寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

小学校英会話、オンラインで

昨日のブログに引き続き、学校と民間企業の連携に関する記事です。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

2020年度から英語が小学校の正式教科になるのを見据え、教育大手が学校へのオンライン英会話の売り込みを強めている。小学校教員は英語指導に不慣れで、ノウハウを持つ民間事業者に頼らざるを得ない。全国に約2万ある小学校を標的に、学研ホールディングス(HD)やベネッセHDだけでなく、NTT西日本なども受注競争を繰り広げる。

 

この記事に登場している公立小学校の例では、

画面の先にいるネイティブ講師と、

1対1で英会話に取り組んでいることが分かります。

学校ではなかなか準備が難しい「ネイティブ」「マンツーマン」が

実現されている点が将来性を感じさせます。

 

小学校ではすでに、5.6年生を対象に英語の授業が始まっています。

そして2020年度からの新学習指導要領では、

外国語活動の開始が3年生に早まり、

5.6年では「外国語科」として英語が正式教科になることが決まっています。

 

f:id:ysconsult:20190829094740p:plain


一方、現状の小学校教員の多くは英語の指導法に長けていると言い難く、

さらに通常授業では身に付きにくい「話す力」を習得させるため、

民間企業との連携、オンライン英会話による指導が脚光を浴びているようです。

 

気になるのが費用。

記事に登場するマンツーマンで話せるオンライン英会話は、

フィリピン人講師による授業の場合、

1回25分で1,500~2,000円が相場、と書かれています。

300人の児童に年9回受けさせても500万円前後で済む、

ともありますが、年9回でどのくらいの効果があるのかについては

記事には書かれていません。

 

私学の場合、すでに何らかの形でネイティブによる英語の授業が

実施されているケースが多いのではないか、と思いますが、

その費用対効果はいかがでしょうか。

すでに英語は社会人にとって必須のツールになっています。

公立校でも今回の記事のような事例が浸透してきたとき、

私学はどのように受けて立つのでしょうか。

 

ちなみに、オンライン、という点からはIT環境の整備も必要、

と記事は指摘しています。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております)

 

オンライン英会話の普及には学校のIT(情報技術)環境の整備が不可欠だ。文部科学省によると2018年3月時点で学校に整備されたコンピューター1台あたりの児童・生徒数は5.6人。超高速インターネットの接続率は63.2%だ。小学校に限ると、それぞれ6.4人、61.3%と状況は悪化する。

 

人材の確保、そして施設設備の整備。いずれもお金のかかる話です。

英語教育をどう展開するか、貴校園の方針を今一度ご確認いただければと思います。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp

コナミスポーツ、小中のプール授業を受託

教育の分業が進んでいくのでしょうか。

日経新聞より。


www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

コナミスポーツは8月下旬から小中学校向けにプール授業の受託事業を始める。プールがある約120カ所のスポーツクラブを使うほか、スイミングスクールを担当するコーチが指導する。学校では高度経済成長期に造られたプールの老朽化などが課題になっているほか、水難事故防止に向けたリスク管理からも需要は大きいとみる。

 

私学でプールを持っているケースは必ずしも多くないと思いますが、

プールを持つ学校にとっては、その維持コストに悩まれていることでしょう。

 

今回の記事では、大手スポーツ企業が各自治体の教育委員会と契約し、

授業そのものを受託することが紹介されています。

学校側の要望に応じてプールのみを貸し出す場合もあるようですが、

コーチによる指導も組み合わすこともできる、とありますので、

「授業の丸投げ」のような形も想定されますね。

 

考えてみれば、スイミングスクールにはその道の専門家が常駐していて、

学校の水泳の授業よりも質の高い指導と安全対策が可能だと考えられます。

さらにプールは屋内に設置されており、天候にも左右されません。

いいことだらけ、のようにも見えます。

今後の推移、興味深く見守りたいと思います。

 

冒頭で書かせていただきましたが、補講等を予備校に委託したり、

今回のこのニュースであったり、教育の分業が進んでいることを感じます。

本来、学校は教育の専門家であるべきなのでしょうが、

学びの多様化が進んでいくと、

すべての教育内容について高い専門性を担保しつつ、

一定数の集団に対する教育を実施するのは難しくなりそうです。

さらには、財政難等の理由で学校施設の整備が難しいとなると、

このような事例は増えていくのでしょうね。

 

さて、学校の本分、存在意義とはいかに。

私学は特に、それをいつも意識して、教育内容を組み立てていかねばなりませんね。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp

小中高に専門知持つ多様な人材を

AI人材を育成するための教員の育成について、

昨日のブログで採り上げました。

本日はその続編?とも言えそうな記事です。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください) 

 

将来、どのような職業に就くにせよ、時代を超えて普遍的に求められる力として「プログラミング的思考」を育成する――

デジタル時代を生き抜くために政府が示した新たな学力観だ。が、これに見合う教員人材を確保できない懸念が強まっている。

 

将来の社会に備えての教員人材をいかに確保するか。

この記事では、「免許状主義」が限界を迎えている、

という指摘がなされています。

新たな学力を育てる教員、というよりも、

教員そのものが不足している、という課題です。

すなわち、

  • 教員採用試験の志願倍率が過去最低水準になっている
  • 一方で、教員の大量退職期が迫っている

ということで、教員の数的不足はもはや目前です。

 

これをいかに打開するか。

その方法として、免状を持たない教員を確保する、

という動きが広がりつつあるようです。

 

京都市の高校に教員免許を持たない40代の教師がいる。東京大で博士号を取得。神経回路の構造を研究する生物工学が専門で、東大講師や理化学研究所の研究員などを歴任した。「専門知識を生かし人材を育てたい」と教員を志望。市教委が特別選考で採用した。

 

 

和歌山県では、理学、医学の博士号を持つ30~40代の3人を現場に迎えた。来年度の採用でも広げる方針だ。教員免許を持たない社会人を学校に呼び込む流れがさらに広がることを期待したい。

 

 

私学を含め、教学の世界では「教員免許があってこそ」という考え方が

まだまだ根強いように感じます。

それは報酬体系等に色濃く表れているようにも思います。

しかし、学校での教育の質を左右するのは、教員免許の有無だけではないでしょう。

特にこれから迎える時代においては、教員以外の経験値、あるいは

記事にあるような専門知といったことが、より有用になる場面は

いくらでもあるように思います。

 

学校の文化や風土を変えることは並大抵ではありませんが、

それをそのままに、人材だけを登用してもうまくいくとは思えません。

時間がかかることはなるべく早めに手を付ける、これが鉄則です。

貴校園の教育の質がさらなる進展を遂げることを願っております。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp

AI教員育成 企業が支援

AIを使いこなす人材を育成する必要性は、日ごとに高まっています。

学校がそんな人材を育てるためには、育てる側の人材をつくらねばなりません。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

人工知能(AI)に精通した人材の不足が深刻になる中、企業がAIを教える教員の育成や授業の支援に乗り出す。米データロボットは今夏から、膨大なデータを解析してビジネスに役立てるノウハウを大学などに提供し、専門外の教員でも教えられるように訓練する。教員不足の解決には時間がかかるが、AIを産業に応用できる人材の裾野を広げる狙いだ。

 

政府は2025年をめどに、専門的な知識を持つAI人材を

年間で約25万人育てる、という目標を掲げています。

そんな中、全国の大学ではAI関連学部の新設が相次いでいます。

 

今回ご紹介している記事では、2017年に日本初の

データサイエンス学部を設置した滋賀大学が紹介されています。

同大の教材やAI自動化ツールを提供するのは、

2012年に米ボストンで設立されたスタートアップのデータロボット。

同社は主に企業向けに納入しているものを、

今夏からは大学やビジネススクールなどにも提供し、

教員向けのトレーニングを本格的に始める、と記事には書かれています。

 

また、企業のノウハウを教員や学生が活用できる機会も広がっているようです。

あるAI開発企業は日本語の初心者向けオンライン教材を無料で公開、

大学や企業での利用を見込んでいるようです。

また別の企業は初心者がAIソフトの仕組みを学べるプログラムを開発し、

2018年秋からすでに社外に提供を始めています。

 

教員不足の解決策の一つにはオンライン講座の活用も可能です。

マサチューセッツ工科大学(MIT)はプログラムの組み方までの講座を提供。

文部科学省も主要大学で連携し、オンライン講座の開発や

カリキュラムの作り方を推進するよう取り組んでいるそうです。

 

これらの進展がありながらも、一方では、

「AI人材を育成できる教員は全国で100人程度」(国立大教授)

との見方もあって、見通しはなかなか厳しそうです。

 

さて貴校園ではAI人材の育成をどう捉えておられますでしょうか。

すぐそこに来ている未来は、AI人材を求めています。

決して他人事ではないと思うのですが、いかがでしょうか。

 

(文責:吉田) 

www.ysmc.co.jp

高卒「1人1社」の壁

就職活動においては、大卒と高卒の間に大きな壁があります。

その壁を何とかできないか。

そんな取り組みがあるようです。日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

就職活動の応募は1人1社まで――。人手不足で高卒の採用熱が高まっているにもかかわらず、半世紀以上前から続くルールが企業の壁になっている。学生が複数の内定を得て企業を選ぶ大卒と異なり、高校とのパイプがない企業は採用戦線に入り込みにくい。入社後に教育することなどをアピールして、新規参入組は壁に挑もうとしている。

 

高校生の就職活動においては、生徒は教師から提示された数社から

1~2社を決めて選考を受けることになります。

そうなると、過去に採用実績があり、教師とのパイプのある企業が有利。

新たに高卒採用に乗り出そうとする企業は最初から苦戦を強いられます。

当初はこのルールにも当然意味があったのでしょうが、

現代においてこれを維持することは果たしていいことなのでしょうか。

子どもたちの進路開拓について、制度の再整備が求められます。

 

 

f:id:ysconsult:20190809072838p:plain

 

一方で、企業側は高卒人材を求める動きが活発化しているようです。

人手不足を背景に高卒を獲得しようとする企業の動きが活発だ。厚生労働省によると、2019年3月卒業の高卒の求人倍率は前年より0.25ポイント高い2.78倍と4年連続で2倍を超えた。「金の卵」の獲得を巡って企業はしのぎを削る。

 

現行制度の下であっても、何とか高卒人材を確保したいと願う企業側は、

いろいろと工夫を凝らしているようです。

今回ご紹介しているこの記事にも企業名や工夫がいろいろ記載されていますが、

特に気になったのはこの記述です。

 

高卒採用の需要の高まりに商機を見いだす企業もある。高卒採用支援を手掛けるスパーク(東京・渋谷)は企業向けに高校生をインターン(就業体験)として受け入れるサービスを始めた。5月には埼玉県内の高校生が幼稚園で3日間働いた。

厚労省の調査によると、高卒人材の入社3年以内の離職率は4割と大卒(3割)を上回る。スパークの永田謙介社長は「早く社会に接することで、どんな仕事に就きたいかキャリア観が養われ、早期離職リスクを軽減できるようになる」と話す。

 

なるほど、入職前に職業体験をしっかりしておくことで

ミスマッチを減らすというのは大切なことかもしれません。

実際、 海外ではインターン後の就職が見られるようです。

記事を引用します。

日本のように高校卒業の直後に就職する国がある一方、米国やフランスなどでは卒業後すぐに就職するのではなく、インターンシップ(就業体験)に参加し、キャリア観を養うケースもある。ドイツでは小学校を卒業する10歳の時点で、最終的に大学に行くか、職業学校に行くか進路が分かれ、日本のような高卒採用の概念はみられない。

 

現状、18歳の進路は大学進学、と考えるのが私学においては一般的、

なのかもしれません。

しかし、これは進路の一面しか捉えていないように感じます。

高校卒業時には職業や人生の方向性といった中長期を見据えて、

子どもたちが進路選択できるような支援が進むことを願っています。

 

(文責:吉田) 

www.ysmc.co.jp

ブロック塀対策、9000校が未完了

あれからもう1年3カ月が経とうとしているんですね。

大阪北部地震で無残にも崩れたブロック塀が

テレビ画面に映し出されたのを覚えておられることでしょう。

その後、ブロック塀対策は…?

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください) 

 

2018年6月に発生した大阪北部地震で危険性が指摘されたブロック塀について、文部科学省は(8月)7日、全国の学校における安全対策の進捗を公表した。19年4月1日時点で、ブロック塀がある学校の半数近くに上る約9千校で撤去などの対策や安全点検が済んでいなかった。同省は各自治体に7日付で通知を出し、早急な対策を促す。

 

ということで、発出された通知等はこちらで確認できます。

 

www.mext.go.jp

 

 

新聞記事に掲載された安全対策の状況を示すグラフも見ておきましょう。

 

f:id:ysconsult:20190809073133p:plain

 

そもそもブロック塀がない、という学校も上記グラフに含まれているため、

対策が済んでいるのかどうか、という点を割合で捉えるのが難しいのですが、

記事本文ではこんなふうに書かれています。

ブロック塀がある2万142校のうち9355校で安全対策や点検が終わっていなかった。

内訳は改修や撤去などの対策を「20年3月末までに完了させる」のが3915校(7.7%)、「20年4月以降に完了させる」のが1893校(3.7%)、「外観上は問題ないが鉄筋など内部の点検が終わっていない」のが3547校(6.9%)だった。

未報告や外観の点検未完了も79校あった。

 

ブロック塀対策については、実際に各校に出入りさせていただく私の目から見ても、

安全対策の中ではややスピード感がない印象があります。 

 

費用や工期の問題もさることながら、緊急性の高さを自己判断した結果、

他の優先事項に比べると後回しになりがち、ということなのかもしれません。

 

過去のブロック塀には、杜撰な工事も含まれてしまっている危険性があります。

先日までの夏休みで、少しでも対策が進んでいることを願っております。

 

(文責:吉田)

 

www.ysmc.co.jp

大学間の格差問題

私立と公立の格差問題。

これは学校種を問わず、時折俎上に上る議論です。

このたび、大学における公私間格差に関して、

国立大学協会長がインタビューに応じている記事を見つけましたので、

ご紹介させていただきます。日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

この記事、冒頭から興味深い質問と回答が展開されています。

 

――私立大学から、国私間の公財政支出格差是正を求める声が強まっています。

国公私立間の格差問題は経済的な視点と学問上の視点がある。

経済的格差では今回の高等教育無償化政策の効果に注目している。無償化で国公私立の入学者層に大きな変化が出たら、経済問題の深刻さが裏付けられる。一方、さほど変化が出なければ問題は別にあることになる。

学問的見地で言うと、私立の建学の理念は非常に重要だ。国立にもないわけではないが、私立の方が顕著だ。私立の独自性と、全ての国民への高等教育の機会提供という国立大学のミッションが、どうすみ分けられるかという問題だ。今後は学費を上げる国立も増えるだろうから、学費格差は徐々に縮小する。となると、問題は教育研究の目的・方向性になる。

 

なるほど、無償化政策は近い将来、その評価がなされるはずです。

そこで経済問題の重要性が計測できるはず、ということですが…

さてどんな評価が待っているのか、興味津々です。

 

そして学問上の視点については、やはり私学の建学の理念が支持されるかどうか、

という点が鍵になりそうです。

小中高の場合にはとかく大学進学実績が選択基準になりがちな昨今、

建学の理念にスポットを当てた学校選択がより進むことを願いたいです。 

 

さて、ここからがこの記事としては本題となる、

公私間の財政支出格差についての内容の記載があります。

財政支出にはこんなに差があるんですね。

 

f:id:ysconsult:20190809073636p:plain

 

――それでも、国立大学の運営費交付金と私学助成では予算規模にかなりの差があります。

例えば、国立には設置基準として厳しい予算上の定員がある。一方、私立は条件を満たせば自分たちで定員枠を増やすことも減らすこともできる。そういう問題にまで波及する議論だ。

極論だが、もし運営交付金がどんどん削減されていけば、私立との格差も縮小する。それなら、今度は国立が定員を増やしていいのかという声も出る。私立側は、そうした問題を一切伏せて話をしている。国の補助金が増えれば、私立は国立と同じ枷(かせ)をはめられ、最大の価値である建学の精神に基づく独自の大学運営ができなくなる懸念もある。

高等教育全体の問題として、どこかで一度、国公私が腹を割って話すべきだとも思っている。

 

ここで指摘のある通り、定員の増減をはじめ、

経営の自由度は確かに公立よりも私立の方が高いかもしれません。 

しかし、それでも単価設定には一定の枠があったり、

定員の増減にしても全く持って自由、というわけではなかったり、

あるいは昨今、公立でも不均一なカリキュラム提供ができるようになったり…

と、上記のご意見をすんなりとは受け入れがたい状況があるのも事実でしょう。

 

とはいえ、私学としては、公立よりも大きな経営の自由度を活かして、

学校経営の安定と発展を図る必要があります。

公立校や他校との比較も時には有用な考察材料となりますが、

まずは自らの方向性とそれを実現するための方策を、

自分達らしく考えることこそが私学の進取の精神ではないでしょうか。

 

厳しい経営環境ではありますが、だからこそ工夫も生まれるものです。

貴校園の経営改善が進むことを心から願っております。

 

(文責:吉田)

 

www.ysmc.co.jp