には、学校だろうが探偵だろうが、

何を利用しても命を救うことが最優先であることを忘れてはなりません。

 

学校の対応が不十分なのは、ひょっとすると、

他の用務が多すぎるから、とも言えるかもしれません。

また、教員は学業については専門性が高くても、

人間関係を改善するための専門性や経験が不足しているかもしれません。

子どもたちを社会が守っていくということが本来は必要なはずですが、

悲劇をなくすためには、学校もまた、謙虚に相談に向き合い、

解決に真摯に取り組むことが必要だとも言えるでしょう。

 

(文責:吉田)

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デジタル投資、6割が増強

新年あけましておめでとうございます。

本年も私学経営に参考になる話題をお届けできるよう努めてまいります。

お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

 

新年最初の話題は、大学の学長アンケートの結果をご紹介します。

日経新聞より。

 

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(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

経済成長を担う人材の育成に向け、デジタル分野の教育・研究基盤へ投資する大学が増えている。日本経済新聞が実施した学長アンケートでは有力大学の6割がデジタル分野の設備投資を増強したと答えた。教員の確保が課題で、民間人材の起用も含め指導体制を充実させる工夫が問われる。

 


デジタル人材の育成に向け、学校の設備も増強が必要、

と考えるケースが増えているようですね。

本アンケートに回答した157校のうち、

95校では設備投資を「すでに増やした」と回答、

「今後増やす予定」とした37校と合わせ、

8割超の大学がデジタル分野の教育環境整備を進めています。

 

何に投資するのか、という点では以下のようなものが挙がっています。

上記4つめの項目は小中高では難しいかもしれませんが、

3つめまでは大学以外の私学でも取り組みが進んでいるのではないでしょうか。

特に、2つめの「セキュリティ対策」は少し後手に回りがちな印象もありますので、

ぜひ貴校園の実情を確認しておいていただきたいと思います。

 

そして設備投資とは別に、とても重要な課題が「人」のことです。

統計処理やプログラミング演習など実践的な授業を提供するには通信環境の整備とともに専門の教員の確保が欠かせない。デジタル人材の育成に向けて設備や人への投資を進める流れは今後も続くとみられる。

課題は教員の不足だ。指導者の確保について「足りていない」「少々足りていない」と回答した大学は120校で、全体の7割強を占めた。デジタル分野で専門性の高い教員は各大学の争奪戦となっている。

 

昨年のブログでも何度も採り上げましたが、

例えば情報科の指導教員の不足は深刻ですし、

おそらく現時点においてICTツール充実を先導できる人材は

各校園にわずかずつしかいないのが実情ではないでしょうか。

 

経済産業省は、2030年に国内のIT(情報技術)人材が

最大で約79万人不足すると予測しています。

今こそ、各校園自らがITスキルの習得を目指し、

全ての教職員に積極的な研鑽を求める必要があると感じます。

ぜひとも今年はこういったテーマにもお取組みいただければと願っております。

 

(文責:吉田)

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消えゆく公立幼稚園 5年で500施設以上閉鎖

昨日で弊社は仕事納めでしたが、

ブログは本日で年内最終とさせていただこうと思います。

日経新聞より。

 

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公立幼稚園の閉鎖が全国で増えている。2019年10月から「幼児教育・保育の無償化」が実施され、私立に比べて費用が安いという長所が薄れたことが要因の一つだ。施設の数は21年までの5年間に全国で500以上減った。1施設あたり年間数千万円の運営費用が浮く計算で、地方自治体には財源を活用した効果的な子育て支援策が求められる。

 


記事に登場する東京都江東区の住宅街にある区立幼稚園は、

2023年度末での閉園が決まっているとのこと。同園の園長は、

「多くの私立と異なり給食や送迎バスがない。

 園児が減れば閉園の対象になるのは避けられない」

と話しておられます。

この短いコメントの中に、幼稚園に求めるものの変化が見て取れます。

ひとつは給食。もうひとつは送迎バスです。

 

幼稚園は1947年施行の学校教育法で満3歳から就学までの教育機関に位置づけられる。公立・私立のバランスは地域ごとに異なるが、自治体運営の公立は70年代の第2次ベビーブームの受け皿として急増。ピークの85年には全国で6千施設を超えた。

しかし近年は閉鎖が加速している。文部科学省によると、2021年の公立幼稚園は、保育所機能もある「幼保連携型認定こども園」を含めて3965施設。17~21年の減少数は年平均134施設で、その前の5年の1.5倍超のペースになった。

 

上記引用にもある通り、幼稚園は「教育機関」です。

私立の幼稚園の多くは学校法人立であるという事実からも

そのことを推し量ることができます。

 

ところが昨今のニーズは「幼児教育」よりも「子どもの保育(預かり)」に

大きく傾いてきています。

つまり、世間でより強く求められているのは、

教育機関よりも保育施設、ということです。

これが幼稚園の減少、特に公立幼稚園の減少につながっている、

というのが私の見立てです。

少子化の影響は当然あるでしょうけれど、

子どもを「教育する」ことよりも「長時間面倒を見てくれる」ことに

親の意識がシフトしている、ということが

幼稚園の衰退という結果を生んでいるような気がしてなりません。

 

そして、そういったニーズに合わせてこども園化する幼稚園、

あるいは形は変えないけれどもサービス内容を保育に寄せている幼稚園が

多く出現しているようにも思います。

ニーズが変化しているのですから、当然それに合わせて

サービス内容を変えることは永続のために必要な考え方でしょう。

 

ただ、教育と保育は厳密にいえば、なすべきことが異なります。

これまで幼稚園として活動してきた園が、何の準備もなく、

保育の機関として活動できるかと言えばそうではないでしょう。

ましてやこの機に低年齢児も受け入れる幼稚園が登場するなら、

なおのこと、保育についての十分な知識や経験、訓練が必要です。

 

今後、幼稚園がどういった存在感で社会に生き続けるのか、

というのはとても重要なテーマだと感じています。

弊社が関与する幼稚園でも、認定こども園に変化した幼稚園もあれば、

むしろ教育内容を強化したうえで幼稚園のまま活動を続けると決めた園もあります。

そういったことを考える機会がまさに今ではないでしょうか。

各園におかれましては、今後を見据えた経営目的の再定義を

ぜひともお願いいたします。

 

それでは皆様、よいお年をお迎えください。

 

(文責:吉田)

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理工系学部拡充への助成

大学のための基金設置が進んでいますね。

本日は理工系学部拡充のための基金の話題です。

日経新聞より。

 

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デジタルや脱炭素といった成長分野の人材育成に向け、政府は理工系学部を拡充する大学に助成する3000億円規模の基金を設立し、2023年度にも募集を始める。アンケートでは全体の3割強にあたる国公私立大56校が支援の適用について「希望する」「検討する」と答えた。志願者の確保を課題として挙げる声があった。

 

他学部と少々状況が異なるのは、理工系学部の拡充には

教育・研究設備への投資が欠かせないという点にあり、

特に大規模な学部再編はハードルが高くなります。

このことを打開するため、文部科学省は、

初期投資やランニングコストを助成するための基金を創設し、

大学や高等専門学校1校あたり20億~30億円程度の支援を

想定しているとのことです。

 

ではこの支援によって、各校はどのような分野を

強化したいと考えているのでしょうか。

最多は「データサイエンス」(44校)。

続いて「人工知能(AI)」(33校)。

デジタル分野は企業のニーズも大きいので、

この結果は想定通り、かもしれませんね。

 

ちなみに、本件の課題に関する記述の中には、

「高校段階で女子の理工系志願者を確保することが困難」(私立大)

という悩みも寄せられたそうです。

以前のブログでご紹介した記事の中には、

「優秀な生徒は医学系に進みがち」という指摘もありましたので、

女子に限らず、理工系にとって志願者の確保が小さくない課題なのかもしれません。

 

高校生にとって、魅力的な研究内容や卒業後のキャリアパスを示すことが、

高校の指導において重要であると記事も指摘しています。

それぞれの生徒にとって適した進路選択ができるよう、

学校側のサポートを考えていきたいですね。

 

(文責:吉田)

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大学10兆円ファンド争奪戦

競争的資金が大学の運営に大きな影響を及ぼす時代がやってきています。

日経新聞より。

 

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政府が創設した10兆円の「大学ファンド」による支援獲得を巡る競争が激しくなりそうだ。日本経済新聞の調査に回答した157大学の3割に当たる44大学が申請を検討していると答えた。近く始まる公募で数校が選ばれる。国内大学は海外と比べ資金力で劣り国際競争力は低下している。ファンドの支援で教育・研究基盤の抜本強化を図る。

 

まずはこのファンドのしくみをおさらいしておきましょう。


この大学ファンドは科学技術振興機構JST)に設けられたファンドで、

財政投融資を主な財源とし、運用は外部の専門機関に委託。

国が「国際卓越研究大学」と認定した数大学へ運用益を配分します。

そして支援対象校に認定されるためには、

有力論文数などについての基準を満たし、国の審査を通過する必要があります。

さらに対象校は大学の支出額ベースで年平均3%の事業成長を求められます。

支援期間は最長25年間で、助成金は翌年度への繰り越しも可能。

6~10年ごとに支援継続の可否が評価され、

助成に見合った成果が得られていないと判断されれば

支援打ち切りとなります。

 

各大学のファンド申請の検討状況は下の図にまとめられています。

総額10兆円のファンド、その運用益は3,000億円を目標とするそうですので、

例えば5校が採択されれば1校当たり600億円。

手を挙げたくなるのは自然なことでしょう。

 

 

さらに、このファンドの対象校に認定された場合に期待される効果について、

「研究環境の改善」「国際競争力強化」を挙げる大学が多い中、

「国際的評価の向上で、より優秀な学生や教員を集められる」

といった声もあったそうです。集計結果は下のグラフにて。

 

 

冒頭にも書きましたが、いよいよ学校業界にも

競争的資金が本格導入されてきました。

できればどの校園にも等しく手厚い支援を、と願う一方で、

今後の税収や政策動向を考えれば、こうなっていく流れは

おそらく止められないだろうとも思います。

補助金を賢くいただくためにも、国や自治体の政策等にも

ぜひ目配せをしておいていただければと思います。

 

(文責:吉田)

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プログラミング学ぶ「情報科」、教員養成へ官民連携

情報科に関する記事はこれまでも何度か採り上げてきました。

今回は教員養成についてです。日経新聞より。

 

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プログラミングを学ぶ高校の必修教科「情報」担当教員のスキル向上に向け、文部科学省が官民の連携強化を急ぐ。教員の16%が正規免許を持たず指導力が課題となる中、最新の知見を持つ民間企業による教員研修や、エンジニアによる授業のサポートといった取り組みを想定。各地で連携方法を話し合う協議会の設置を推し進める。

 

以前のブログでも、情報科では正規免許を持った教員が少ないことを

お伝えしましたが、その打開策の一つ、とも言える施策になるのでしょう。

今後検討される内容が下の表にまとめられていました。

 

 

今回準備される協議会等のしくみは、

どうやら公立校を念頭に置いたもののようですが、

私学でも情報科教員のスキルアップは他教科同様、

大きなテーマになるものと思われます。

その意味で、この記事に書かれている以下の内容は

参考になる点もあるのではないでしょうか。

 

情報科が扱うスキルは民間企業が先行している。同省は民間との協力体制を築くため、システムエンジニアらを抱えるIT企業と教育委員会、教員養成大学などで構成する協議会の設置を後押しする。

協議会では情報科の教員に必要なスキルや効果的な研修方法を話し合う。民間エンジニアを非常勤講師として学校へ派遣する仕組みも検討する。免許取得者の採用が難しい場合には、民間人材に指導資格を与える「特別免許」の活用も視野に入れる。

 

貴校園にとっての内部資源である教職員各位と、

外部資源である民間企業等の専門人財をうまく組み合わせて、

よりよい学びがなされる環境を作っていただければと願っております。

 

(文責:吉田)

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企業、経常益18.3%増 人件費は伸びず

コロナ禍は続いていますが、企業業績は伸びているようです。

本当なのでしょうか。日経新聞より。

 

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企業収益は改善を続けている。財務省が1日発表した法人企業統計調査では7~9月期の経常利益は前年同期比18.3%増と7四半期連続の増益となった。資源高や急激な為替変動の中でも業績は堅調に推移している。新型コロナウイルス流行前より経常利益は2割以上増えたのに、人件費は1.7%減と低迷する。働く人への分配のあり方が問われている。

 

ここのところの物価高や円安の状況もなんのその、

企業業績はかなりいい状態のようですね。

下のグラフを見ればその状況がよく分かります。

 

 

それにしても、人件費や設備投資は増えませんね。

直近4四半期の人件費支出の合計額は、2019年度の水準を1.7%下回っています。

賞与はコロナ前を上回っている一方で、給与は2.0%低いそうです。

設備投資もコロナ前比2.4%減。

なぜこうなっているのでしょうか。

コロナ禍や世界情勢による先行きの見通しが立てにくいから、

というのが私の直感だったのですが、記事はそうではない、との論調です。

中期的にみても日本企業は人件費への配分を手控えてきた。年次調査によると21年度の経常利益は10年間で1.9倍、税引き前当期純利益は2.3倍に増えたのに、人件費は3.3%増にとどまった。この間、配当金は2.5倍に増え、株主への還元は強化されてきた。

 

なるほど、利益の増え方と人件費の増え方を比較してみると、

理由は必ずしも先行きの不透明感ではないことが分かってきますね。

同じことを私学の決算書でもやってみると、さてどうなるでしょうか。

 

貴校園では収入や収支差額の増減と人件費の増減を比べて、

人件費支出が経営体力に応じたものになっているかどうか、

という見方をされたことがありますでしょうか。

今後ますます、収支差額を生み出しにくい経営環境になると考えられます。

将来の収支構造を予想し、必要な施設設備の整備ができるよう、

早めに手を打っていただくことをお勧めいたします。

 

(文責:吉田)

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