理系の拡充、確かに目立っていますね。
先月の日経新聞に、そのことを踏まえた提言が掲載されていました。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
大学の理系学部拡充を推進する国の「大学・高専機能強化支援事業」の対象校が発表された。理系の素養を備えた人材を育てる力の弱さは日本の教育の長年の課題で、今回の施策はある意味、遅きに失した感もある。後れを取り戻すには文系・理系の区分けをやめるなど、小中高校も含めた改革が必要だ。
まず、記事に掲載された学部(系列)別の学生割合を確認します。
下のグラフには「私立大は文系中心」との文言も見えますが、
さて皆様はどんな印象をお持ちになるでしょうか。
今回の国の施策では、支援は大きく2種類あります。
1つは理工農系の学部新設などを後押しする再編支援で、
公私立大学が対象となっています。
もう1つは、デジタル人材の輩出に向けて定員拡大などを図るもので、
支援1は特に文系が中心である私大の学部構成の転換を狙っている。新学部などの検討段階から最初の卒業生を出す完成年度まで最長10年(原則は8年)の間、補助金で支える。施設・設備の整備にかかる経費の50~75%を助成する。
そして先日(7月21日)、支援1の第1陣として、
私立54校、公立13校の計67校が発表されました。
このうち約20校が理系分野を初めて設けるそうです。
データサイエンス、DXを基軸にした学部を設ける
いくつかの大学のことが今回の記事に記載されています。
この施策を成功に導くために、記事は
「教育の質の確保が最重要であることが、歴史から得る最大の教訓である」
と指摘したうえで、こう述べています。
まず問われるのは私大の姿勢だ。戦後高等教育史に詳しい名古屋大の伊藤彰浩教授は「今回の拡充策を大学のミッション(使命)の中に実質的に位置づけて実行していくことが不可欠だが、それは各大学に委ねられる」と指摘する。
そして、以下の指摘がさらに重要だと感じました。
「ニーズがあるのは理系、文系は役に立たない」という単純な見方が広がることも避けたい。脱炭素化ひとつとっても社会を変えるには制度や人の行動様式に関する人文・社会科学の知見が要る。逆に大学の文系学部も数理・統計・計算機科学などを教えないと有用な人材を育てられない。
今後は大学でも地域の具体的な課題などを素材に学ぶ課題解決学習(PBL)が重みを増す。大学ではデータの活用や留学生との協働といった要素を入れないと、小中高校までのPBLや探究活動と差異化できないのではないだろうか。文系・理系の区分けは本気でやめる時なのだ。
記事には、文系学生が副専攻で理系を学ぶといった
「文理横断型の取り組み」を後押しすべき、
さらには、文系入試への数学導入も検討すべき、といった記載もあります。
今後の社会を見据えて、教育内容を組み立てること。
そして、その教育内容に接続可能な入試の内容を組み立てること。
これは大学のみならず、初等・中等教育においても必要なことでしょう。
個人的にも、文理を分ける、という志向よりも、
文理横断的、総合的に考え、行動できる人づくりが
今後はますます強く求められるのではないかと感じます。
今回ご紹介した記事は、特にその主張の力強さを感じました。
ぜひともご一読いただければと思います。
(文責:吉田)