寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

首都圏私大の下宿生、初期費用230万円最高

学生にとっては本当に厳しい状況なのではないか、と心配です。

日経新聞より。

 

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今回の記事にある調査は2023年5~7月に実施され、

栃木、埼玉、東京、神奈川の4都県にある、

13の私立大学と短期大学に入学した新入生の保護者3905人から

有効な回答を得たものとなっています。

 

首都圏の私立大に2023年度入学した下宿生の受験費用や敷金・礼金、生活用品費などを含めた初期費用が230万2181円で過去最高だったことが5日、東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)の調査で分かった。22年度から4万6801円(約2%)増えた。

 

1年で2%。ちょうど物価上昇とリンクしているような数字ですね。

特に上昇しているのはパソコンや家具など生活用品費のようで、

なんと前年度比14%増(363,800円)。

そしてもうひとつが、いわゆる学費。

文部科学省のデータに基づく初年度納付金は1,365,281円で

過去最高額となったそうです。

 

一方、受験費用は11,500円減少(253,800円)した、とのこと。

東京私大教連では、受験の回数を減らしたり、

自宅から近い大学を選んだりして出費を抑えたとみています。

 

学校側も当然、物価高の影響を受けて財政面が厳しくなっていると

考えられますが、家計も同様、いやそれ以上になっている可能性がある、

ということを忘れてはなりませんね。

納付金という収益計上されるものだけでなく、

預り金や積立金といったものも家計にとっては同じ支出です。

学校側の永続性を念頭に置きつつも、

家計にとって過剰な負担とならないような配慮が必要かもしれません。

 

(文責:吉田)

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「あえて非正規」若者で拡大 10年で14万人増

「安定」を求めていたのは今や昔のこと、なのかもしれません。

日経新聞より。

 

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非正規の働き方をあえて選ぶ人が増えている。25~34歳のうち、都合の良い時間に働きたいとして非正規になった人は2023年に73万人と、10年前より14万人増えた。「正規の職がない」ことを理由にした非正規は半減した。正社員にこだわらない働き方にあった処遇や、社会保障の制度設計が必要になっている。

 


まずは上のグラフを見て、どのようにお感じになるでしょうか。

職がない、という理由は大幅に減り、

ライフスタイルとの整合を図りたいというニーズが急増しています。

記事のタイトルにあるように、あえて非正規を選ぶ、

というケースはわりあいとして増えていることは間違いなさそうです。

 

では、非正規で働く人の数はどう変化しているのでしょうか。

非正規社員総数は2023年で2124万人。これは10年前に比べ218万人増です。

が、主な増加要因は高齢者で働き続ける人が増えたことによるもの、とのことです。

 

では若者はどうなのか。

非正規として働く25~34歳は237万人で、こちらは直近10年間で64万人減です。

そしてこのうち「正社員の仕事がない」と答えたのは30万人で54万人減。

もし、非正規を選びたいという気持ちが働かなければ、

非正規社員の数はもっと大きく減っていたのかもしれません。

 

さてこのような状況を踏まえ、私学で検討すべきはどんなことでしょうか。

人手不足が深刻になる中で、時間の自由度の高さが望まれるとなれば、

働き方の多様化を進めていくことは避けられないように思います。

 

記事にも、東大大学院の山口慎太郎教授のコメントとして

「プライベートを充実させたい人も増えた。仕事への価値観が変化している」

と書かれています。

教職という仕事への価値観も変化していることを前提とすれば、

学校だけがその変化をくみ取らなくていいわけではないでしょう。

望まれる職場となるために、さて何から始めましょうか。

 

(文責:吉田)

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中小私大改革、地元ニーズで 構造転換へ補助金

具体的な運用がどうなるのか、注目したいと思います。

日経新聞より。

 

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文部科学省が2024年度から中小規模の私立大学を念頭に経営改革支援を始める。18歳人口の減少で、地方の中小規模の大学は経営環境が厳しさを増している。安定経営に向け、観光や医療といった地元のニーズに合わせた専門人材育成など構造転換を促す狙いだ。

 


この新たな制度による支援期間は2024~28年度の5年間。

支援を受けたい私立の大学や短大、高専を公募し、

日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)に設置する有識者委員会が

提出された複数年度にわたる将来の経営計画を審査するそうです。

この記事には

「現状分析をはじめ、地域を支える専門人材の育成や学部再編により

 改善が図れるかなどを評価する」と書かれているのですが、

将来計画だけでなく現状分析まで評価されるんですね。

何だか、私学事業団の言いなりになってしまうのではないかと

少々心配にもなるのですが…

 

それはさておき。

この制度では、中小規模の大学などを中心に45校が採択され

(校数が決まっているのだとすれば相対評価になるんでしょうかね)、

1校あたり年間1,000万~2,500万円の補助金が支給されるそうで、

さらには私学助成の一般補助も増額されるとのこと。かなり手厚いですね。

 

具体例として、観光業が盛んな地域で不足するマネジメント人材を育成するため、観光に特化したカリキュラムの新設や留学生・社会人の受け入れ強化などで地域に根ざした大学とする計画が挙げられる。観光、農林水産業、医療など地域ごとのニーズを把握するために自治体や産業界と協力するコンソーシアムの設立なども考えられる。

 

そして上記とは別に、財務体質の強化推進という目的のもと、

複数の大学が連携して事務などの運営機能を共同利用できる取り組みに対し、

2024年度から5年間補助金が支給されるという制度も導入されます。

同年度中に5グループを採択し、支給額は1グループあたり年間3,500万円。

こちらもそれなりの規模ですね。

 

私学をめぐっては、大学の苦境が報じられることはそれなりにありますが、

それよりも早く、高校以下の学校種において少子化の影響が現実化します。

大学ですら、2023年春の入学者が定員割れした私大は53%(320校)と

5割を超えています。

補助金のしくみが高校以下にも求められるところですが、

それがないからといって無策を続けてはならないとも思います。

自律財政に向けた取組を積極的に進めていただければ幸いです。

 

(文責:吉田)

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「緩境界化」時代を乗り切る

久しぶりに、日経新聞の連載【やさしい経済学】から。

『変わる雇用と「エンゲイジメント」』というテーマの連載記事で、

今年の2月末に掲載されたものをご紹介します。

 

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(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

おそらく私学関係者の皆様も感じておられると思いますが、

日本では近年、雇用・労働環境が変わり、価値観や働き方の多様化が進んでいます。

そしてこの記事の筆者は、現状を

「社会や働き方の境界が緩やかになりつつある」と表現していらっしゃいます。

 

例えば、年齢の枠にとらわれずに働く生涯現役への移行は、現役と老後との境界を緩やかにします。場所や時間に左右されない在宅勤務の導入は、仕事と私生活、労働と休みとの境界を緩やかにしています。

少子高齢化が進み労働力人口が減少しているため、企業は労働力の「質」の向上を通じて生産性を高める戦略に転換しています。一方、労働者も働く意義を再考し、より充実した働き方を模索し始めています。

 

まずはこの現状認識を、私学関係者の皆様とも共有したいと思います。

年齢や時間、場所という境界が緩やかになっている現実。

さらに、労働力人口の減少によって企業側は「量から質への転換」を図り、

労働者側の志向も同じく「量から質へ」と向かっている。

さて貴校園でも、そのような現状把握をされていますでしょうか。

もしまだ「質より量」といった考え方が支配的だとすれば、

まさに考え方の転換を図る必要性があるのではないでしょうか。

 

さてそのような「緩境界化」時代に直面している昨今において、

どうすればワーク・エンゲイジメントが高まるのでしょうか。

記事の筆者はこのような提言をされています。

 

仕事の資源に関しては、上司や同僚からの支援仕事のコントロールへの注目が重要です。在宅勤務では自律的に仕事ができる半面、周囲からのサポートが得にくく、孤立しやすくなります。メンバー同士の助け合い思いやりある行動を増やす工夫仕事以外の話題なども気軽に話せる場の設定が必要です。

個人の資源に関しては、自己効力感仕事の意義(働くことの意義)を高めることが重要です。自己効力感は自らの行動を主体的にコントロールできるという感覚です。先行きが不透明な中で自律的な働き方を求められても、自己効力感は実感できません。身近で具体的な目標を設定し、これらを達成することで小さな成功体験を積み重ねる工夫が求められます。

(太字への加工はブログ筆者によるものです)

 

学校で働く教職員さんは、「組織」としての感覚が弱いことが多いものです。

これからは周囲との関係性をより重視しながら、

仕事の目的や意義をより明確にしてもらうような工夫が必要なのでしょう。

 

業務の成果を大きくするためにはエンゲイジメントが特に重要、

ということが言われるようになっています。

ぜひとも貴校園の職場づくりの中でも意識してみていただきたいと思います。

 

(文責:吉田)

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共働き世帯「小1の壁」崩せ

首都圏の記事ですが、学童の待機が問題となっている地域は

きっと他にもあるでしょう。日経新聞より。

 

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(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

首都圏で小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)に希望しても入れない児童が増えている。2023年度の待機児童数は東京都、埼玉・千葉の両県で全国の4割を占めた。保育施設での待機児童解消が進む中、今度は小学校に上がると子どもの預け先がなくなる「小1の壁」が深刻になっている。

 

東京・埼玉・千葉で全国の4割を占めた、とありますが、

こども家庭庁の調査によりますと、全国の学童の待機児童は

2023年5月時点で約16,300人。

首都圏は特にそうだと思いますが、

共働き世帯が多い地域での問題化が進んでしまっているようです。

さて、貴校園の周辺ではいかがでしょうか。

 

以前は保育所の待機が社会問題化しましたが、

それは解消されつつあります。

続いて出てきたのがこの学童保育の待機問題。

共働きが推奨される昨今の時代背景もあって、

子どもたちが放課後どうやって過ごすかは社会全体の問題でもあります。

 

一方で、学校は今後少子化がさらに進み、

私学では在籍する子どもたちの数が減り、収益が減る、

という問題も出てきています。

そこで、例えば子会社等を活用して学童保育事業を展開する、

といったことも検討に値するケースが出てくるかもしれません。

 

今回の記事には、学童保育サービスを展開している自治体や

事業者の例がいくつか掲載されています。

 

例えば東京都墨田区は2025年4月ごろまでに3つの公立学童クラブを新設、

区内全体の定員を約3000人にまで増やすそうです。

さいたま市は市立小学校4校で今年度から

さいたま市放課後子ども居場所事業」を始め、

最長午後7時まで利用できるようにしたそうですが、市の担当者は

「パート勤務をしている保護者などからは、夏休みをはじめとした

 長期休業期間のみ放課後児童クラブを利用したいという声も多く、

 様々な家庭のニーズに対応できる仕組みが必要だ」とおっしゃっています。

 

公立学童は経済的な負担が少ない一方、利用時間や学年などに制限があり、保護者の就労状況によっては利用できない場合もある。そこで自治体が注目するのが企業などが運営する民間学童だ。預かる時間は柔軟に対応し、独自のサービスを提供する学童が増えてきた。

 

民間企業の例としては、学童が学習塾の機能を併せ持つ例、

工作やプログラミングなどプラスアルファの体験を盛り込む例などが

掲載されています。

ウィズダムアカデミー横浜上大岡校(横浜市)にはランドセルを背負った子どもたちが笑顔で集まってくる。ただ見守るだけでなく、子どもたちが自宅で過ごすようにほっとできる環境をつくり出すため挨拶にも工夫をこらす。

性別や学年、家庭環境も異なる子どもたちが楽しく過ごすために、力を入れているのが月ごとに選べるアクティビティーだ。ピアノや書道など定番の習い事からプログラミングや理科実験教室まで、保育時間中に様々な体験ができる。習い事や教室をこれまでどおり続けたいという場合は習い事の付き添いにも対応する。

 

さて貴校園にとって、この記事は何かご参考になる点はありましたでしょうか。

社会問題を解決する場としても、貴校園の存在感が高まることを願っております。

 

(文責:吉田)

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学校経営情報No.85(2024年4月号)を発刊しました

4月1日、月曜日。

本日から新年度のスタートですね。

 

今年度は弊社も丸10年を過ぎ、11年目がスタートしました。

「母校を失わせてはならない」との初心を忘れず、

私学経営の支援者としていっそう努めてまいります。

引き続きのお付き合いをよろしくお願いいたします。

 

さて本日は弊社情報誌の発刊日。

今回分も弊社HPに掲載させていただきましたので、

リンクを貼っておきます。

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目次もご覧いただきましょう。今回のラインナップです。

  • 巻頭言(「触媒」でありたい)
  • Expert Column - 私の提言 -
     Vol.1 これからの私学のファシリティマネジメントの要所
  • Y's NEWS 学校経営ブックレットのご案内
  • 2025年度からの新ルール! 私学法に基づく学校法人会計基準のあらまし
     1. 法及び基準の改正に関する情報源
  • School Management Review 大学生2割、子ども望まず

 

今回から巻頭言として、私がひとこと書かせていただいております。

弊社の活動に対する想いを言葉に乗せてみましたので、

ご笑覧いただければ幸いです。

 

そして新企画が2つ。

1つは「Expert Column」。

各方面の専門家から、毎回読み切りで、

私学経営上で留意したい点について寄稿をいただくコーナーです。

今回は施設整備にまつわるポイントを、

建築アドバイザーの池田恵次先生からご寄稿いただきました。

いろいろ気づきがあると思います。ぜひともご覧ください。

 

もう1つは「私学法に基づく学校法人会計基準のあらまし」。

私学法改正への対応に関し、

各校園とも検討を重ねておられることと思いますが、

少し後手に回りそうな会計面でのルール変更について、

連載をさせていただくことといたしました。

今回は情報源のご紹介にとどまりますが、

次回以降、本編を始めてまいりますので、

頭の整理、情報の整理にご活用いただければ幸いです。

 

というわけで、新年度も弊社はこのブログを通じて、

貴校園の経営を精一杯サポートいたします。

引き続きのご愛顧をよろしくお願いいたします!

 

(文責:吉田)

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学校事故の対応指針改定へ

年度末に、改めて確認しておきたいところです。

日経新聞より。

 

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(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

文部科学省は(2月)27日、学校で死亡事故などが起きた場合の対応指針の改定案を有識者会議に示した。再発防止を図る観点から、教育委員会や私立学校側の責務を明確化して調査や報告の徹底を求め、国の役割も明記した。

年度内に改定した指針を全国の教育委員会などに通知する。

 

ポイントのまとめは下の表の通りです。

 


事故の例として想定されているのは、

校舎からの転落や運動用具の転倒などです。

現在の指針では、

「登下校中を含めた学校の管理下で発生した死亡事故」

に関し、都道府県教委などに国への一報を求めているにもかかわらず、

文科省が昨夏に実施した調査では、

国に報告していないものがあると回答した教育委員会が6%あったそうです。

 

今回の改定案では、国への一報を求める事案に

「意識不明など児童生徒の命に関わる重大な事故」

が追加されます。

加えて毎年度、事故の発生状況や調査結果、原因をまとめて

国に報告することも求められます。

 

こういった事故が起こった場合、私学としてはまず

管轄行政庁に対して報告するのが基本になっているはずです。

もしその認識が薄い場合には、校園内で再度確認を行っておきましょう。

 

重大事故を未然に防ぐこととともに、

万一起きた場合にはきちんと報告することが両面となり、

貴校園の安全対策の十全性が確保されるものと思います。

新年度も事故がないことを願うとともに、

貴校園が信頼される教育機関であり続けられますように、

万全の体制を維持していただければと思います。

 

(文責:吉田)

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