コロナ禍を経て変化したことはいろいろありますが、
これは注意が必要な変化ではないでしょうか。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
この記事の基礎となっているのは、
ベネッセ教育総合研究所が2021年12月に実施した
「第4回大学生の学習・生活実態調査」です。
この調査は2008年から4~5年に1回実施している大規模な学生調査で、
記事掲載の実施回では大学1~4年生4124人が対象となっています。
まずは下のグラフをご覧いただきましょう。
大学生の学習時間はコロナ禍でどう変化したのでしょうか。
授業時間外学習はほとんど増えていない。遠隔授業の導入で課題を出す授業の割合が増え、学生からも「課題が多い」という声が多く聞かれた。授業外学習が増えると予想していたが、結果はほとんど変わらなかった。
「授業の予復習や課題に費やした時間」(1週間平均)は16年の2時間42分が21年には3時間29分と47分増えたが、1日に換算するとわずか7分弱だ。同じ間に「授業などへの出席時間」は11時間42分から8時間34分へ大幅に減少し、総学習時間は減ったともいえる。単位制度の実質化と学習時間の確保は依然、大学教育の主要課題なのだ。
リアルの授業とオンラインの授業ではメリットとデメリットが
交錯することは理解できるのですが、
オンラインのメリットの一つが
「移動時間なしに学習できること」
だと感じている私にとって、この結果は衝撃的でした。
なぜこのようなことが起こっているのか。
この記事の筆者であり、本調査にも参加している
関西大学・山田教授によれば、学生が受け身になっていることが
大きな要因である、とのことです。
そのひとつのあらわれが、学びに対する考え方。
「あまり興味がなくても単位を楽にとれる授業がよい」
と考える学生が2008年は49%だったのが今回は63%に増加。
「大学での学習の方法は、大学の授業で指導をうけるのがよい」
と思う学生は同じく39%から57%に増加しています。
自らの学生時代の態度や意識は今更反省のしようもないほどではありますが、
それは横に置くこととして、
アクティブラーニングの掛け声むなしく、
主体的な学びからはむしろ遠ざかってしまっている印象です。
理由としてはアクティブラーニングの成功に不可欠な明確な目的や問い、教員からのフィードバックなどが十分に実践されていないという教員側の要因が考えられる。高校までに主体的に学ぶ姿勢が身についていないことや単位の取得が目的化していること、さらには将来不安による早期からの就職準備など学生側の要因もあるかもしれない。
今回の記事は大学生に関するものですが、
これは中高生等にもあてはまるところが少なからずあるのではないでしょうか。
目的意識が不十分で、学びの意欲が高まらないことは
本人のやる気不足で片づけてしまうわけにいかない
大切な要素が含まれているような気がします。
筆者は、大学教育が検討すべき方向性をいくつか挙げておられます。
一つは「効果的な遠隔授業のデザインと実践」。
遠隔授業をカリキュラムの中で機能させるには、
積極的な意義を持たせるデザインとその実践が不可欠でしょう。
一つは「教育課程全体の中で遠隔授業の質を保証するための教学マネジメント」。
組織全体で遠隔授業の質向上を図るためのマネジメントもまた、
教育機関として大変重要なテーマだと感じます。
一つは「対面授業のアップデート」。
記事には、遠隔授業を経験した学生の意見として
「知識伝達型・一方向型の授業は遠隔授業でよい」
というものが紹介されています。
だからこそ、対面授業そのもののあり方を見直し、
対面授業の質向上を図ることで、
対面ならではの学びを経験できる授業に転換することが重要です。
質保証された遠隔授業とアップデートされた対面授業のベストミックスを構築することが求められる。大学経営が厳しさを増す中、コロナ禍の経験をどう捉え、新しい大学教育へ変容できるか。この数年が大きな分岐点になるだろう。
貴校園での授業はその後、望ましい変化を遂げているでしょうか。
それとも、以前に逆戻り、でしょうか。
よりよい学びを強く意識し、実践することが今ほど適した時期はないでしょう。
主体的な学びが展開される授業を大いに期待しております。
(文責:吉田)