寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

「学童保育」空き待ち15%増

学童保育の需給バランスが取れていないようです。

日経新聞より。

 

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共働き家庭などの小学生を放課後に預かる学童保育を希望しても利用できない「待機学童」が2022年春に、東京23区で2600人あまりいることが日本経済新聞の取材で分かった。前年春より15%増えた。大型マンションの建設や親の就業意欲による需要の増加に受け入れが追いついていない。21年度末までに全国で待機ゼロとする政府目標は未達に終わった。

 

この記事の中心は東京23区内の状況についてなのですが、

厚生労働省では学童の待機が多い5月などのデータを全国から集計のうえ

12月に公表しておりまして、それによりますと、

小学生向けの放課後児童クラブ(学童保育)に預ける希望を出して

断られた子どもの数は、2021年調査で13,416人となっています。

 

ちなみに、厚労省文部科学省は、2018年からの子育て支援計画で、

全国の学童の待機を2022年3月末までにゼロとする目標を掲げ、

自治体に補助金を出して施設づくりを後押ししてきました。

しかし現実には待機をゼロにすることはできなかったようです。

 

実際、学童の利用者は下のグラフの通り、増えてきています。

ちなみに2021年5月の全国の学童施設は26,925カ所、

利用者は1,348,275人。かなりの数ですね。

 

 

少し前までは保育所の待機が話題になっていましたが、

そちらは少し落ち着いてきた一方、

学童のほうは依然大きな社会的課題となっているようです。

ひょっとすると、貴校園でも学童保育事業の実施あるいは連携等について

検討されたことがあるかもしれませんね。

 

放課後の問題は学校にとって直接的な課題とまでは言えないかもしれませんが、

子どもの安全や健やかな育ちという意味では、

学校が終わった直後の時間帯を過ごす場ということもあり、

学校が全く無関係、とも言いにくいところがあるように感じます。

 

こういった課題解決には地域との関わりが欠かせぬ要素になります。

学校生活がより豊かなものになるように、かつ、

放課後も学校が面倒を見るのが当たり前とならないようにするためにも、

地域での子どもの居場所を意識的に作っていくことが

大切なのではないでしょうか。

 

(文責:吉田)

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コロナ禍と大学生の変化 学びに「受け身」増える

コロナ禍を経て変化したことはいろいろありますが、

これは注意が必要な変化ではないでしょうか。

日経新聞より。

 

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この記事の基礎となっているのは、

ベネッセ教育総合研究所が2021年12月に実施した

「第4回大学生の学習・生活実態調査」です。

この調査は2008年から4~5年に1回実施している大規模な学生調査で、

記事掲載の実施回では大学1~4年生4124人が対象となっています。

 

まずは下のグラフをご覧いただきましょう。

大学生の学習時間はコロナ禍でどう変化したのでしょうか。

 

 

授業時間外学習はほとんど増えていない。遠隔授業の導入で課題を出す授業の割合が増え、学生からも「課題が多い」という声が多く聞かれた。授業外学習が増えると予想していたが、結果はほとんど変わらなかった。

「授業の予復習や課題に費やした時間」(1週間平均)は16年の2時間42分が21年には3時間29分と47分増えたが、1日に換算するとわずか7分弱だ。同じ間に「授業などへの出席時間」は11時間42分から8時間34分へ大幅に減少し、総学習時間は減ったともいえる。単位制度の実質化と学習時間の確保は依然、大学教育の主要課題なのだ。

 

リアルの授業とオンラインの授業ではメリットとデメリットが

交錯することは理解できるのですが、

オンラインのメリットの一つが

「移動時間なしに学習できること」

だと感じている私にとって、この結果は衝撃的でした。

なぜこのようなことが起こっているのか。

この記事の筆者であり、本調査にも参加している

関西大学・山田教授によれば、学生が受け身になっていることが

大きな要因である、とのことです。

 

そのひとつのあらわれが、学びに対する考え方。

「あまり興味がなくても単位を楽にとれる授業がよい」

と考える学生が2008年は49%だったのが今回は63%に増加。

「大学での学習の方法は、大学の授業で指導をうけるのがよい」

と思う学生は同じく39%から57%に増加しています。

自らの学生時代の態度や意識は今更反省のしようもないほどではありますが、

それは横に置くこととして、

アクティブラーニングの掛け声むなしく、

主体的な学びからはむしろ遠ざかってしまっている印象です。

 

理由としてはアクティブラーニングの成功に不可欠な明確な目的や問い、教員からのフィードバックなどが十分に実践されていないという教員側の要因が考えられる。高校までに主体的に学ぶ姿勢が身についていないことや単位の取得が目的化していること、さらには将来不安による早期からの就職準備など学生側の要因もあるかもしれない。

 

今回の記事は大学生に関するものですが、

これは中高生等にもあてはまるところが少なからずあるのではないでしょうか。

目的意識が不十分で、学びの意欲が高まらないことは

本人のやる気不足で片づけてしまうわけにいかない

大切な要素が含まれているような気がします。

 

筆者は、大学教育が検討すべき方向性をいくつか挙げておられます。

 

一つは「効果的な遠隔授業のデザインと実践」。

遠隔授業をカリキュラムの中で機能させるには、

積極的な意義を持たせるデザインとその実践が不可欠でしょう。

 

一つは「教育課程全体の中で遠隔授業の質を保証するための教学マネジメント」。

組織全体で遠隔授業の質向上を図るためのマネジメントもまた、

教育機関として大変重要なテーマだと感じます。

 

一つは「対面授業のアップデート」。

記事には、遠隔授業を経験した学生の意見として

「知識伝達型・一方向型の授業は遠隔授業でよい」

というものが紹介されています。

だからこそ、対面授業そのもののあり方を見直し、

対面授業の質向上を図ることで、

対面ならではの学びを経験できる授業に転換することが重要です。

 

質保証された遠隔授業とアップデートされた対面授業のベストミックスを構築することが求められる。大学経営が厳しさを増す中、コロナ禍の経験をどう捉え、新しい大学教育へ変容できるか。この数年が大きな分岐点になるだろう。

 

貴校園での授業はその後、望ましい変化を遂げているでしょうか。

それとも、以前に逆戻り、でしょうか。

よりよい学びを強く意識し、実践することが今ほど適した時期はないでしょう。

主体的な学びが展開される授業を大いに期待しております。

 

(文責:吉田)

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教育格差の処方箋

先週はこのブログ、隔日掲載となり失礼いたしました。

本日より以前のペースで再開できればと思っております。

引き続きよろしくお付き合いください。

 

さて本日の記事は、政策提言のように見えますが、

それだけではない、という指摘だと捉えました。

日経新聞より。

 

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教育格差とは、子供本人が変更できない初期条件である

「生まれ」によって、学力や最終学歴といった教育の結果に

差がある傾向を意味します。

日本社会における主な「生まれ」の中身として、

・出身家庭の社会経済的地位(Socioeconomic status=SES)

・出身地域

・性別

が挙げられるそうで、1つめのSESは

保護者の職業・学歴・世帯収入などにより構成されています。

 

まず、この記事にはコロナ禍により生活が苦しくなったかどうかを

親の最終学歴で分類した調査結果が掲載されています(下図)。

これだけを見ても、教育格差という問題が孕む事の大きさがずしりと響きます。

 

 

他の先進諸国と比べると日本の教育格差は小さいという印象論を目にするが、国際比較データをみると、SESと学力や最終学歴の関連の強さは先進国の中で平均的だ。日本は凡庸な教育格差社会にすぎない。

 

この記事の筆者は、「生まれ」により子供の可能性を制限しない社会を

つくるために何が必要なのか、という点について、

以下の9項目を参議院参考人として意見陳述していらっしゃいます。

この記事では項目だけを引用しますが、

記事にはそれぞれの説明も付されていますので

ぜひともご覧いただければと思います。

 

(1) 文科省調査の設計改善

(2) 文科省の調査予算の増額

(3) 教育データの標準化・主要調査項目の共通化

(4) 教育格差の実態とメカニズムを踏まえた政策の提案

(5) 行政データを教育分析に活用する都道府県・政令指定都市に予算をつける

(6) 主要大学における調査研究機能と研究者養成の強化

(7) 教育行政官の増員

(8) 教職課程における『教育格差』の必修科目化

(9) 現職の教育関係者を対象とした『教育格差』研修の必修化

 

教育格差を是正するために必要なことの多くは

行政施策や法整備によるところが多い、

というのはひとつの事実でしょう。

ただ、9つの項目のうち、最後の9番目については

現場での取組みや意識が重要であることを示しています。

 

平均的に高SES家庭出身で学校教育に忌避感を覚えず大学に進学し教職を選ぶ層は、恵まれぬ家庭の子供と同じ経験を持たない傾向にある。不利な「生まれ」の子供たちがどんな経験を重ねて学習や進学に困難を感じるのかを知ることは、教師として子供たちに伴走する際の手助けになるはずだ。同様に体系的な教育格差の研修は、現職教員、学校管理職、国と地方の教育行政官にとっても有益な視点を提供することになる。

 

学校教育が社会の不平等をなくしていくための

大きな役割を担っている気がしてなりません。

私たちが忘れてはならない視点と言えるのではないでしょうか。

 

(文責:吉田)

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デジタル教科書導入 学校教育、DXへ一歩

いよいよ本格導入、ということになるのでしょうか。

日経新聞より。

 

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電子端末で使うデジタル教科書が2024年度から順次、小中学校の英語と算数・数学で導入される。中央教育審議会の作業部会が(8月)25日、文部科学省が示した方針案を大筋で了承した。当面は紙の教科書との併用だが、海外から遅れていた学校教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)がようやく本格化する。デジタル機能を最大限生かすためには法改正を含めた環境整備が課題になる。

 

これまで、そしてこれからの動きについて、

記事が下の表にまとめてくれています。

 

 

使用可能、となってから早3年以上が経ちますが、

英語で導入されるのが再来年度ですので、もう少し先になるようですね。

 

デジタル教科書は紙媒体をそのままデジタル化したような形で、

学習用のコンテンツをタブレット端末などで操作でき、

タッチペンによる書き込みや消去もできますし、

さらにはネットワークを活用した情報共有が簡単にできます。

これによって授業の形が変わっていくことが期待されています。

デジタル教科書の導入には、教員主導で一斉に進める従来の授業から転換する狙いがある。問題を解くプロセスをネットワークを通じて共有しながら学んだり、教員が児童生徒の端末の操作状況を見て、個人の習熟度に応じて指導したりできる。

 

記事には海外での先進事例のほか、

勉強が苦手な層の学習意欲向上例なども書かれています。

そういった期待がある一方で、制度整備はまだ緒に就いたところ、

さらには通信環境の安定化など、ハード面の課題もまだまだありそうです。

 

が、それ以上に大切なのは、教える側の力量、かもしれません。

私学ではすでにデジタル教材、ICTツールが当たり前のように

使用されているケースも少なくないでしょう。

しかし、そういったことが特定の教員に偏っている学校もあれば、

学校自体がそういった取り組みを進めていない、というケースも

あるように感じています。

必ずしもデジタル教材が秀でているわけではない、としても、

そこに少なからぬメリットがあることは事実です。

教える側が食わず嫌いをしていては、

子どもたちにとって大きな損失になることもあるでしょう。

そろそろ最後の機会が訪れていると思いますので、

距離を取ってきた先生方におかれましては、

ぜひとも苦手を克服していただき、

よりよい教育環境の整備にお力を尽くしていただければと思います。

 

(文責:吉田)

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デジタル教科書 紙より成績向上の例も

日経新聞で、ニュース用語の説明がなされているコーナー、

「きょうのことば」。

この日はデジタル教科書が採り上げられていました。

 

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▼デジタル教科書 タブレット端末などのデジタル機器に映し出す教科書を指す。日本では学校教育法で「検定教科書の内容を記録した電磁的教材」と定められ、検定済みの紙の教科書と同一の内容のものが使用を認められている。

 

デジタル教科書の形式を大きく分けますと、

クラウド上からデータを配信する形式

・端末に保存するアプリケーション形式

の2つがあり、ページの拡大や書き込んだ内容の保存、

文字の背景色を変えて強調するといった機能を備えています。

助教材と組み合わせることによって、

学習に関連した動画やアニメーションを視聴することもできます。

 

…という、デジタル教科書の説明は

私学関係者各位にはすでに不要かもしれませんね。

ご紹介したかったのは、諸外国の動きです。

記事では、下の表に分かりやすくまとめられています。

 

 

韓国では2015年に使用解禁となり、

2020年時点で小学校の98%、中学校の97%が導入。

 

米国では多くの州が使用を認め、ある高校への調査によると

紙の教科書を使用した生徒よりも成績が向上したそうです。

 

シンガポールでも、視覚的・聴覚的な刺激によって

特に勉強が苦手な層の学習意欲を高める効果が指摘されています。

 

新たなツールは定着までに高いハードルがあると思いますが、

そこに認められる効果をしっかり認識しながら、

ハードルを越えていっていただきたいと願っております。

 

(文責:吉田)

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求人広告42%増

求人がかなり増えているようです。日経新聞より。

 

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人材サービス会社でつくる全国求人情報協会(全求協、東京・千代田)が(8月)25日発表した7月の求人広告件数(週平均、職種別)は、前年同月比42.4%増の122万6232件だった。前年を上回るのは15カ月連続。新型コロナウイルス感染対策の行動制限がない夏を迎え、飲食や事務系の求人が増えた。

 

特に増えているのがサービス業種の求人で、

飲食店のホールスタッフなどが74.3%増の152,064件、

調理が68.2%増の115,523件、接客も58.2%増と高い伸びとなっています。

 

そして私学で気になる事務の求人ですが、

こちらも51.3%増と大きな伸びになっています。

ただ、内容は音楽イベントなどの再開による運営支援の事務職であったり、

コロナ感染の再拡大でワクチン接種に関する問い合わせや

療養者の体調確認業務などの事務系の求人ということですので、

私学とはややターゲットが異なるかもしれませんね。

 

エン・ジャパンの中島純執行役員は「コロナ感染が再拡大しているが、行動制限などが要請されない限り求人活動に急ブレーキはかからない」との見方を示す。「人手不足のため未経験者の採用案件も増えており、8月以降も人材需要が拡大する」と話す。

 

まだまだ年度末までには時間があるとはいえ、

次年度以降の体制について早目に考えておくことも必要でしょう。

中長期を見据え、貴校園にとって良い採用活動ができることを願っております。

 

(文責:吉田)

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大学「序列」残る過密日程

大学の話題ですが、私学であれば学校種を問わず、

共感する方も多いかもしれません。

日経新聞より。

 

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「一言で言えば不文律、大学のカルチャー。弱者が強者に合わせたもの」――。東京都市大の菅沼直治入試部長は全国私立大の一般選抜(一般入試)日程をまとめた「入試カレンダー」をこう語る。

 

入試のスタイルが多様化し、「年内入試」が主流になっている現代の大学。

それでも私大の一般入試は2月に集中しています。

旺文社によりますと、2022年1~3月に全国592大学が設定した入試は

なんと1万3千件以上。学部が複数あるとはいえ、それぞれの学部で

さらに複数回の入試機会が設定されていることがよく分かります。

 

2月1日から中堅校が始め、中旬からは上位校。より競争力に劣る大学は1月に前倒しする。競合校の日程をにらみながら、実施日や合格発表日、入学手続きの締め切り日を決める。

東京都市大は前期(2月初め)に加え、中期(20日ごろ)、後期(3月初め)の日程も組む。有力私大、国立大前期試験受験組で手応えが悪かった層も囲い込む。入試カレンダーは偏差値序列に縛られた大学の生き残り戦略の結晶なのだ。

 

高校入試、中学入試については、都道府県ごとに

ある程度の日程の縛りが存在することが多く、

大学ほどではありませんが、それでも公立校の合否結果によって

入学者数が大きな影響を受けるため、

自校園の結果だけでは次年度のクラス編成は全く決められない、

という学校が多いのが現実です。

しかもそのような状況は年度によってまた大きく差が出るため、

毎年同じような悩みを継続して持ち続けねばなりません。

本当に気の毒だと思ってしまいます。

 

記事では現状の問題点をいくつか指摘しています。

 

ひとつが、分かりにくさ。

日程が過密になれば入試が複雑化し受験生に分かりにくくなります。

 

そして2つめに、「丁寧な選抜」ができなくなること。

過密日程によって、より迅速な採点が優先されてしまい、

選抜行為自体が時間勝負になってしまうことへの懸念があります。

 

ただ、こういったことを認識しつつも入試頻度を減らせないのは、

多くの志願者と受験料収入を確保する必要性があるから、

と記事は述べています。

 

タイトルにある「序列」というのは、日本では多くの場合、

「偏差値による序列」を指しているように感じます。

ものさしが多様になれば、序列、すなわち

「一列に並べて優劣を比べる」ことはどんどんしにくくなるはずです。

今のままでは、学校自身が序列化を願っているような状況でもあり、

このような文化や価値観をどう変えていくのかが

とても大切なことのような気がします。

そのきっかけはやはり、入試のあり方にあるように思うのですが

いかがでしょうか。

 

(文責:吉田)

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