2020年4月からスタートする高等教育無償化施策。
私学への影響は、果たして。
その問題について指摘された記事が掲載されていますのでご紹介します。
日経新聞より。
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このたび始まる高等教育無償化施策とは、
・対象は大学、短大、高専、専門学校に在学する住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生
・方法は授業料の減免と給付型奨学金の拡充
で、初年度の予算は7,600億円となっています。
4年制私立大学全体に対する助成金総額が3,000億円弱。
本件の予算の大きさが際立ちますね。
一方で、この制度は私学と私学進学者にはむしろ問題が大きい、
と鎌田氏は指摘しています。
国の高等教育費支出は、学生1人あたり、国立大学202万円、私立大学15万円であって、13倍を超える格差がある。(中略)国立大学と私立大学の卒業生が国や社会全体にもたらす便益にこれほど大きな差があるとは考えられず、国費の投資効率や納税者間の平等という観点からは正当化が難しい格差といえよう。
(中略)
例えば、ある受験生が強く進学を希望する私立大学の特定学部の授業料が160万円であるとすると、新制度による支援は70万円を上限としているから、90万円の自己負担を覚悟しなければならない。この受験生が第一希望を断念して国公立大学に進学すれば、学費全額を国が負担するという今回の制度が本人と国の将来にとって果たして有益なのだろうか。
進学先の決定要因として、経済的な要素がその存在感を大きくしている、
という指摘をここのところよく見かけます。
新制度によってその傾向がさらに強まるとすれば、
それは望ましいこととは言えないような気がしますね。
学部学生の約8割に対する教育を担っている私立大学には、低所得者層を含む多様な学生が在籍している。そのため、各私立大学は独自の支援措置をとっており、その総額は毎年900億円規模に上っている。
現在は、年収841万円以下の世帯の学生に対する各私大独自の授業料減免額の2分の1について国庫補助を受けられるものとされている。実際の交付額は90億円程度に留まっているが、就学支援新制度の導入に伴って、従来の補助は廃止されるといわれる。最も多くの学生が属する年収400万~900万円の世帯に対する授業料減免への公的支援がなくなったとしても、各大学は従来の減免措置を取りやめることはできないだろうし、新制度の影響で支援策の拡充を迫られるかもしれず、私立大学にとっては改悪としかいいようがない。
各私学が独自の経済支援を行っていることに対して、
公的支援がなくなってしまうのはいかにも残念です。
多様化よりも画一化の方向に世の中が向かってしまうのではないか、
と危惧を覚えます。
施行4年後には制度の見直しが予定されているとのことですので、
その際には各方面から様々な提言がなされ、
より良い方向への変更が実現することを願いつつ、
行政施策は私学に対して課題が大きくなる方向へと舵を切られることも
多くなってきているように感じます。
その中でいかに経営を永続させるか。
経営環境を踏まえた中長期の計画策定が求められます。
(文責:吉田)