寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

日本の教員、勤務時間突出

教員の勤務時間については同じようなデータが多く示されていますが、

その是正はなかなか進んでなさそうです。

(目の前の現実には合わない話になってしまいますがご容赦ください)

 

今回の記事では部活動指導に関しての提言がなされています。

さて実現の可否は。日経新聞より。

 

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経済協力開発機構OECD)の調査(2018年実施)によると、日本の中学校教員の勤務時間は、加盟48カ国・地域で最長の週56.0時間。特に部活動などの課外活動指導は平均の4倍、7.5時間と突出していた。教員の働き方改革を阻む現行の部活動のあり方は、持続可能性という点で大きな疑問符が付く。

 

部活動指導の負担軽減の方策として、部活動指導員というしくみがあります。

部活動指導員として期待されるのが競技を続けている学生ですが、

競技の経験値としては問題がないとしても、

教育者としての人格や指導力が疑問視されるケースもあり、

現場での浸透にはまだまだ課題があるのが現状でしょう。

 

大体大が実施した全国の教育委員会へのアンケート調査では、学生を任用する自治体は1割強と少なく、政令市など都市部に偏る。「学生の資質に懐疑的な見方もあり、人材として認めてもらう努力が必要」(中尾准教授)として、指導に必要な知識、ノウハウを学ぶ全10回程度の研修を実施する計画だ。

 

部活動指導員としてのスキルアップがあれば、

学生自身にもメリットがありますし、

学校側も活用の余地が広がるかもしれません。

 

 

貴校園における部活動のあるべき姿を明確にし、

それを実現するための体制について検討し、実現させたいですね。

 

(文責:吉田)

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高校生の親、進路に安定志向

本日はデータのご紹介を短めに。

でも気になるデータです。

日経新聞より。

 

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高校生がいる家庭で、保護者の4割近くは子が公務員になることを望む一方、子は公務員だけでなく教師や看護師など幅広い職業に関心を持っていることが、リクルートマーケティングパートナーズなどの調査で分かった。保護者の方がより安定志向が強いことがうかがえる。

 

調査は2019年9~10月に実施されたものです。

全国の高校2年生1997人と保護者1759人が回答されています。

今なら少し結果は変わるでしょうか、

あるいは同じ傾向がより強まるのでしょうか。

 

高校生に就きたい職業は下表の通り。

なんと1位が教師です。そして2位が公務員。

保護者が就いてほしい職業も1位が公務員、3位が教師でした。

 

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教員というのは職業としての認知度が高く、

高校生にとって特に身近な存在である、というのも

人気を押し上げている理由でしょう。

 

しかし、実際に就職期を迎えるとこの希望が維持されないのはなぜでしょうか。

やりがいでしょうか。業務内容でしょうか。

いや、それよりもやはり働き方が影響しているのかもしれません。

 

教員の志望者が増えることを願いつつ、

一方で高校での進路(≠進学)開拓をより幅広く実現されることを

願っております。

 

(文責:吉田)

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社会人、教員になりやすく

今年もいよいよゴールデンウィーク

ただ、今年のゴールデンウィークに気分踊る方は少数派かもしれません。

ウィルスの終息に向けた踏ん張りどころ、Stay Homeですね。

 

そんな状況にあって、学校の経営課題は依然数多く残っています。

特に人材の確保は消えない課題と言えるのではないでしょうか。

日経新聞でこんな記事を見つけました。

 

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大学などの教職課程を修了していない社会人が合格すると小学校教員の免許を得られる「教員資格認定試験」について、文部科学省は2020年度実施分から体育、音楽などの実技をなくすなどして受験者の負担を軽くする。試験の日程も半分に短縮する。小学校教員の採用倍率が低迷するなか、社会経験がある人材を広く教育現場に呼び込みたい考えだ。

 

「教員資格認定試験」のことを、私は知りませんでした。

教職課程を修了していなくても教員になれる方法があるのですね。

私も大学時代、教職免許を考えてはいたものの、

必修であった教育学の単位を落としてしまい、あえなく撤退した経験があります。

教員資格認定試験は社会人経験者を教職に向かわせるものとして、

まずはもっと認知が上がることを期待したいですね。

 

さて本題。

その教員資格認定試験の受験者数は非常に少なく、

特にここ数年は半減してきているようです。

下のグラフの右肩がずいぶん下がっています。

 

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この試験が始まったのは1973年で、当時の受験者数は約6千人。

それに比べると1割強まで減ってきているのですね。

 

その理由のひとつなのでしょう、試験はなかなか厳しいようです。

1~3次の3段階について計6日間かけて実施。

図画工作のデッサン、体育のサッカーのドリブル、

音楽のピアノ伴奏をしながらの歌唱といった実技試験…

確かにハードルが高いですね。

文科省

「教員自身の実技能力より児童にうまく教えられるかどうかの方が大切だ」

として、上記実技試験をやめ、2次試験までの計3日間に短縮するそうです。

 

 

さて、貴校園の教職員採用試験はどのようなものでしょうか。

採用試験はその組織で期待される役割を果たせるかどうかを

見極めるための存在であろうと思いますが、

試験内容がそれに見合っていないケースも世の中には多くあります。

採用難の時代、採用試験の見直しは大きな効果を生むかもしれません。

ぜひこの機会にご検討を。

 

(文責:吉田)

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賃上げ原資の配分方法

以前に一度採り上げた、日経新聞の連載記事「日本型雇用、改革の行方」。

今回は賃上げ原資の配分についてです。

 

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(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

景気最優先で政策運営にあたる安倍政権のもと、一時は「論外」ともされた賃上げが復活しました。労使間でその必要性が共有されたともいえますが、賃上げ原資の配分方法には大きな隔たりがあります。具体的には(1)「月例給与」か「賞与・一時金」か(2)「底上げ」か「メリハリ」か――という論点があります。

 

この点、貴法人ではいかがでしょうか。

記事によれば、労働組合は「月例給与」「底上げ」を望み、

経営サイドは「賞与・一時金」「メリハリ」を望む、

と書かれています。

しかし、私の感覚は少し異なります。

 

近年特に感じることとして、学校法人の場合、

労使ともに給与制度を変えたいと思う方が増えているのではないか、と。

そして、確かに以前は経営サイドの想いであったであろう、

「一時金重視」「メリハリ」型の給与制度が、

教職員サイドからも求められつつあるのではないか、と。

 

一方で、経営サイドはこのことに十分気付いていない、

あるいは気付いているけれど一部の反対意見に重きを置きすぎて

制度を変えることに踏ん切りがつかない、というケースも

少なくないように感じています。

 

そう考えると、各法人、あるいは各校園で今一度、

あるべき給与制度について労使ともに考えてみることが大事なのではないでしょうか。

以前に比べて一致できる点が増えているかもしれません。

 

ただし、ニーズだけで給与制度を決定するのは最善とは言えません。

月例給を変えることにも一時金を変えることにも、

メリットとデメリットが混在しています。

本日のブログの最後に、記事の筆者が述べておられる

着眼点について触れておきたいと思います。

「企業」が主語になっていますが、学校でも同じことが言えるでしょう。

 

 

ここで考えるべき点は、日本企業の競争力との関係です。市場構造・技術構造の変化を踏まえれば、日本企業は外部の経営資源を積極的に取り入れることが不可欠で、「革新型イノベーション」の担い手である優秀な人材を厚遇することは重要です。一方、多くの企業の強みは「改善型イノベーション」に基づく製品・サービスの品質の高さにあります。これは、多くの労働者が持つ高い職務規律や協力し合う職場風土が育む、「現場力」に支えられています。現場力を維持・向上させるには、労働者の士気を高め、その貢献に広く報いることが必要です。

 

(文責:吉田) 

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都立高離れは格差を広げる

大学生が寄せた投稿を日経新聞で見つけました。

公私の役割について、改めて考えてみるのもいいかもしれません。

 

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2020年の都立高校入試では47校が募集定員割れし、現行制度で過去最多を記録した。かたや中学受験は空前の人気で、都内の公立小学校卒業生のほぼ5人に1人が私立中学の受験を選択している。大学受験に有利とされる私立の中高一貫校などに希望者が殺到し、都立高離れに拍車がかかっている構図だ。こうした状況は格差の再生産を生む恐れがあり、制度の見直しを求めたい。

 

東京都では私立中学人気が再び高まっていますね。

高校からの新入生を募集しない中高完全一貫校も増えていて、

国内の他地域とは少し異なる状況であるとも言えます。

 

この投稿をした大学生ご自身は私学出身です。

であるにもかかわらず、公立校が担うべき役割について考察し、

公立校離れが進むことに懸念を示されています。

 

以前いくつかの地域に存在した、学校群制度

受験競争の過熱を抑制し、地域ごとの学力を平準化することを目指して、

合格者を地域内の各校に振り分けるものでした。

しかしこれを嫌がる生徒や家庭も少なからず現れてしまい、

私学が重要な進学先として選択されるケースが増えたようです。

 

近年では公私ともに中高一貫校がもてはやされ、都立高離れという問題は置き去りにされている。このまま都立高が生徒を確保できなくなれば、設備や教員の質の維持が難しくなり、役割を果たせなくなる事態も起こりうる。公教育は公立校と私立校によって完成されるはずだが、東京をはじめ都市部では私立優位のいびつな形が目立っている。公私それぞれに異なる良さを発揮し、子どもの要求を満たしていく姿が求められる。

 

この新聞記事では文字数が限られていることもあって、

より詳しい内容を知ることができないのですが、

指摘されている「私立優位のいびつな形」というのは

果たしてどのような状況を差しているのか、

そして今後公私の役割分担はどうやってなされるべきなのか、

といった点について言及がないのが残念です。

 

もう1点気になるのは、中高一貫校について公立校と別枠に扱っておられる点。

公立中高一貫校について、筆者はどのように考えているのか、

この点も大変興味深いところです。

公立校が特に学力優位の生徒を集めるような施策を打つことこそ、

公私の特色を打ち消してしまい、公立校の本来の社会的役割である

「進学先を広く確保する」ということからかけ離れて行っていることが

私自身は気になっています。

 

筆者はこの投稿の最後に

「生徒や保護者が学歴を求める姿勢は根強く、改革は簡単ではない」

と書かれています。ここが本質かもしれませんね。

 

いずれにせよ、私学として、私学らしい学校として存続していくために、

公立校との役割の違いについて意識することは重要だと思います。

大学生の投稿に大いに気付きをいただきました。

 

(文責:吉田)

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在宅勤務「嘘ない組織」カギ

昨年度の弊社主催セミナーでも採り上げたサイボウズさん。

代表の青野氏が在宅勤務のポイントとして挙げたのが

「嘘がないこと」でした。

さてそのこころは。日経新聞より。

 

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サイボウズの人事制度のしくみをご存知でしょうか。

ご存知の方なら不思議はないのですが、

昨今のコロナウィルス対策が業務に支障をきたさないであろう、

代表格的存在がサイボウズだと思います。


普段から各自のスケジュールをグループウエアで公開。

顧客やタスクリストを共有。

社内でコミュニケーション不足にならない仕組みがあるので、

「横の席か画面の向こうか」という差しかないのです。

 

そして、在宅勤務が機能するポイントについて、青野氏はこうおっしゃっています。

 

「普段から誰が何の仕事をしているか可視化することだ。サイボウズの出社率は普段から7割程度。ある曜日だけ在宅勤務といった社員も多い。多様な働き方を受け入れると、連携しなければそれぞれの仕事は成り立たない。そうなると情報共有が徹底される。困っていれば発信できるチームワークは必ず必要。あとは社員が嘘をつかなくていい組織風土づくりだ」

 

嘘をつかなくていい、とはどういうことでしょうか。

在宅勤務になると、社員が本当に働いているのか疑問だ、

という声を聞くことがありますよね。

この原因について、青野氏曰く。

「仕事をしていないのにしているという嘘をつくのはなぜかと考えると、自分を守るためだ。組織に失敗を詰め、人事評価でマイナスにする文化があると、人は嘘をつく」

「嘘をつかない、隠さないという組織風土にしていくのが大事だ。『アホはいいけど、嘘はダメ』がスローガン。例えば、遅刻した理由が前日に飲み過ぎて寝坊したならアホだけど、仕方ないねで済む。体調が悪いなど嘘で隠すのはダメだと徹底している。米国のIT企業で在宅勤務を取りやめる動きがあったが、こうした風土がなく生産性が上がらないといった問題が起きたのではないかと思う。インフラ整備は必要だが、それだけではうまくいかない」

 

なるほど、嘘をつくスタッフが悪い、という考え方ではなく、

嘘をつかせる組織のほうが悪い、というふうに考えるのですね。

確かに、嘘をつかざるを得ない組織というのは

健全ではないと言えるかもしれません。

 

さて、貴校園はいかがでしょうか。

嘘が蔓延してはいませんか。この機会にふりかえってみたいところです。

組織のルールが性悪説に基づいていると、コストは上がりますよね。

 

「2010年に在宅勤務を導入した当初は怖々だった。申請が必要で、仕事の成果を報告するよう求めていた。だが情報共有して嘘をつかないという風土があれば、これらは不要で無駄なマネジメントコストがかかるだけだと分かり、やめた」

 

 

嘘のない組織づくりというのは簡単ではないでしょう。

しかし、それにチャレンジする意義は大きいように思います。

 

(文責:吉田) 

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成果主義導入の教訓

日経新聞でテーマごとに連載される「やさしい経済学」。

先月は「日本型雇用、改革の行方」というテーマでの連載があり、

興味深く読ませていただきました。

その中から、いくつかをご紹介します。

今日は第7回「成果主義導入の教訓」です。

 

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経営環境の激変を、企業も学校法人も経験している昨今。

今後はそんな激変がむしろ当たり前になっていくのではないか、

とすら感じます。

 

その中で、人事制度も様々に変化しています。

ここのところ優位なのが、「優秀人材を採用し、活躍させる」という考え方。

組織全体で改善を進める、というのではなく、

優秀な少数の人材が全体を引っ張り上げる、そんなイメージでしょうか。

 

そうなると、そのような優秀な人材とそうではない人材で

処遇を変える、ということに焦点が当たります。

そこで出てくるのが「年功序列からの脱却」という考え方です。

 

 

ここで思い出されるのは1990年代末から2000年代初めの

成果主義」の流行と失敗です。

当時、個人の成果を重視し、「破壊型イノベーション」を喚起することを狙い、

まさに昨今言われるのと同じような成果主義がもてはやされました。

 

しかし、成果主義が正常に機能するためには

「異質なものを受け入れる組織風土の改革」「従業員の流動性上昇」

が条件であるのに、それが不十分なままで評価制度だけを変えてしまい、

結果として思うような効果が得られず、

それどころか組織全体がマイナス方向へと進んでしまいました。

 

成果主義は組織内での人材育成やチームワークを悪化させかねず、補完する対応を採らなければ「改善型イノベーション」は弱まります。人材の選別が進み、職場の一体感が薄れる一方で、キャリア自律を支える環境整備が不十分だったため、社員のエンゲージメント(仕事への熱意)が大幅に低下したのです。

 

ここのところ、各校園で評価制度への関心が高まっているように感じます。

制度の検討はぜひともしていただきたいと思う一方で、

この記事の筆者が指摘するポイントについても

押さえておいていただきたいと思います。

 

人材獲得競争が激化し選別人事の色彩が強まると、「普通の人々」のモチベーション維持が課題となります。この点が新たな成果主義成功のカギといえるでしょう。

 

(文責:吉田)

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