寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

部活動の地域移行は慎重に

働き方改革の流れもあり、部活動の指導を教員から他へ移すという方向で

議論が進んできました。

その中で、別の視点からの意見が掲載されていました。

日経新聞より。

 

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学校の部活動を地域へ移行する動きが着々と進んでいる。スポーツ庁は先日、移行への課題を検討する有識者会議の初会合を開いた。2022年夏にも、受け皿となる団体や指導者の確保、費用負担などについて提言をまとめる。

 

休日の部活動に関しては、2023年度から地域のスポーツクラブなどに

段階的に移行する方針がすでに示されています。

このことから、数年後には少なくとも中学校の部活動について、

その指導や運営が民間の団体や人材が地域単位で担うのが原則、

とされるのだろう、とこの記事の筆者はいいます。

 

だが、国の旗振りで実際に地域への移行が広がるだろうか。教師として部活動の指導経験もある日本スポーツ協会の森岡裕策専務理事は「拙速に進めると、子供たちのスポーツをする機会が激減することになりかねない」と心配する。

最大の課題は費用負担。地域への移行とは部活動を学習塾と同じ「習い事」にすることだ。新たな財源がなければ、教師の無償の奉仕に代わる負担を保護者に求めることになる。

 

現在、多くの学校で部活動は教員のボランティア的な位置づけになっていて、

そこに対する報酬もなければ、施設や設備についても

基本的には学校が持ち出すことに何らの違和感もない、

といった状況です。

が、部活動がスポーツクラブに通うほどの料金負担が伴うとなれば…

限られた、いや恵まれた家庭の子どもたちしかそれができない、

という事態も想定され、スポーツの普及という意味では

大きな課題となることが懸念されます。

 

部活動をどうするか。改革はさけられないが、本来はその受け皿や経済的に困窮した子供への支援策など、地域がそれぞれの実情に応じて対応すべきテーマだと思う。スポーツ庁有識者会議には、地域への移行だけを前提としない徹底した議論を求めたい。

 

いろんな方向からの難しさが伴うこの部活動という課題。

貴校園はどういった課題解決の方策を考えておられますでしょうか。

これまでと同じでいいだろう、ではいけないと思うのですが。

 

(文責:吉田)

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私大、経営の抜本改革急げ

統計値を基にした提言がなされています。

日経新聞より。

 

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この記事は元文教大学学園理事長のご執筆となっています。

実情をよくご存知の方からのご指摘でもあり、

一読しておかれるとよいのではないでしょうか。

このブログでは記事の内容をかいつまんでご紹介いたします。

 

日本私立学校振興・共済事業団が公表した今春の私立大学の入試結果は私学関係者らに少なからぬ衝撃を与えたのではないか。私大(4年制、以下同)の入学定員充足率(入学定員全体に占める入学者の割合)は前年度比2.8ポイント減の99.8%で、1989年度の調査開始以来、初めて100%を割ったからだ。

 

定員割れの私大は277校で、前年度の184校から約1.5倍増となりました。

全体に占める割合も46.4%と半分に迫っています。

この結果の直接的な原因は併願を含む延べ志願者数の減少で、

その要因として一つが新型コロナウイルス禍、

もう一つが大学入試改革の影響であったと分析されています。

後者については迷走した大学入学共通テスト、

すなわち英語民間試験の活用や記述式問題の導入などが敬遠され、

この春の浪人生が減少したことが要因となっているようです。

 

ではコロナ禍が明け、大学入試改革の影響がなくなれば

再び定員充足率は高まるのでしょうか。

 

18歳人口は2000~20年の20年間に約34万人、22.5%減少。

一方、私大の入学定員は同じ期間中に約7.6万人、18.3%拡大。

これだけを見る限り、充足率の低下が一段と進むのは必然、

と筆者は訴えます。

 

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そしてこのことは、私大の経営難にもつながります。

事業団の調査によれば、2019年度の私大555法人中、

実に4割超の236法人が赤字となっていて、

中でも事業活動収支差額比率のマイナス幅が20%を上回る法人も

41法人に上っています。

 

今後に向け、私大の生き残りには自らの抜本的改革が急務であると、

筆者は次のように述べておられます。

具体的にはまず、教育の「質の向上」が不可欠だ。社会の変化が急速に進む中、どういう形で社会に貢献し、いかなる方法で学生を鍛えていくのか。必死に考え、他大学がまねできない「特色ある大学」を構築する努力が必要だ。届け出で可能な学部名称変更などの小手先の改革に終始していては、生き残りは困難だ。

2つ目の柱は人件費改革である。特色ある大学を築くには財政基盤の確立が必要で、その本丸は最大の支出項目である人件費の適正化だ(19年度で54.5%。医歯系法人を除く。事業団調べ)。

 

大学法人に対する指摘ですが、当然、

高等学校法人等にもあてはまる内容でしょう。

教育の質を高めて、生徒を確保すること。

そして支出の最大要因である人件費を適正化し、出を制すること。

まずはこの2点が私学経営の要点になると言えそうです。

 

さて貴校園はいかがでしょうか。

学校法人は大型船、急に舵を切ることはできません。

ぜひとも早めの検討と早めの実行をお願いいたします。

 

(文責:吉田)

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黒板と紙を「信仰」

先週も採り上げさせていただいた、日経新聞の連載「教育岩盤」。

今回は私学にとって深刻な指摘と捉えました。

 

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自宅でタブレット端末に表示された問題を解き、解答を送る――。東京都品川区にある私立青稜中学校の今年2月の入試は、こんな光景になるはずだった。試験会場での新型コロナウイルス感染を懸念する受験生向けのオンライン入試だ。

「柔軟対応こそが私立の強み」(青田泰明校長)と昨年4月から導入を探ってきたが、日の目を見ることはなかった。東京私立中学高等学校協会が「不正防止が困難」と自粛を申し合わせ、同校も従わざるを得なかったからだ。

 

東京都の隣県にあたる千葉県や神奈川県では、

オンライン入試は各校の判断に任され、

導入した中学校もあった、とのこと。

なぜ東京ではダメなのか。

そして同様の問題が起こった他の自治体もあったことでしょう。

 

この記事には教科「情報」を各大学の入試で採用するか、

という点についても指摘があります。

デジタルにたけた若者の育成を求める声は教育界にも強い、

にもかかわらず公平性の確保を前にすると足踏みが続く、と。

 

教育界に漂う新しい試みへの拒否感と平等主義。IT(情報技術)で社会が激変しても「黒板とチョーク」「紙とペン」を信奉する学校文化がアップデートされる気配はない。

国の政策で全児童生徒に学習用端末が配られた公立小中学校。神奈川県で端末の活用法を教える40代女性は「紙と鉛筆の方が頭が良くなると言って端末を使わない先生もいる」と"アナログ信仰"を嘆く。

 

何度もこのブログで書かせていただいていることですが、

よりよい教育のため、最適なツールを選ぶことはそれなりに重要ではないか、

と考えるのはおそらく教員の皆さんも同じでしょう。

しかしながら、トラブルを避けるため、もっともな理由を盾に

それを検討すらしないというのは本当に残念なことです。

 

私学はICT活用の面では国内で先んじている、とは思います。

しかしながら、それは十分な水準と言えるのでしょうか。

よりよい教育を目指して、常に方法論をアップデートできている

私学やその教員はどのくらい存在しているのでしょうか。

 

今回の記事はこう締められています。

固定観念がしみついた学校文化の中で、進取の精神に富む人材が育つのだろうか。

特に私学は進取の精神を大切にしたいものですね。

 

(文責:吉田)

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消えゆく 正社員の手当

同一労働同一賃金の余波、と言っていいのでしょうか。

正社員の手当が変化しているとの記事です。日経新聞より。

 

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非正規社員に正社員と不合理な待遇差をつけることを禁じた「同一労働同一賃金」法制に合わせ、正社員の手当を削る企業が増えている。中には正社員が反発して訴訟に発展する例も出てきた。格差是正の取り組みが事実上の賃金カットとの批判を招くか、給与体系の改善で従業員の士気を高めるか。各社の経営手腕が問われる。

 

この記事に登場する済生会山口総合病院では、2020年10月から、

正職員だけに払っていた扶養手当や住宅手当を、

全職員向けの子ども手当と住宅補助手当に改めたとのこと。

具体的な内容は下の図が分かりやすくなっています。

この改正は最長2年の緩和措置を取って実施したものの、

今回訴訟を提起した職員9人は月540~3,000円の減収となったそうです。

 

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労使が争っているのは、不利益変更の「合理性」。

不利益変更を行うための要件は次の6つです。

  1. 変更後の就業規則の周知
  2. 労働者の受ける不利益の程度
  3. 労働条件変更の必要性
  4. 変更後の就業規則の相当性
  5. 労働組合等との交渉状況
  6. その他の事情

 

病院側弁護士は、

  • 新たに手当を受ける非正規職員にとっては利益変更であること
  • 旧扶養手当は、主たる扶養者であることが受給条件で対象は全員男性だったため、「女性職員が77%の山口総合病院では男性中心で時代に合わない旧手当は続けられない」→要件3はクリア
  • 職員の過半数代表者の同意があり「労組とも誠実に交渉した」こと→要件5もクリア

とコメントされています。

 

逆に、職員側弁護士は、

  • 従来の正職員向け手当を非正規に適用しても財政問題は起きず、手当改廃は人件費抑制が主目的である→要件3を否定
  • 同じ済生会山口県内の施設などで手当改廃がなく、病院側がアンケートなどで全職員の意見集約をしていない

と反論されています。

 

こうした争いの一方で、正社員の手当改廃が円滑に進んだ例もあります。

写真素材サイトを運営するピクスタは、同一賃金法制への対応で、子1人に月1万円出していた子ども手当と、結婚祝い金、出産祝い金各1万円を4月に廃止した。同時に正社員・アルバイトを問わず誕生月に1万円を贈る制度を始めた。

ちなみにこの例では、子ども手当を受けていた社員の基本給に

旧手当相当額を上乗せし支給額を維持されています。

 

デジタルマーケティングのメンバーズは、数年前から非正規社員の正社員化などの制度改正を進めた。20年秋には、導入したばかりだった在宅勤務手当を廃止。21年春に、入社2年目までの新卒社員に月2万円出していた住宅手当も取りやめた。

これはかなりの不利益変更に見えますが、同社取締役は

「廃止分原資は最大7.1%の賃上げに充て若い世代中心に配分した」と話し、

社員と経営層による社内協議会で「居住地の違いや生活コストではなく、

成果に報酬を払う考えを丁寧に説明し納得を得た」といいます。

 

ここまでご紹介した例をご覧になって、

私学関係各位はどのようにお感じにあるでしょうか。

もちろん、内容にも差がありますが、私自身、

病院と一般企業の風土の差は一定程度あるのではないか、とも感じます。

そして、私学はどちらかと言えば病院に近い風土があるのでは、

とも感じます。

同一労働同一賃金の実現に向けた制度整備は進めていく必要がありますが、

私学においてはより慎重に、組織風土も勘案した対応策が求められる

ような気がいたします。

 

(文責:吉田)

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多様性求め異議相次ぐ

日経新聞で先月始まった連載、その名も「教育岩盤」。

毎回、興味深い内容を提供してくれます。

本日ご紹介するのはその初回の記事です。

 

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本の学校教育改革が停滞している。新しい試みに背を向けたままでは、国際化やデジタル技術の進展、新型コロナウイルス禍という時代の転換期をけん引する人材は育たない。変化を忌避する「教育岩盤」の実態を追った。

 

いきなりのダメ出しから始まるこの記事ですが、

紹介されている実例を見るにつけ、確かに岩盤とも言えそうな、

強固な伝統が立ちはだかっていることに改めて気づきます。

 

現在、須磨学園の学園長を務める西和彦氏は、

東大で教鞭をとる中で、日本史や漢文でも優秀な成績を納めなければ

エンジニアになれないという入試制度に疑問を抱き、

筆記試験なし、専門性・人間性・国際性を重視する1時間半の面接のみの

入試を行う日本先端工科大学の2024年開校を目指し奔走しているとのこと。

 

また、幼小中高の一貫教育で知られる玉川学園は、

幼稚園年長組の9月から小1の学習を始め、

高校を6月に卒業する一貫教育校の設立を目指しています。

秋入学にすれば夏休みを有効活用できること、

中高一貫校は個々の理解に応じた「修得主義」指導を可能にすることなど、

メリットはいろいろ想定されているようです。

 

硬直した教育制度への異議申し立てが相次ぐ。6・3・3・4制などは戦後間もなく導入され、入学年齢や時期、学習内容を細かく定める。だが、この間に社会は激変し、制度が現実に合わなくなってきた。

平均点の高い優等生は選抜できても、とがった才能の発掘が苦手な難関大入試。世界の主流とずれる4月入学。年齢と学年がリンクし、理解が早い子にも遅い子にも苦痛なだけの「履修主義」指導……。制度の限界は明らかなのに、平等主義を盾に改善は進まない。

 

いろいろと考えさせられる記事ですが、さて、

私学たる貴校園では改善、改革は進んでいますでしょうか。

国や行政の制度は確かに重要ですし、そこに阻まれることも確かに多いのが

現実だとは思うのですが、だからといって、それが現状に安住することの

積極的理由にならないことは明らかでしょう。

 

よりよい教育環境を目指し、貴校園自身がどうなりたいのか。

ぜひともその大きな問を、自らに投げかけてみていただきたいと思います。

ご紹介した記事は、こんなふうに締められています。

 

変化を嫌う体質を変えない限り、激動期に必要な人材は育たない。改革の芽を摘み取る愚を繰り返している余裕はない。

 

(文責:吉田)

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教員のICT能力伸びず 「スキルの差大きい」

一気に進んだように見える、学校教育におけるICT化。

しかしながら、諸外国と比べると十分とは言えないようです。

まずは日経新聞のこの記事から。

 

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新型コロナウイルス禍で、子どもの学習の遅れを懸念する声が高まっている。一斉休校で登校する機会が減り、経済状況などによる学力の二極化が進んでいる恐れがある。休校のリスクが拭えない中、学びの体制整備はなお喫緊の課題だ。

 

特に公立校で問題となった上記の現象。

白梅学園大の増田修治教授らが今年2~3月、

小学校教員319人に「休校前後で学力差が広がったと思うか」と聞いたところ、

「とても思う」(17.2%)と「やや思う」(47.3%)と合わせて6割超が

影響を実感しているという結果になったそうです。

 

そして長崎大の森内浩幸教授(小児科学)はこうおっしゃっています。

「学校での経験はやり直しがきかない。健康児の重症化事例はほぼなく、

 対策を徹底しつつ学びの場をできる限り元の形に戻す道を探るべきだ」

 

こういった意見が出されるのは、

休校になった際の代替策が効果的でないから、

というのは言い過ぎでしょうか。

下のグラフを見て、そんなことを思ってしまいました。

 

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同日の記事です。日経新聞より。

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新型コロナと並走しながらの学びの保障には、ICT(情報通信技術)を活用した指導力が不可欠となる。ただ日本の教員の指導スキルは国際的に見ても低いのが現状だ。

文部科学省が3月に公立小中高校などの教員約76万人に授業でICTを活用できるか聞いたところ、「できる」「ややできる」との回答は平均70.2%で、コロナ前の前回調査から横ばいだった。

 

経済協力開発機構OECD)の2018年の調査では、「デジタル端末を授業に取り入れるために必要な技術や指導力を持つ」と校長が評価した学校に通う15歳の生徒の割合は日本では27.3%で、参加した79の国・地域で最下位だった。

 

私学ではおそらく、公立校よりもICT活用スキルの高い教員が

多くいらっしゃることでしょう。

ただ、それでも校園内での差は小さくないケースもあるかもしれませんし、

現状でとどまってよい、ということにもならない気がいたします。

今後に向け、教育環境整備の重要な一部として、ICT活用を位置づけ、

学校として推進していくことが肝要ではないでしょうか。

 

(文責:吉田)

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バイト時給、最高を更新

久しぶりに労働統計をご紹介します。

日経新聞より。

 

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アルバイトやパートタイマーの時給が9カ月ぶりに最高を更新した。リクルートが(10月)14日発表した三大都市圏(首都圏、東海、関西)の9月のアルバイト・パート募集時平均時給は1102円と前年同月比11円(1%)上昇。2020年12月に付けた1100円を上回った。新型コロナウイルス禍でも需要が高い介護などの専門職や事務系がけん引した。10月の最低賃金改定に向けた販売などでの時給引き上げも押し上げ要因だ。

 

今や平均時給は1,100円台になっているのですね。

貴校園の時給はそのような状況を踏まえたものになっているでしょうか。

今回の調査結果を見てみますと、

職種別では「専門職系」全体が前年同月比20円(1.7%)高の

1,222円となっています。

学校教員も専門職と言ってよいでしょう。

自らの組織の賃金水準を改めて確認しておきたいですね。

 

そして下のグラフを見ていただくと、

事務系の時給が上がっているのも分かりますね。

 

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「事務系」全体では前年同月比33円(2.9%)高の1,173円となっており、

上昇幅が大きくなっています。

 

先月から最低賃金も上がっていますから、その点も含めて、

人材採用をも見据えた適切な賃金水準をご検討いただければ幸いです。

 

(文責:吉田)

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