今後に向け、デジタル人材の需要は高いようです。
しかし、その風潮には少しばかり気になることも。
日経新聞より。
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日本経済新聞社がまとめた2021年春入社の採用計画調査の最終集計によると、大卒の文理別で理工系は9%増と11年連続で増えた。新型コロナウイルスの感染拡大で企業収益は落ち込む。その中でも、次世代通信規格「5G」関連などへの投資をにらんでデジタル分野の専門人材を確保する動きが活発になっている。
まず最初にデータの留意点を。
この調査の最終集計は6月12日までの回答によるものですので、
その後の状況によって計画変更が生じている可能性もあります。
この点、ご了承をお願いします。
さて、今後に向けた各企業の人材採用の方針は、
半年前とは大きく様変わりしていることでしょう。
人手不足が深刻だった今年の初めには、
おそらく文系理系を問わず、積極採用を想定していた企業が
多くあったことと推測できます。
しかし昨今の状況を受け、文系人材はやや人気薄に。
一方で、今後期待される5G関連の技術やサービスの開発に向け、
デジタル人材の確保が世界市場での競争力のためには不可欠と
考えている様子が上のグラフからも伺えます。
一方で、理系の学生数はどうなっているのでしょうか。
文部科学省の学校基本調査によると、2019年度に大学で理学や工学など理工系学科を専攻する学生の割合は26%にとどまっている。5GやIoTなどに加え、デジタル技術で組織や作業を効率化する「デジタルトランスフォーメーション」(DX)などへの対応でも理工系人材は欠かせない。少ない人材を各社が奪い合っている状況だ。
今後少子化が進展する中で、社会へと供給される人材が
減っていくのもまた大きな課題かもしれませんね。
私学が市場を確保するのが難しくなっていくのと同様に、
社会全体が求める人材を手に入れられないという事態も
深刻化していくのかもしれません。
ただ、そもそも文理を分けての発想自体が現代的ではないような気もしますし、
仮に文理別で考えたとしても、今後の技術開発や競争力確保のために、
なにも理系人材だけが必要なわけではないでしょう。
技術の根底に息づく価値観や人間観のようなものが育てられて初めて、
新しい技術が生きていくように思えてなりません。
学校は子どもたちを育て、社会へと送り出す場ではありますが、
産業界の要請だけで進路開拓を支援することにはやや違和感があります。
特に私学は建学の精神、教育理念が明確に存在するのですから、
自らの拠るべきところを見据え、不易と流行をわきまえて
教育を実践し続けていただきたいと願っております。
(文責:吉田)