幼小接続に関する中教審の審議まとめが公表されました。
このことについて議論してきた特別委員会の委員長、
無藤隆・白梅学園大名誉教授へのインタビュー記事が
掲載されていましたのでご紹介します。日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
まずは今回の提言?のイメージ図をご覧いただきましょう。
5歳児から小1にかけての2年間を「架け橋期」として、
この期間のカリキュラムを整えるべき、というのが主な内容です。
これはあくまでも中教審という場での議論ですので、
公のしくみをどうするか、という点が中心になっているのですが、
私学においてもカリキュラムの考え方はきっと参考になるだろう、と思います。
無藤教授のコメントからいくつかを抜粋してみます。
「海外でもそうだが特に日本は幼稚園、小学校、中学校といった教育段階の区切りが明確で違いが非常に大きい。幼稚園・保育所などの先生と、小学校の先生がお互いを知らない。バトンを落としたり、渡せても立ち止まったりしている」
「この架け橋期をうまくつなぐと主に2つの効果がある。一つは幼児段階で学習の基盤ができることで学力の向上につながる。もう一つは学校の授業が楽しくなり(不登校の前兆でもある)登校しぶりが減る」
「幼稚園では小学校への発展を見通して工夫し、豊かにする。例えば絵本を読んでもらうだけでなく他の子に読んであげたり、自分で絵本を作ったりする。ドングリを集めて種類分けしたり、それらを数えて10個ずつ袋に入れたりするといった遊びの中でも小学校の生活科や算数の芽を育める。よく誤解されるが小学校教育の前倒しではない」
「小学校でも幼児期の学習経験を踏まえて授業をつくる。昔話の『おおきなかぶ』はほとんどの子どもが幼児期に絵本で知っており小学校の国語でも扱われる。だが小学校では子どもが知らないものとして授業をすることが多い。それぞれの児童がこのお話に持っている経験やイメージを生かせば授業はより豊かになる」
上記に加えて、今後の幼児期の教育の枠組みについても、
実現するかどうかはさておき、一定の方向性を示す発言も見られます。
施設の形態について。
無藤教授は「こども園に一元化する方向性が出てくる」とコメントされています。
そして、免許や資格、教育要領と保育指針も分かれていることについては、
「幼稚園も(午後以降の)預かり保育をするところが増えており、
免許・資格も一本化した方がよいという議論が当然強くなる。
今後4年ぐらいの間に調整が進むのではないか」
とおっしゃっています。今後4年、という数字が何だか具体的ですね。
そして4・5歳児の配置基準の見直しについては、
「質の高い教育・保育の実現には先生が研修を受けたり、
子どもの記録を皆で見直して指導計画を改善したりする時間が必要だ。
先生の配置がギリギリでは質の向上のための施策を求めても実現できない」
「保育士の配置基準の改善には1千億円規模の予算が必要と聞く。
財政が厳しいなか他の施策との優先順位をどう考えるか。
保育の質向上に必要な時間の捻出は本当に難しくなっている」
と、やや話を濁されているような印象を持ちました。
記事には、多くの国が幼児教育に力を入れているのは
生涯にわたる学習の土台となるため、との記述もあります。
さらに無藤教授は
「質の高い幼児教育は家庭だけではできないという認識が広がってきた。
研究や実践の蓄積が進み幼児教育が高度化する一方、
家庭の教育力は低下し家庭間格差も広がった。
少子化が進み、施設に行かないと子ども同士も触れ合えなくなった」
と、現実を踏まえて幼児教育の重要性を指摘されています。
幼稚園、保育所側も自園の存在意義を改めてご認識いただいたうえで、
幼小連携を含めたよりよい環境づくりに努めていただきたいと思います。
(文責:吉田)