先週のブログでもご紹介した日経新聞の連載、
「教育岩盤-子どもが消える」シリーズより、
今回は幼保一体化に関する記事をご紹介します。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
記事に登場するのは東京・杉並区にある保育園。
平仮名と引き算の授業の様子が書かれています。
この園を運営する企業は、2021年度から4・5歳児を対象に
文字と数を学ぶ時間を年20回設けたそうです。
同社の社長は「これからは保育所にも教育を入れ
小学校の授業に慣れておく必要がある」と強調していらっしゃいます。
国の集計によると全国の5歳児は19年度で99万人。その58%が保育所か幼保連携型認定こども園に通う。幼稚園は約4割で、もはや少数派。子育て家庭のニーズに圧倒的にかなう保育所やこども園に、幼児施設の主役の座を奪われた。
待機児童の解消が進む今は施設整備の重点を量から質に移す好機だが、十分に生かせていない。保育所は戦後の戦災孤児救済のため発展した。このため関係者には「保育所は福祉。教育は幼稚園で」というすみ分け意識がいまだに強く、教育力向上の足を引っ張る。
上の記事を読んで、確かにそういった側面はあるとも思う一方で、
幼稚園が幼児施設の主役の座を奪われた最も大きな理由は、
家庭や保護者のニーズが「教育」から「保育」、すなわち
「育てる」ことから「預かってもらう」ことへと激しく移ってきた
ことにあるのではないか、と私は感じています。
そして、国の施策もそれを後押しし、幼稚園は一気に
「幼児教育の場」から「幼児預かりの場」へと軸足を移してきている、
とも感じます。
弊社が関わる幼稚園の中でも、軸が教育か預かりかで様相は全く異なり、
前者の場合、ニーズが限定的で園児数は小規模にならざるを得ず、
ただし開園時間や保育の内容については園主導で進められます。
が後者は保育ニーズへの対応で開園時間は長くなり、
これまで幼稚園として培ってきたノウハウが生きる場面が減り、
全体的に疲弊度が高いようにも感じます。
もちろん、園児数の確保を考えれば後者の選択をせざるを得ない、
という園も多くありますので、
どちらがよいとか悪いとかいうことはありませんが、
個人的には、あくまでも教育を中心とした園の運営を
続ける幼稚園が多く残ってくれればと願っております。
さていずれにしても、幼稚園と保育園、認定こども園を管轄する役所が
分かれているというのはいかにもおかしな話ではあります。
我が国の場合、上記でも触れましたが、
ニーズも施策も「教育より保育」へと動いていますので、
幼稚園も福祉に寄っていく流れとなっていますが、
記事には自治体の取組例として大阪府箕面市の例が挙げられていて、
同市では子育て施策の所管を2018年までに教育委員会に集約しています。
また欧米では生涯学習の土台ができる幼児期を重視し、
保育を教育政策に位置づける流れが強まっている、とも記事に書かれています。
施設の種類に関係なく、自宅近くで充実した幼児教育と夕方までの保育が受けられる。いま、親たちが求めているのはそんな環境だろう。子育てのスタート期の不安をなくし少子化に歯止めをかけるため、二元行政に終止符を打ち教育と福祉の融合を図るべきだ。
さて今後、この国の幼児教育はどう発展していくのでしょうか。
そして貴校園はその中でどんな存在を目指すのでしょうか。
特に幼稚園はその在り方について、
マーケットインとプロダクトアウトの両面から、
しっかりとご検討いただければと思います。
(文責:吉田)