寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

中期計画の功罪

今般の私学法改正により、文科省所管の学校法人で義務化された

中期計画の策定。

その「功罪」をタイトルにした記事がありましたので

興味をそそられました。日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

この記事の冒頭、こんなふうに書かれています。

 

ほとんどの上場企業が中期計画を開示している。そのメリットは投資家をはじめ社外の利害関係者が経営の進捗状況をチェックしやすくなることである。しかし開示にはデメリットもある。最も明白なのは外部に対して計画を開示すると、競争相手が会社の戦略を推測してしまうというデメリットである。

 

あ。外部向けの話だったのね、と思いきや、

この後は組織内部向けのデメリットの話が続きます。

要約するとこんな感じです。

 

デメリット① 社内メンバーの関心が中期計画に掲げられた目標指標にばかり向けられてしまう

デメリット② 目標値が低くなりがち(野心的な目標だと目標達成が難しくなるから)

デメリット③ 過去の延長上の目標値になりがち

 

なるほど、仮にこの指摘が正しいとすると、

それは中期計画に罪があるのではなく、

「目標の立て方」と「目標への向かい方」が課題、

ということになりそうですね。

 

ちなみに、記事にはデメリット解消のためにこんなことが提言されています。

これらの欠点をなくすには、社外開示向けの中期計画と社内向けの戦略計画とを区別することである。1970年代には数字中心の経営計画ではなく、定性的な目標をも明示した戦略的経営計画を策定すべきだと議論されたことがある。だからといって、中期計画と戦略計画の2つが全く異なったものであれば計画の意味はない。両者の整合化が図られなければならない。そのカギは中期計画を長期戦略達成のマイルストーンにすることである。

 

途中部分はさておき、中期計画を長期計画のマイルストーン(一里塚)とする、

というのは目標設定のひとつの鍵にはなりそうですね。

 

学校法人が立案する事業計画、経営計画、中期計画は、

先に挙げられたデメリットのうち、

③が当てはまってしまうことが多いように感じます。

これを防ぐためには、「現状から考える」のではなく、

「なりたい姿から考える」という、考える順序の工夫が必要です。

 

そして、なりたい姿になるために、

いつ、何をすべきかをスケジューリングすることで、

デメリット②も防ぐことができます。

 

そして、デメリット①は学校ではなかなか起こりません。

(むしろ起こってほしいくらいだと私は思っています)

なぜなら、日常を送ることだけでもとても負荷が大きい組織だから。

逆から言えば、日常業務が果てしなくしんどいので、

中期目標はすぐに忘れ去られてしまうことが多いのです。

これは、中期目標に対する進捗や達成度を評価されないから起こること、

とも言えます。

目標への意識を高めるために、目標に対する評価が必須なのです。

 

というわけで、タイトルには「功罪」とありますが、

中期計画に罪はありません。

あるとすれば、その作り方や運用の仕方に功罪がある、

ということになるでしょう。

 

さて貴校園の中期計画は経営を効果的なものにしてくれているでしょうか。

今一度、ご確認ください。

 

(文責:吉田)

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今こそオンライン教育

先週から始まった一斉休校。

その開始日のブログで、ICT教育環境が手助けになるのでは…

と書かせていただきました。こちらです↓

新型コロナウィルスへの対応について考える - 寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

 

と、その日の日経新聞に同じような内容の記事が上がっておりました。

そちらも少し見ておきましょう。

 

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(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

新型コロナウイルスの感染拡大リスクの波が教育現場にも押し寄せている。政府は全国の小中高校などに臨時休校を要請し、高等教育を含めた教育活動が当面の間、滞りかねない。「学校という場に集まらず勉強を続ける方法」として、IT(情報技術)を活用した教育サービス「エドテック」への注目が高まっている。

 

学校が休校になることで、「日中の預かり」に焦点が当たりがちですが、

学校の本来の役割を考えれば、学習環境の確保、そして

学習の進捗、進展を図ることが最重要課題です。

 

その目的において、オンライン学習は有用なツールと言えます。

ただ一方で、「ネットで大丈夫?」という声もあるのではないでしょうか。

この記事には中国在住の中3生の実例が紹介されていますが、

この点について実体験をもとにした声が記載されています。

 

ネットチャイナは現在、日本仕様の教育に特化したプラットフォーム「オンライン・クラスルーム」(仮称)の開発を進める。だが、日本では塾や語学教室が普及していることもあってか、「ネットを使った教育に抵抗感のある人が多い」。同社で3年前から中国語を習う山梨県在住の窪川伸一さん(37)もネットの広告を見つけて入会したが、当初は「本当に効果があるのか」と心配だったと明かす。

ただ今では「中国在住の先生と毎日話すことで、中国に留学しているような気分になる。自分のペースで勉強できるのもいい」と、1日30分のレッスンをほぼ欠かさず受けている。勤務するリサイクル会社での経験を生かし、「いずれは日本のリサイクル技術を中国に広めたい」と話す。

 

日本国内のサービスとしては、オンラインでの大学受験専門の

家庭教師サービスが紹介されています。

引用中の山岸さんとはこのサービスを実際に利用した方です。

 

山岸さんと講師はパソコンの内蔵カメラでテレビ電話のようにやりとりし、双方に設置されたスタンド式カメラが映し出す互いの手元にある資料を見ながら会話する。山岸さんが解いた回答の映像を講師が確認して添削したり解説したりする。バンザンによると、遠隔会議などに使われるビデオ通信ソフトに改良を加えて教育用に変更し、「対面指導と遜色ない状態」にしているという。

 

対面と全く同じ、というわけにはいかないかもしれません。

ペアワークやグループワークなどで学ぶ内容も実現が難しいかもしれません。

それでも、学生の本分である勉強の環境整備を考えた際に、

こういった取り組みは検討の余地が十分あると思います。

この機会に、学校の本来の役割を果たすということを

正面から考えてみてはいかがでしょうか。

 

(文責:吉田)

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学歴に意味はない?

非常に興味深い記事です。

学歴以外の物差しが増えることを願いつつご紹介します。

日経新聞より。

 

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この記事は連載もののひとつで、

「教育をデータで斬る」というテーマのもと、

全10回にわたって記事が掲載されました。

その第2回の記事がこれです。

 

「学歴に意味はない」

エール大学助教授・成田悠輔氏はそう言い切っています。

そのエビデンスをご紹介しましょう。

 

舞台はシカゴです。この街には入学が難しい有名公立高校が10校ほどあります。これらの学校にギリギリで合格した生徒と、ほんのわずかに点が足りず不合格となった生徒のその後を比べます。ギリギリで受かるか落ちるかは偶然に近いと考える自然実験です。

両者の米国版センター試験の成績を比べたところ、有名校に入っても普通の高校に入っても違いがないことがわかりました。有名校の生徒はその学校のおかげで成績優秀なのではなく、そもそも成績優秀な生徒が有名校に入っているだけ、という残念な結論です。

 

ちなみにこの記事には、ニューヨークやボストンの有名公立高、

ハーバード大やエール大のような有名私大であっても、

成績や収入を伸ばす効果は普通の高校・大学と大差ない、

という研究も紹介されています。

筆者は

「有名校に入っても学生の未来が明るくなるとは限らないのです」

とこれまた言い切っています。

 

私自身、比較的学歴に恵まれている方だと思いますが、

周囲からどう思われるか、ということを除けば、確かに、

この学校にいたからどうこう、というのはほとんど実感がありません。

好きな学校だったかどうか、ということのほうが

よほど自分の人生にいい影響を与えてくれるような気がしています。

 

そしてそれ以上に私が思うのは、これほどまでに学歴を重視するのを、

どこかでやめにしませんか?ということです。

学歴に意味がない、とまでは仮に言えなくても、

それは個性のごくごく一部、ひとつの要素なだけであって、

それが将来の自分や社会に与える影響はそれなりでしかない、

と思うからです。

 

私学の特色化が進むことを願う私の気持ちはそこにあります。

建学の精神を中心に据え、

その学校が本当に必要と考える教育を存分に実現することで、

子どもたちや各家庭がその学校に入りたいと思う、

そんな世の中になればいいなあ、と思うのです。

 

ちなみに、筆者はこの記事を挑発的に締めておられます。

日本にはこうした分析はありません。データがない、というのが理由(言い訳?)のようです。「わが校の教育には効果あり」と信じてやまない関係者の方はぜひご一報ください。

 

ご意見のある皆様方、ぜひご一報差し上げて下さい(笑)。

 

(文責:吉田)

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東大、推薦入試の要件など見直しへ

有名大学、難関大学の推薦入試には

当初の想定よりも人が集まっていないのかもしれません。

日経新聞より。

 

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東京大は(2月)12日に開いた記者会見で、2016年春入学者向けの入試から始めた推薦入試について、早くて21年春入試から制度を見直す方針を明らかにした。志願者数が低迷し、定員割れが続いているため。推薦要件や各校からの推薦人数の制限の見直しも含めて検討し、志願者数や多様性を確保できる新方式を近く公表する。

 

東大の推薦入試の募集人員は毎年100人程度で、

この春の入試の志願者数は173人、合格者数は73人でした。

推薦入試を開始して以降は志願者数173~185人、

合格者数66~77人で推移していて、

「できれば300人ほどの受験生から3分の1くらいを選びたい」

という副学長のコメントからするとやはり応募が少ないのがネックのようです。

 

ちなみにこの推薦入試によって、東大は

「学力だけではない、多様な素晴らしい学生が獲得できている」

とおっしゃっています。

その意味では入試制度を変えたことは功を奏しているわけですね。

 

 

ちょうどこの時期が入試シーズンということもあって、

入試に関する話題が増えています。

よって、このブログでも採り上げる機会が多くなっていますが、

さて貴校園の入試を考えるヒントはありましたでしょうか。

他校の入学までのしくみを知ることもまた、

自校のそれを考えるきっかけになるかもしれませんね。

 

(文責:吉田)

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大学入試改革「結論ありき」

こんな題名の記事が掲載されていました。

結論ありき、では困るのですが…

やはりそうだったか、という気持ちにさせられました。

日経新聞より。

 

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2020年度開始の大学入学共通テストを巡り、文部科学省の大学入試のあり方に関する検討会議は(2月)7日、2回目の会合を開き、英語民間試験の活用と記述式問題導入という入試改革の2本柱が頓挫した経緯の検証を始めた。同省は課題を解決しないまま実施に進んだ経緯を整理して提示し、委員からは「目標に縛られすぎたのでは」などと批判が相次いだ。

 

先日のブログでもお伝えした通り、

このたび頓挫した大学入試改革では、

当初から懸念が示されていたにもかかわらず、

それに対する対処がなされず、結果的に子どもたちが振り回されただけだった、

という情けない事態が起こってしまいました。

 

ある委員は「結論を決めてから実現策を考えていた。2020年度実施という目標に縛られすぎていたのではないか」と批判した。「会議が設置されていない間に民間試験活用の流れが形作られた。その間の意思決定の検証が必要では」との指摘も出た。

 

ゴール設定はとても大切だと思いますし、

理念を実現するための過程を後から決めていくことも十分あり得ると思います。

が、設定したゴールが本当に理想形なのかどうなのか、

という根本的な事柄についての議論が少なすぎるために、

最後まで腑に落ちないまま議論が進んでしまったような気もします。

理想形ではなく、むしろ途中経過や手段のほうに

意識が傾いていたのではないか、と。

 

三島良直座長(東京工業大元学長)は会議終了後、記者団の取材に「なぜ民間試験を使うという結論が出たのかモヤモヤ感があり、払拭できないと先に進めない」と述べ、検証を続ける考えを示した。

 

しっかり検証していただきたいですね。

 

そして私学においては入試のあり方を

改めて考えてみる必要があると思います。

貴校園に入学させたい生徒とは。

そしてそのような生徒かどうかをどのようにして計測するのか。

正解のない問いですが、正解を求める過程はとても重要な気がします。

 

(文責:吉田)

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パート賃金が頭打ち

人手不足が賃金上昇につながっているのか、

あるいは意外とそうでもないのか。

先日来、後者に類する統計が出てきています。

日経新聞より。

 

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パートタイム労働者の賃金が頭打ちになっている。厚生労働省が(2月)7日に発表した毎月勤労統計(速報)によると、パートタイムの2019年の現金給与総額(名目賃金)は月平均で9万9758円で前年比横ばいだった。時給は2.7%増の1167円と過去最高だったが、税金や社会保険料の負担を避けるために就労調整する人が依然として多かったとみられる。

 

時給は上がったけれど、就業時間が伸びず、

結果的に給与収入は横ばいのまま。

果たしてこれでいいのか、と思ってしまいます。

 

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2019年のパートタイム比率は31.53%で、前年比0.65ポイント増です。

やはり人手不足を短時間労働者あるいは非常勤スタッフで

補おうとした例は多かったようですね。

ここに最低賃金の引き上げも伴って、

賃金単価は上昇基調になったものと考えられます。

 

ところが給与総額としては横ばいです。

未だに「103万円」(所得税)「106万円」(社会保険)を壁と捉え、

就労調整をする例が私の身の回りにも数多く存在しています。

結果、総労働時間は2.7%減(83.1時間)となりました。

 

 

所得税の壁は実際にはそれほど高くありませんので、

より大きな問題は社会保険の加入要件だと私は考えています。

この制度設計を改めないと、就労調整はなくならないでしょう。

同時に、各事業者が定めている扶養手当の要件にも

これらの壁と同様の基準を設定している例が多くあります。

これも再検討の必要アリです。

貴校園ではいかがでしょうか。

回りまわって自分たちの首を絞めることがないように、

本当の意味で公平な制度設計を目指したいものです。

 

(文責:吉田)

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新型コロナウィルスへの対応について考える

本日から急遽、全国の小中高を休校にせよ、

との「要請」なるものが出されました。

自治体、各校園では慌ただしくご対応されていることもあるかと存じます。

 

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こういうときには本来、政府がイニシアチブをとり、

各方面への具体的な指示をなすべきところなのだと思いますが、

実際には肝心なところを各自治体や各校の判断や対応に任せる形で、

末端ほど苦労するという構図になってしまっているように思います。

その意味でも、関係各位にはさまざまな方面に気を遣われていることでしょう。

本当に頭が下がります。

 

正体すら良く分からず、治療法が確立されていない病気が蔓延する怖さは

当然あるのですが、集団生活を控えねばならないような事態において、

学校や幼稚園はどのような役割を果たすのがよいのでしょうか。

 

まず、学校も幼稚園も、本来は学習のための場でありながら、

子どもたちを預けるための場にもなっていることを改めて感じます。

核家族化、さらには共働き家庭が当たり前になる中で、

平日の日中を中心として子どもたちが保護者抜きで過ごす場が

社会として必要になっていることは否めません。

このことを前提とすれば、学校を一律休校にするという措置は

家庭環境を顧みない、無謀な措置ということになります。

 

もしこのような一律休校園の措置がなされないとすれば、

学校は、ウィルスの蔓延を防ぎながら、

学習活動を継続する必要があります。

 

その場合、ICTによる学習環境があることは有難い、と言えそうです。

学校という場に集合したとしても、直接の接触を極力避けつつ、

端末等で学習できる環境が整備されていれば

何らかの機会確保ができるかもしれません。

教員が子どもたちの質問や疑問に対応できれば、

学校という場が教育の場として最低限の活動を維持することは可能でしょう。

 

一方で、学校には授業以外の活動もあります。

代表例はクラブ活動でしょう。こちらはどう考えるべきでしょうか。

接触を避ける意味では集団で行動する必要のある部活動は

そもそも活動することが困難です。

一方で、個別の動きが前提となっている部活動に

それほどの制約はないかもしれませんが、

不要不急の外出等を控えるように呼びかけられている中で、

部活動に時間を割くことが果たしてよいことなのか。

少なくとも優先的に実施すべきことではないように思います。

 

このように考えてくると、学校にとっての本来の業とは

やはり授業を中心とした学業である、と言えるでしょう。

そして現代においてはその場で子どもたちを預かることの

必然性も否定できないため、安全確保を図りながら

学業の習得を目指す活動が求められる、と言えそうです。

 

学校の安全対策はきりがない、と改めて感じます。

地震をはじめとする天災等への備えも大切。

そしてこのたびのウィルスで別の安全対策も検討する必要が出てきました。

学校経営は社会での存在感をますます高めているような気がします。

 

(文責:吉田)

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