大企業も中小企業も、賃金水準が上がっていますよ、
という記事を先日ご紹介したのですが、
やっぱりそうだったのか、と感じた記事が後日出ていました。
日経新聞より。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
厚生労働省は(3月)27日、2023年の賃金構造基本統計調査の概況を公表した。一般労働者の平均賃金は過去最高を更新したが、世代別にみると大企業の35~54歳の賃金が減るなど、若手に重きを置く傾向が目立つ。働き方が多様化し、企業の人的投資のあり方も変わってきている。
この調査は、2023年6月の賃金について、48651事業所の回答を集計したもの。
まずは、今回の記事に付いていた下のグラフをご覧ください。
冒頭の文章にもありましたが、賃金が大きく上がった、とはいえ、
それは平均値の話であって、年代別に「増え方」に差があることが分かります。
特に大企業の30~50代は上がるどころか下がっている、
というのは顕著な特徴ですが、中小企業についても、
30代、あるいは50代の上がり方は相対的に低めになっています。
これは、特に20代、そして60代の人件費原資の確保が優先された結果、
と考えればある程度頷けます。
人手不足を解消するためのポイントが両世代ですので、
これはある意味自然な結果、とも言えます。
一方で、大企業で30~50代前半の給与水準がむしろ下がっている、
というのはなぜなのでしょうか。
記事にはこういった理由が書かれています。
従業員1000人以上の大企業では平均賃金が34万6000円と前年比0.7%減った。人手不足の業種で非正規雇用による人材の穴埋めが広がったことが影響したという。(中略)
女性の非正規就労が増えた結果、全体が下がったとの声もある。男性の賃金を100としたときに女性は71.0と前年調査から1ポイント近く下がり、男女間格差が拡大した。
なるほど、非正規雇用の増加が理由というのはあり得そうです。
が、私はもう一つ、理由が思い当たります。
それは、年功序列的賃金体系が本格的に崩れてきた、ということです。
中小企業では、中途採用者が高い割合で在籍していることも多く、
すでに年功序列賃金にはなっていない企業割合が高いように思います。
一方、大企業では成果主義的賃金体系の導入割合が増えているとはいえ、
年功的な要素がゼロになったわけではなく、
これまではその割合がある程度高かったと推測しています。
これが本格的に崩れる中で、
これまでの年功的体系で賃金カーブの上がり方が大きかった
30~50代の上昇率が抑えられた、ということが言えるのではないでしょうか。
さて、この大企業の状況はどこかと似ていますね。
そうです、私学の状況と似ているんです。
多くの私学の賃金体系は公立校、公務員にならっているため、
年功的な体系が未だに色濃く残っています。
その中で、この賃上げの波がやってきました。
仮にベースアップを実施するとすればどんな工夫が必要か、
今回の記事にヒントが隠されている気がいたします。
未来の賃金制度を見据え、検討を進めていただければと思います。
(文責:吉田)