寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

生徒の演奏、徴収認めず

今月出された判決です。

日経新聞より。

 

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日本音楽著作権協会JASRAC)が音楽教室から著作権使用料を徴収するのは不当として、音楽教室を運営する約250事業者がJASRACに徴収権限がないことの確認を求めた訴訟の控訴審判決で、知財高裁(菅野雅之裁判長)は18日、一審・東京地裁判決の一部を変更し、生徒の演奏について徴収権を認めなかった。教師の演奏は徴収権を認めた。

 

本件訴訟は、各校園でも興味深くご覧になっていたかもしれません。

学校では著作権使用料は多くの場合発生しないようになってはいるものの、

著作権への意識はかなり強く持つ必要のある場であることは間違いありません。

 

著作権法は公衆に聞かせる目的で演奏する権利(演奏権)について、作曲者などの著作権者が専有すると定める。音楽教室での演奏が「公衆に聞かせる目的の演奏」に当たるかが主な争点だった。

 

今回の判決では、音楽教室で実質的に演奏するのは、

教師ではなく教師を管理する事業者と判断し、

レッスンを受ける不特定多数の生徒は「公衆」と認定しました。

一方で、生徒の演奏については自らの演奏技術向上のためで、

演奏の主体は生徒であり、公衆に聞かせる目的と言えず、

演奏権侵害もないと結論づけています。

 

 

自ら生み出したものにきちんとした権利があること、

そしてその権利がどのような場合に強く守られ、

逆にどのような場合には広く用いられることを許容すべきなのか。

個人と公共のバランスを考えるための興味深い題材かもしれません。

貴校園の教材のひとつとしていかがですか。

 

(文責:吉田)

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入学志願者、学部で明暗

教員のなり手が増えるのかも、という期待を抱いてしまいます。

日経新聞より。

 

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新型コロナウイルスの感染拡大が大学の学生募集に影響を与えている。不況下でも就職先が見つかりやすい福祉系や教員養成系の学部に人気が集まる一方、留学を売りとする国際系学部は志願者が急減し明暗を分けた。好調・不調にかかわらず、各大学は学習意欲の維持などに工夫を凝らしている。

 

上の文章を読むだけでも、一気に様相が変わったことを思い知らされます。

ここのところ、国際系学部は大人気だったはず。

コロナ禍は価値観を一変させてしまったのでしょうか。

 

記事で紹介されている大学と学部の倍率はこんな感じです。

 

ちなみに、三重大教育学部は今回の入試から受験生に

「教員志望確認書」の提出を求め、合否判断に使うと決めていたとのこと。

そこまでしているケースで倍率が上がっているというのは、

教員になりたい学生が増加したということなの?と期待してしまいます。

 

ただ、本当の進路はこれから決まっていくもの。

コロナ下で人気が上昇した学部の課題は、学習意欲をどう維持するかだ。入学者のなかにはコロナ禍がなければ志望しなかった層も一定数いるとみられる。

コロナ下ではオープンキャンパスの中止・縮小が相次ぎ、受験生が情報収集する機会が限られていた。東京都高校進路指導協議会の佐藤和彦会長(都立広尾高校長)は「入学後に自分の本来やりたかった勉強とは違うミスマッチに気づき、意欲を失う新入生もいるだろう」と分析する。

 

この記事では各大学・学部の工夫、対策も紹介されています。

その効果については今後検証されることになると思いますが、

努力が報われることを願いたいと思います。

 

今回の記事を読んで、進路開拓には社会環境が大きな影響を及ぼすことが

よく分かりました。私自身の大学進学時にも、当時勃発した湾岸戦争によって、

進路変更を検討したことが思い出されます。

 

学校は進路開拓の現場として、そのような環境変化について

しっかり情報をつかんでおくことも大切なのかもしれません。

そして一方では、中長期を見据え、冷静に進路を定められるような

アドバイスや導き方をすることも必要なのかもしれません。

 

さて次年度の進学や進路の状況はどうなっていくのでしょうか。

 

(文責:吉田)

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SDGs推進 企業人の心得

あと数日で新年度が始まりますね。

弊社情報誌もリニューアルを予定しておりますが、

その中で採り上げるテーマの一つがSDGsです。

日経新聞より。

 

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SDGs(持続可能な開発目標)という言葉が日本社会に定着してきた。最近では小中学校の教科書に取り上げられている。国連加盟国が2015年に採択したアジェンダは17の目標を掲げている。

 

まずはここで、貴校園におけるSDGsの認知度について確認しておきたいと思います。

小中学校では教科書に取り上げられている内容とのこと。

では大人たち、教職員各位はどのくらいSDGsを認知しているでしょうか。

教育内容はどんどん更新されていく中で、

心配すべきはむしろ大人のほうかもしれません。

 

この記事では、SDGsの目標を達成するために、

「企業人として留意すべきこと」が3つ挙げられています。

企業人のみならず、学校人もぜひ一度チェックしておきましょう。

 

まず1つ目に、SDGsの本質について。

SDGsは余剰利益の再配分ではなく、企業活動全般を通じて実現すべき目標です。

企業が収益活動を活発に行うほど目標に近づく、という発想ですから、

貴校園の活動そのものを通じて実現していくことが重要です。

 

2つ目に、経営者にとって「169のターゲット」を熟読することが有益、

と筆者は指摘しています。

17の目標を細分化し、各論に落とし込んだものが169のターゲット。

理念だけでは行動に繋げにくいかもしれず、そのような時には

この具体化されたターゲットが役立つと思われます。

 

そして3つ目にして最も重要な点が「地球との共生」。

気候変動対策やクリーンエネルギーの増進は当然のこと、貧困・飢餓の撲滅やジェンダー平等の実現もこれと深い関係がある。一つしかない地球を豊かにしなければ、貧困・飢餓は無くならないし、ジェンダーを超えた人々の活躍なしに、地球社会のバランスは保てない。

 

ただ、SDGsをあまりに崇高なものにしてしまうと、

身近なところからするりと逃げて行ってしまうような気もします。

その意味では、SDGsを「ブランド・マーケティングの手段」として

位置づけることは決して悪くない、いやむしろどんどんやるべき、

と感じています。

近年、私学の魅力をどう伝えるかがより一層大きな課題になっていますから、

SDGsをその基軸に据え、筋道の通った広報を展開することができるのではないか、

と期待しているところです。

貴校園でもSDGsへの積極的なお取組をぜひ。

 

(文責:吉田)

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国立大に資産運用会社

日経新聞に科学技術大臣へのインタビュー記事が掲載されていました。

そして、今回のタイトルには少々の驚きと、

やはりそうかという想いが入り混じりました。

学校の財政的自立を求める動きはより強まるのかもしれません。

 

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井上信治科学技術相は15日の日本経済新聞のインタビューで、国立大の収益力を高めるための法整備を進める考えを示した。国立大が資産運用子会社を設置できるようにするなどし、運用益を優秀な人材の確保に充てる方向へ促す。自立的な経営を後押しして大学の国際競争力を高める。

 

今回のインタビューがもともとそのようなテーマだったのか、

あるいはインタビューをしてみたらそのようなテーマでもちきりだったのか、

どちらかは分かりませんが、記事は「大学の資金確保」一辺倒、

という印象です。

ちなみに現在の法律では、国立大学が出資できる対象を

一部のベンチャーキャピタルなどに限定しており、

現行制度では資産運用会社を設けることはできません。

 

大臣が述べている言葉を並べると以下の通りとなります。

  • 「関連法を改正して大学改革をやってもらう」
  • 「2022年の通常国会で関連法の改正案提出をめざす」
  • 政府が21年秋にも創設する10兆円規模の大学ファンド(基金)の活用にも言及したうえで、この収益について、資産運用会社などの態勢を整えた国立大に優先的に配分する考えを示唆
  • 「大学改革をやってもらわないとファンドの使途としてふさわしくない」
  • 「将来は大学自身が自立し、自らの資金を確保できるようにしたい」

 

そしてこの記事の最後に、私学のことが少しだけ出てきます。

井上氏は「欧米と比べて日本の大学の財政力は非常に脆弱だ」と指摘した。米国のハーバード大は19年度に4.5兆円、スタンフォード大が3兆円の基金をもつ。東大や京大は事実上の基金にあたる「余裕金」を保有するが残高は200億円に満たない。私立大は原則として資産運用の制限がなく、政府は国立大の経営環境の改善を急ぐ。

 

私立大に資産運用の制限はないかもしれませんが、

それでも資産運用を積極的に行っているケースはそれほど多くないでしょう。

国立大でのしくみが整った後、私学でも資産運用は増えていくのでしょうか。

そして貴校園はこのことをどう捉えられますでしょうか。

自律財政に向けた取組の重要性を再度ご認識いただければと思います。

 

(文責:吉田)

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教員の質向上へ体制整備

学校教育の根幹を担う教員の皆さんがよりレベルアップするために。

その視点を再整理しておきましょう。

日経新聞より。

 

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萩生田光一文部科学相は12日、教員の質向上につながる養成や採用、研修のあり方を検討するよう中央教育審議会中教審)に諮問した。小学校全ての学年で実現する「35人学級」やデジタル化が急速に進むことなどを踏まえ、教員の指導力を高め、より質の高い教育を提供できる体制を整える必要があると判断した。

 

諮問で挙げられたのは下の表にまとめられた5項目。

教員の養成・採用・研修を一体的に検討する必要がある、との主旨です。

 

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弊社主催の学校経営セミナーでは以前から、

私学、特に教員組織の質的向上を図るためには

「良い先生を採用する」ことだけでなく、

「採用した先生をどのように育てるのか」という点にも

経営上の力点を置くべきではないか、とお伝えしてまいりました。

今回の整理ではこの点にも言及があり、

私学における経営改善としての着眼点整理に資するように感じています。

 

また、政府の働き方改革においては、

同一労働同一賃金」「労働時間短縮」が2本柱のように言われることも多い中、

実は「キャリアパス構築」がもう1本の柱であることは

あまり知られていないことかもしれません。

キャリアパスは弊社セミナーで2019年度に採り上げたテーマですが、

当時は(今も、かもしれませんが)まだ認知がそれほどなかったものの、

今回諮問された内容にはこのことも含まれており、

学校でもいよいよキャリアパスの概念が入ってくる可能性があります。

 

 

目の前に追われると付け焼き刃になってしまいそうなことも、

将来を見通しながら、早めから準備を始めれば、

貴校園なりのいいしくみができあがるかもしれません。

中教審の審議内容にも注意を払いながら、

教員組織の活性化を目指していきたいですね。

 

(文責:吉田)

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子どもの貧困、コロナで深刻

この頃よく耳にするようになった気がする、

「子どもの貧困」という言葉。

忘れてはなりませんね。

日経新聞より。

 

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新型コロナウイルスの感染長期化で子どもの貧困が深刻になってきた。与野党からひとり親世帯への現金給付といった支援策を政府に要請する声がある。自民党内では省庁横断で取り組むための「子ども家庭庁」の創設案が浮かぶ。

 

「子どもの貧困率」という統計があります。

これは、「中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合」

を指すものですが、2018年の統計値は13.5%だったのですが、

ひとり親世帯では48.1%と跳ね上がり、

経済協力開発機構OECD)諸国の中で最も高いレベルにあるとされています。

 

そして、コロナ禍でその環境は一層厳しくなっているようです。

下のグラフは労働政策研究・研修機構の昨年11月末時点の調査結果。

ひとり親世帯は特に苦しい状況になっていることが分かります。

 

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私学ではこのような状況に至っている家庭や子どもたちは

相対的に少ないのかもしれません。

しかしながら、私の知る限りにおいても、

家計の厳しさで学納金が未納となるケースが出てきているのも事実です。

 

少しは子どもの貧困について知っておかねば、と思われた方に、

この記事をご紹介させていただきます。

同じく日経新聞より。

 

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この記事で紹介されている5冊は以下の通りです。

書評の一部も引用させていただきます。

 

山野則子編著『子どもの貧困調査』(明石書店・19年)

データ量・質ともにピカ一である。大阪府の10万人の子どもとその保護者のデータを用いて子どもの生活の各側面(住宅、健康、つながり等)の格差を示している。

 

可知悠子著『保育園に通えない子どもたち』(ちくま新書・20年)

「無園児」(幼稚園にも保育園にも通っていない子ども)の状況を大規模データとインタビュー調査から描き出している貴重な一冊である。

 

松岡亮二著『教育格差』(ちくま新書・19年)

幼児教育から高校教育の間に蓄積される様々な格差がいかに子どもを差異化し、学歴格差を再生産しているのかを示し、日本の教育政策の改善を「建設的に議論するための4カ条」を提案する。

 

入江優子・加瀬進編著『子どもの貧困とチームアプローチ』(朱鷺書房・20年)

→教育現場で学力格差に対処するためにお勧めの1冊。

現在、教鞭(きょうべん)をとっている方、これから先生になる方、すべてに読んでいただきたい。

 

橋本健二・浅川達人著『格差社会と都市空間』(鹿島出版会・20年)

1キロメートル四方のメッシュデータを用いて、東京圏における「地域格差がどのように変容してきたのか、そして、作られてきたのか」を示す。(中略)同じ経済状況にあっても、貧困が子どもに及ぼす影響は、その子がどこに住んでいるのかによって異なる。(中略)地域格差の縮小は子どもの貧困対策としても必要なのである。本書はその改革のための基礎知識を得る一冊だ。

 

 

年度末のこの時期、慌ただしい毎日が続いておられると思いますが、

時にはこのような読書はいかがでしょうか。

 

(文責:吉田)

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中計の変更・延期、20年は7割増

貴校園の中期計画、2020年度の進捗はいかがだったでしょうか。

大変な一年だったことはここからも分かります。

日経新聞より。

 

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中期経営計画を見直す企業が相次いでいる。2020年に公表された計画の変更や延期の件数は19年比で7割増えた。新型コロナウイルス禍で事業環境が急変し、将来の収益計画が立てづらくなっている。目標とする業績の引き下げや投資の縮小が株安を招くケースも出ており、回復の道筋を市場に示す工夫が欠かせない。

 

一般企業の場合、特に上場企業においては自らの活動を株主に理解してもらい、

支援を続けてもらわなければいけません。

企業経営が順調かどうかを示す重要な指標のひとつが中計。

その修正が多くなっているというのが今回の記事です。

 

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修正の内容は目標とする業績数値の引き下げや取り下げが中心だ。コロナによる「新常態」が中長期に響く企業が多い。

 

私学の場合、コロナ禍の業績への影響は企業ほど大きくないケースが多く、

むしろ活動が抑制されて一時的に決算が好転する事例が多いと私は見ています。

しかし、今後を見据えた場合、例えば大規模工事が1年ずれこんだり、

行事の見直しが進まなかったりと、

活動そのものが停滞してしまったケースもあるでしょうから、

その影響は今後やってくると考えた方がいいようにも思います。

 

中期計画は今後数年間の見通しを明らかにしつつ、

各校園の方針とそれを支える施策を定めるものです。

貴校園の中期計画が2020年度を踏まえどのように修正すべきか、

新年度を迎える前にぜひともしっかりご確認いただきたいと思います。

 

そして今回の記事の最後にはこんなことが書かれていました。

私学でも意識しておきたいことですね。

 

事業環境が不安定ななかでも20年は332件、21年は2月までに85件で中計の新規策定(ローリング含む)があった。フィデリティ投信の重見吉徳氏は「コロナ後の世界で企業がどう成長するのかに市場の関心があり、設備投資計画が重要になっている」と指摘する。

 

(文責:吉田)

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