寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

無償化時代の保育の課題

日経新聞に掲載された、数名の方々のインタビュー記事です。

幼児教育に関する課題について、興味深い指摘がなされています。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

まずは杉並区長・田中良氏のインタビューから一部抜粋させていただきます。

  

区独自の条例を定め、国の基準に満たない認可外保育園は無償化の対象から外した。希望者全てが認可保育園に入れる環境を目指している。預けるなら認可保育園が安心という意識は強く、認可外施設を増やしても不満は解消しない。

(中略)

整備は民間園を中心に進めた。区の財政負担で考えると、区立園1つで16の民間園ができるからだ。区立園の民営化も進めた。保育園増設で総費用は増えたが、1人当たり保育費用は2010年と比べ2割下がった。20年度は7つの区立園を中核園に指定し、認可外を含む全施設との連携を進める。

 

公立の園に比べると、やはり民間の園のほうがコスト安、なのですよね。

そして保育園間の連携を強めるという考え方については、

私立であってもヒントにできそうな気がします。

 

 

次に、認定NPO法人フローレンス代表理事駒崎弘樹氏のインタビューから。

すべてを引用したいくらい、内容が充実していますが、

絞りに絞って、私学経営に参考になりそうな点のみ、以下記載いたします。

 

保育士のカリキュラムを見直し、現状に合わせてアップデートする必要もある。資格試験や養成課程に現場で必要な要素が盛り込まれていない。子どもを安全に預かるためのリスクマネジメントが学べないし、発達障害児や病児など多様な子どもたちとどう向き合うかの視点もない。学びに今日的な課題を取り込むべきだと思う。

資格改革も必要だ。資格は保育士だけではなく「一般」と「上級」の2本立てにしてはどうか。現状だと保育士が園のマネジメントを学ぶ場がない。素晴らしい保育を目指し、管理職としてチームをどう率いるか、上級保育士という資格をつくることできちんと学べるようにしたい。

 

保育士であれ、幼稚園教諭であれ、現場に即した資格でなければなりません。

資格そのものの在り方は国の施策を待つしかありませんが、

各園で必要な要素を補充することは可能ではないでしょうか。

現場での保育について力量を上げるための研修、

そして園のマネジメントを学ぶ場も、

私学にとって非常に重要なものであると感じます。

 

 

日本総合研究所主任研究員・池本美香氏も、

保育の質について懸念を示しておられます。

海外では質をチェックするいろんな仕組みがある。英国やニュージーランドでは、国の教育評価機関が、すべての園を定期的に調査して、結果をインターネットで公開している。どういうところに問題があるかまで具体的に書かれている。

(中略)

日本は欧米と比べ、保育時間が長いという問題もある。無償化で預けやすくなれば、ますます保育時間が延びるのではないか。保育士の負担がさらに重くなり、人手不足が悪化する。子どものストレスも増える。日本は、女性が長く働けるようにすることに目が向きすぎている。親からも保育時間の延長を望む声は大きいが、それが子どもにとって良いことなのか。 

 

後段で述べられていること、すなわち

「保育時間の延長は子どもにとって決していいことではないのではないか」 

という問題意識は、私が関わる幼稚園の管理職の方々からも

よく耳にするものです。

国の施策に合わせざるを得ないと、各園で苦慮されていることも

多くあるように感じます。

幼稚園、保育園においても中期計画を明らかにしながら、

社会における園の立ち位置を明示される必要があるのではないでしょうか。

 

 

国の制度がいくつも変容する中で、

幼児教育、保育のあり方をめぐって悩みは尽きません。

私たちもその良き相談相手となれるように、研鑽を積んでまいりたいと思います。

 

(文責:吉田)

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