寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

「上司を評価」全省庁で

評価制度は学校でもそろそろ検討課題に上ることが

多くなってきたのではないでしょうか。

役所でもそのようで、こんな記事が掲載されていました。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

政府は今秋から、立場が異なる複数の関係者が管理職を評価する「360度評価」を中央省庁のすべての課長級の人事評価に拡大する。財務省文部科学省など一部で先行実施していた。部下を指導するマネジメント能力の向上を促す。セクハラやパワハラの防止にもつなげる。

 

「360度評価は」をご存知でしょうか。

通常、人事評価は「上司が部下を評価する」ことが多いのですが、

360度評価というのはその名の通り、対象者の周囲をぐるりと取り囲む、

上司、同僚、部下といった複数の関係者が対象者を評価する手法です。

 

評価者が増えることで、よりバランスの取れた評価が実現できる

というメリットがありますし、

上司のご機嫌取りだけでは評価が上がらない、

という点についても、従来型の評価制度より優れた面があるといえます。

 

が、過去にこの制度を実践した経験がある私からは、

労多くして果たして期待した効果が得られるだろうか、

とやや懐疑的に受け止めています。

特に、同僚や部下が評価者となる場合には、

具体的にどんな評価をしたのか、という点を明かさないようにする必要があり、

一方で、対象者に寄せられたコメントや評価の具体については

きちんとフィードバックせねばならないという、

一見矛盾することを実現するためのしくみづくりは

かなり四苦八苦するだろうと思います。

要するに、人事評価コストは結構大きくなるのではないか、

という印象です。

 

ただ、中央官庁にはのっぴきならない事情もあるようです。

 

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人事院によると18年度に国家公務員から人事管理に関して寄せられた苦情相談は1443件と前年度比3割増。パワハラが最多で、セクハラをあわせると約3割を占めた。

 

立場の弱い側からの評価も必須、という背景がここにあるようです。

しかし、これが評価制度で打開されるのか…

結局、言いにくいことはこの制度が入っても言いにくいのでは…

と、少々疑問を感じずにはいられません。

 

大手企業の中には実際に360度評価を実施されているケースもあるようですし、

数々の種類がある評価制度のそれぞれに一長一短があるのは事実です。

今回の記事をきっかけに、各校園でも人事評価について

ご一考いただければと思います。

 

(文責:吉田)

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女性就業 残る待遇差

女性の働きやすい職場、というのは学校においても重要な着眼点です。

女性の就業状況についての記事が出ておりましたので、

本日はそちらをご紹介します。

日経新聞より。

 

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女性の就業者数が初めて3000万人を突破した。女性が出産や育児で仕事を辞め、30代を中心に就業率が下がる「M字カーブ」が解消してきたことが主因だ。ただ、非正規で働く女性が多く「雇用の調整弁」という側面は残る。男女の不合理な待遇差の解消が課題になっている。

 

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女性は子育て期にいったん離職して、

子育てが一段落した40代で働き始めるケースが比較的多いため、

上のグラフのように20代後半から30代にかけて就業率が下がります。

しかし、これはどうやら日本独特の減少のようで、

記事には欧州の主要国ではこうした傾向がみられないと書かれています。

 

先月総務省が発表した2019年6月の労働力調査では、

35~39歳女性の労働力率は76.7%となり、過去最高に近い水準になったとのこと。

そして、男女合わせた就業者は6,747万人となって、前年同月比で60万人増。

なんと増加分の9割近くが女性だそうです。

 

このように見てくると、女性の社会進出が進んで喜ばしい、

となりそうなのですが、新聞ではこのような懸念が指摘されています。

その一つは非正規が多いことだ。女性の雇用者のうちパートら非正規労働者が55%を占め、男性の2倍以上になる。都内の金融機関で非正規として働く30代の女性は「30歳半ばで子どもがいると、正社員として雇う会社は少ない」とこぼす。

 

正社員でも課題はある。能力のある女性が活躍できる機会をいかに増やしていくか。労働政策研究・研修機構によると、日本の女性管理職比率は16年時点で12.9%。米国の43.8%、フランスの32.9%に遠く及ばない。東京商工リサーチの調査(18年)では上場企業3490社のうち女性役員がいない企業は60%を超えている。

 

学校現場においても女性の教職員はそれなりの比率を占めている

と思われますが、その活躍度はいかがでしょうか。

以前から、賃金の面では男女差がない運用がなされる

学校現場ではありますが、賃金の均等、そして

機会の均等は当然のこととして、性別にかかわらず、

それぞれの教職員が有する得意分野が生きるように、

柔軟な働き方が広がっていけば…と願っています。

 

(文責:吉田) 

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人材投資としての保育

幼児教育が人生に与える影響について、

非常に興味深い記事を見つけました。

幼稚園関係者はすでにご存じのことかもしれませんが、

このたびのブログで採り上げたいと思います。

日経新聞より。

 

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この記事で紹介されているのは、アメリカで1960年代に実施された

「ペリー幼児教育プロジェクト」。

貧困層に属するアフリカ系米国人家庭の子どもたちを対象に、

施設での教育を提供したうえで、週1回は教員が家庭訪問。

教員の質は極めて高く、みな幼児教育の資格も持っていたそうです。

 

その後、この幼児教育を受けた子を受けなかった子と比較したところ、

5歳時点において、学力テストで測れる能力である「認知能力」はもちろん、

非認知能力の一つである「物事をやり抜く力」が大きく向上しました。

 

ところが残念なことに、知能に対する効果は

8歳になるとほぼ消えてしまったとのこと。

この調査に限らず、

「幼児教育プログラム直後に知能で大きな効果が見られても

 小学校入学後2~3年でその効果が消える」

というパターンは多く報告されているそうです。

 

しかし、幼児教育に長期的な効果がないと断じるのは早計です、

と筆者は言います。

 

追跡調査の結果、ペリープロジェクトは高校卒業率を高め、40歳時点での就業率や所得を上昇させました。さらに福祉利用率を下げ、逮捕回数も減るなど、様々な成果を上げたことが明らかになりました。

知能に対する効果は数年で消えてしまうのに、どうして40歳時点での社会生活に影響を及ぼしうるのでしょうか。これは幼児教育の結果、攻撃性や多動性など、周囲の人々との間であつれきを生じさせる問題行動が減ったためと考えられています。非認知能力の改善が長期にわたり持続し、子どもたちの人生を大きく変えたわけです。プロジェクトの追跡調査は今も続いています。

 

なるほど、人生にとって幼児教育が重要なものであることがよく分かります。

幼稚園、保育園で行われている教育、保育は

学校以上にいろいろな大変さを伴いながら展開されています。

教職員の皆様には本当に頭が下がります。

 

そのご苦労が子供たちの将来に大きなプレゼントをもたらすことを信じて、

モチベーションを高めていただければと願う次第です。

 

(文責:吉田)

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老後資産、6割超で枯渇

老後に備えて2,000万円、という話は一気に広まりましたね。

そんなの聞いてないよ、という方から、

そんなことだと思ってたよ、という方まで、

反応は様々ですが、実際のところ、老後資金は足りているのでしょうか。

日経新聞より。

 

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老後への備えに注目が集まるなか、資産運用せずに90歳まで長生きした場合、6割を超える世帯で金融資産が枯渇する恐れがあることが三菱UFJ信託銀行の調査でわかった。2千人超に家計の保有資産や収支を個別に聞き取り、推計した。「人生100年時代」に備えた資産運用の重要性を訴える狙いがある。

 

17年の家計調査によると、高齢者世帯の貯蓄額の中央値は1600万円強。今回の調査はこの中央値に合わせる形で退職時の保有資産が600万~3千万円となる50歳以上の男女、約2200人を調べた。資産は持ち家を除き、退職金など金融資産を対象とし、公的年金などの収入額、生活費やローンの返済といった支出額を聞き取った。

そのうえで各種統計に基づき、海外旅行や住宅改修、介護など老後に生じる可能性がある大きな出費を織り込み、保有資産が何歳までもつかはじいた。

 

この調査によれば、退職後から全く資産運用しない場合、

90歳まで金融資産を保てる世帯は全体の34%。

年率3%で運用しても全体の53%。

さらにこのケースで介護費用が生じなければ、という条件が付いて、

初めてその割合は全体の84%まで高まります。

むむ。ほとんど不可能ということですね。。。

 

さて学校経営において人件費コントロールは非常に大きな課題です。

一方で、将来を見据えると人件費が膨らむ要素は数多くあります。

そのひとつが、この老後資金の不足。

退職金はもちろん、定年時期やセカンドキャリア、

雇用形態などいろいろな面に影響を及ぼしそうです。

 

人件費に関する施策は、実行から効果の出現まで時間がかかります。

ぜひとも早めのご高察をお願いいたします。

 

(文責:吉田) 

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国立大の予算、成果重視に

予算配分の基準が大きく変わってきています。

経営への影響は避けられないでしょう。

1か月前の記事になりますが、日経新聞より紹介させていただきます。


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国立大学への運営費交付金を巡り、財務省が大きな見直しを求めている。研究の生産性など客観的な指標に基づき、成果に応じて配分する枠を2019年度の700億円から1割以上上積みしたい考えだ。一方、大学の自己評価に応じて配る枠は295億円から減らす。前例踏襲の予算配分を改め、より柔軟で成果を追求する運営を促す狙いだが、安定財源を求める大学側の反発は必至だ。

 

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国立大学は全国に86校あり、2019年度の運営費交付金は1兆971億円。

このうち約1000億円が評価による配分枠となっています。

さらにこのうち、700億円は客観的な指標をもとに相対評価し配分。

残りの295億円は、大学が各自で目標を決め、自ら下した評価に応じて

予算を受け取っています。

財務省がメスを入れたいのは295億円の方だ。ある大学では「AO入試募集人員数」との評価指標に対して「21年度に49人以上」との目標を設けた。18年度の実績はわずか4人だったが、目標への進捗状況を含む自己評価は「A」だった。財務省幹部は「外部検証の仕組みが働かず、教育や研究の成果につながるかどうかが不透明だ」と説明する。

 

財務省は20年度予算で重点支援評価分を減らし、その分を客観的な相対評価分に上積みしたい考え。21年度以降には重点支援評価を無くし、全体を相対評価をベースに配分する仕組みに変える筋書きを描く。1000億円という総枠をさらに増やすことも検討する。

 

 

頑張った人に頑張っただけの報奨を、

というのは評価制度を正当化する際によく用いられる論法です。

そして、それは確かにそうだと言える反面、

成果が出ていなければ頑張っていないのか、

ということには十分な答えができないのもまた事実です。

学問の場というのは努力と成果が1対1対応することの方がまれで、

だからこそ、経営の基盤となるところに成果主義を導入することは

慎重であるべき、とも思うのですが…

 

とはいえ、このような流れは着実に進んできています。

学校経営をいかに安定的に行うか、についてシビアに考えるとともに、

自校園の大切にすべき教育内容を損なわないように、

教学と経営とが一体となって将来構想を描いていく必要がありそうです。

 

(文責:吉田)

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学び舎に宿る理念 追う

ここ最近、日経新聞の記事を基にこのブログを書かせていただくことが多いのですが、

本日ご紹介するのも日経新聞の記事です。

ただ、掲載面がいつもとは少々違っておりますので、

記事のニュアンスは目新しいかもしれません。

 

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ご紹介する記事は小学校舎の建築史を研究して30年以上の

川島智生さんが書かれたものです。

調査した学校の数は全国で千校を超しておられます。

 

日本の小学校で最初に鉄筋コンクリート校舎が建てられたのは神戸だった。1920年大正9年)に完成した須佐小学校(現明親(めいしん)小)が嚆矢(こうし)となった。校舎の鉄筋コンクリート化は23年の関東大震災がきっかけとされるが、その時すでに神戸では19校が完成していた。世界的にも先進地だったといえよう。

 

人口が急増し学校整備が急がれる中、小学校で相次いだ火災を受けて耐火性から着目されたのが鉄筋コンクリート校舎だった。山と海に挟まれた市街で、高層化して敷地を有効利用する狙いもあったようだ。神戸に支社を置いた米鋼材メーカーが設計を無償提供したのも後押しし、20年に須佐小を含め3校が鉄筋コンクリートで新築された。

 

鉄筋コンクリート造の校舎が現れ、その設計が標準化され、

神戸の事例が他都市にも広がっていったとのこと。

それだけでなく、神戸では個性的な校舎も散見され、

校舎建築をリードする存在だったことが記事からもわかります。

 

そんな校舎の設計者として記事に登場するのはなんと神戸市の営繕課長。

一公務員が後世に語り継げるような魅力的な校舎建築を成しえたことが、

その志の高さを映し出し、同時に時代背景を物語っているように思えます。

 

 

研究では設計者の人物像を掘り下げる。校舎は社会的な芸術だ。どんな理念を込めたのか、追究は欠かせない。当初は存命の方が多く数百人に直接話が聞けたが、近年は遺族を訪ねることが増えた。大半は建築家としては無名だが、彼らの声を積み上げなければ本当の建築史は書けない。

 

 

私学においても当然、校舎は存在します。

その校舎には、建築に携わった人たちの想いがたくさん詰まっています。

校舎は学校に必須のもの、だからこそ、そこでどんな教育が展開され、

何を大切にして育ちを支援するのか…といった「理念」あってこそ、

その形を成しているのだろうと思います。

 

多くの私学は、30年、あるいは50年、それ以上の歴史を持っています。

老朽化した校舎の建替え、あるいは大幅リニューアルの時期が

到達している、迫っているというケースも少なくないでしょう。

校舎を考えるにあたっては、貴校園の理念をもう一度見つめなおし、

そこに込めるべき先人たちの、そして今を生きる皆様の、

想いを結集していただければと願っております。

 

(文責:吉田)

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自治体非常勤職員、新制度に

勤務形態が多様化していく中で、

その処遇も多様化していくことは自然な流れでしょう。

自治体職員も新たな形になっていくようです。

日経新聞より。

 

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地方公務員法などの改正を受けて、自治体で働く非常勤職員の多くが2020年4月から「会計年度任用職員」に移行する。一般公務員と同様守秘義務などを課す一方、新たに期末手当を支給できるようにする。都内自治体で関連条例の制定が広がっている。

 

記事には東京都が例示されています。

東京都には約3万人の非常勤職員が働いているそうですが、

これらの職員の多くが来春から、

勤務期間1年以内の「会計年度任用職員」に移行するそうです。

新制度を導入する狙いは2つある。ひとつは非常勤職員にも守秘義務や政治的行為の制限などを求めるためだ。個人情報に接する点では常勤も非常勤も変わらないが、非常勤職員は現在、特別職として採用される場合が多く、地方公務員法の適用外だった。

2つ目は処遇の改善だ。都は勤務期間が6カ月以上の会計年度任用職員に来年度から期末手当を支給する。通勤費の上限も引き上げて実費相当に改める。「新制度への移行で報酬額は2割増える」(人事部制度企画課)という。

 

学校や幼稚園でも、非常勤教職員は今や

現場に不可欠な人材となっていることが珍しくありません。

しかし、その責務や処遇は以前のまま、になってはいないでしょうか。

必要な守秘義務の範囲が広がっていることもあるでしょうし、

処遇についても考察が必要なケースは決して少なくないように思います。

 

 

専任と非常勤を全く同一の責務と処遇にすることは考えにくいですし、

両者に差異があるからこそ、多様な働き方を担保できる、

という側面は当然あると思います。

一方で、働き方を問わず必要となる事柄を把握し、

それを適切なタイミングでしくみ化することも、

組織運営上は必須と言えるでしょう。

今回の公務員制度の変化を参考にしつつ、

貴校園での労務制度について一度確認してみてはいかがでしょうか。

 

(文責:吉田)

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