日経新聞でテーマごとに連載される「やさしい経済学」。
先月は「日本型雇用、改革の行方」というテーマでの連載があり、
興味深く読ませていただきました。
その中から、いくつかをご紹介します。
今日は第7回「成果主義導入の教訓」です。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
経営環境の激変を、企業も学校法人も経験している昨今。
今後はそんな激変がむしろ当たり前になっていくのではないか、
とすら感じます。
その中で、人事制度も様々に変化しています。
ここのところ優位なのが、「優秀人材を採用し、活躍させる」という考え方。
組織全体で改善を進める、というのではなく、
優秀な少数の人材が全体を引っ張り上げる、そんなイメージでしょうか。
そうなると、そのような優秀な人材とそうではない人材で
処遇を変える、ということに焦点が当たります。
そこで出てくるのが「年功序列からの脱却」という考え方です。
ここで思い出されるのは1990年代末から2000年代初めの
「成果主義」の流行と失敗です。
当時、個人の成果を重視し、「破壊型イノベーション」を喚起することを狙い、
まさに昨今言われるのと同じような成果主義がもてはやされました。
しかし、成果主義が正常に機能するためには
「異質なものを受け入れる組織風土の改革」「従業員の流動性上昇」
が条件であるのに、それが不十分なままで評価制度だけを変えてしまい、
結果として思うような効果が得られず、
それどころか組織全体がマイナス方向へと進んでしまいました。
成果主義は組織内での人材育成やチームワークを悪化させかねず、補完する対応を採らなければ「改善型イノベーション」は弱まります。人材の選別が進み、職場の一体感が薄れる一方で、キャリア自律を支える環境整備が不十分だったため、社員のエンゲージメント(仕事への熱意)が大幅に低下したのです。
ここのところ、各校園で評価制度への関心が高まっているように感じます。
制度の検討はぜひともしていただきたいと思う一方で、
この記事の筆者が指摘するポイントについても
押さえておいていただきたいと思います。
人材獲得競争が激化し選別人事の色彩が強まると、「普通の人々」のモチベーション維持が課題となります。この点が新たな成果主義成功のカギといえるでしょう。
(文責:吉田)