寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

オンライン教育 拡大探る

オンライン教育の話題が新聞紙上を長く賑わせていますね。

先月の記事ですが、ご紹介させていただきます。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

コロナ禍により休校となった影響で、おそらく多くの私学では

オンライン授業、特に双方向型の授業実施を目指し、

かつ実現されたことと思います。

 

一方、公立校はこの点で相当後れを取ってしまったようで、

この4月以降に、オンラインで同時双方向型の指導を実施した自治体は

公立小学校で8%、中学校で10%にとどまったそうです。

 

しかしその大きな要因は法令にあって、学校教育法施行規則では

オンラインだけの学習を正式な授業と原則みなさないために、

小中学校では標準授業時数にカウントされません。

高校にも似たような規制があり、通信制以外の高校では

卒業に必要な単位数に含められる遠隔学習は全体の5割弱=36単位。

 

これではオンライン授業が進めづらいのも分かる気がします。

 

現在政府では、これらの規定を見直し、

小中では対面と遠隔を組み合わせた指導を正式な授業として位置づけ、

高校は36単位を超える分も修了要件に含められるようにしたいようです。

 

 

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記事にも記載があるのですが、現状においては、

おそらくベテラン教員を中心に、

対面授業や集団生活へのこだわりもまだ強くあると思われます。

もちろん、これまでの指導法にも意義は当然あると思いますので、

それらが全くなくなるとなれば、

学校の存在意義も改めて問われることにもなるでしょう。

 

ただ、遠隔と対面のそれぞれにいいところがあるのもまた事実です。

コロナ禍で各校園が取組を進める中で、おそらくそろそろ、

そのメリットとデメリットが出そろっているのではないかとも思います。

いくつかの方法を「いいトコ取り」して、

学校での教育活動がより意義深いものになっていくことを

大いに期待したいと思います。

 

そしてそのためには、デジタル機器を使っての指導スキルを高めていく

必要もあるでしょう。

公的なしくみを整えることも当然必要ですが、

私学においてはぜひ進取の精神を発揮していただき、

よりよい方法論を研究開発していただければと思います。

 

(文責:吉田)

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「学校行事」とは

実際に学校で働いておられる方が書いておられる記事、「学びや発」。

日経新聞で定期的に掲載されています。 

先日、学校行事に関するものが挙がっていましたので、

ご紹介させていただきます。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

コロナ禍で夏休みが短縮されたケースは、

私学でもかなりの数に上るのではないでしょうか。

長期休暇の短縮がなぜ必要なのか、と言えば、

それは何より、授業時数の確保にあると思われます。

 

この記事の筆者もそのような動機から、

年間授業時数がどのくらい足りなくなるだろうかと、

夏休み前に計算してみたそうです。そこで驚きの結果が。

 

来年3月までに実施できる理科の授業は100時間。

学校教育法施行規則で定められているのは年間105時間。

ほとんどが今からの時数で足りることになる、というのです。

 

例年と遜色ない授業時数を確保できるのは行事がなくなるためだ。音楽会や運動会、学年を超えた交流をする縦割り活動といった行事とその準備に、1年のうち実に2カ月弱を費やしていることが浮き彫りになった。ある同僚は同じ学年の若手教員に「行事がない分、授業時数が多くあるから慌てず学習を進めよう」と話したほどだ。

 

おそらく、どの学校においても同じような感想をお持ちかもしれません。

事実、私も先日某私学を訪問させていただいた際、

授業時数の問題はほぼない、なぜなら行事がなくなるから、

というお話を聞いたばかりです。

ただ、学校行事がそれほどまでに大きな割合を占めていることに、

今さらながら驚かれた現場教員の方も多いかもしれませんね。

 

となると、学校行事は本当に必要なのか?という議論も起こりそうです。

筆者はこうおっしゃっています。

誤解しないでほしいが、行事をゼロにせよというのではない。縦割り活動などは一人っ子が多い現代では重要だろう。学習で力を発揮できない子どもが運動や音楽で輝く機会でもある。

ただ、行事に目を向けすぎて学習をないがしろにしている部分がある。行事の効果とそれに要する時間・労力が見合っていないことも多い。そうした実態を見直すことなく行事を優先するのは「行事中毒」だと思う。

 

さて、貴校園の行事はいかがでしょうか。

実施されているそれぞれの行事について、教育目的や効果は明確か。

同一の目的によって、多数の行事が、あるいは負荷の大きな行事が、

見直されることなく続いてはいないか。

 

時間の捻出のためだけに行事を廃するのもまた、

やや短絡的と言えるかもしれません。

同様に、これまでやってきたのだから、伝統があるから、

というだけで行事を同じ形で続けるのも、

やや工夫が不足しているのかもしれません。

 

筆者はこの記事をこう締めています。

私も同感です。時間のあるうちに、じっくりと、考えてみたいですね。

図らずも行事の機会がなくなる今年度。じっくり腰を据えて授業や学級経営に取り組んではどうだろうか。そして、各行事が本当に必要かどうか考えたい。

 

(文責:吉田)

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教員免許、小中同時に取得

教員のなり手不足解消となるでしょうか。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

 

文部科学省は小学校と中学校の教員免許を同時に取得しやすくするため、大学などの教職課程に特例を設ける原案をまとめた。それぞれの必修科目の一部共通化などが柱。教員が小・中学校間を行き来しやすくするほか、社会人の免許取得制度も整え、業務負担が増す教員を幅広く確保する狙いがある。

同省は(7月)17日に開く中央教育審議会の特別部会で、大学の教職課程や社会人の教員免許取得制度などの見直しを盛り込んだ原案を示す。

 

この原案の具体的な内容は下の図が分かりやすいので転載させていただきます。

ただ、この図だけ見る分にはあまり負担軽減になっていないような気もします。

記事本文には「両免許の取得に必要な単位は4分の1以上減る見通し」

とありますので、図では見えてこない負担軽減もあるのかもしれません。

特に、教育実習を小中両方でやる必要がなくなるのは大きいでしょうね。

 

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このような措置が考えられているのは、すでにご存じの通り、

先生のなり手不足が大きな要因です。

特に小学校教員の志願者はかなり減っていて、

採用倍率は3倍を切っています。

まずは入口を緩めることで、数を確保したい、といったところでしょうか。

 

ちなみに、今回の制度改正によって、新卒者だけでなく、

すでに教員として働いている社会人も小学校の免許が取りやすくなるそうです。

既に働いている中学校教員も、小学校の免許を取りやすくする。(中略)これまでは中学校で一定の勤務年数があることを小学校免許の追加取得の条件にしていた。この制約を撤廃し、小学校での勤務年数もカウントできるようにする。

 

そしてそれ以外にもこんな改正がなされるそうですよ。

教員免許を持たない社会人も教壇に立ちやすくする。現在、専門知識を持つ社会人などを対象に、有効期限10年の「特別免許状」を出して教員に任用する仕組みがあるものの、期限が長いため敬遠されがちだった。今後はより期限が短い免許の新設を検討する。

正規の教員ではなく、兼業や副業の形でも教育に携われるよう、免許がなくても教科の指導をできる「特別非常勤講師制度」を活用しやすくする方法も検討する。

 

さて間口が広がって志願者数は増えるでしょうか。

それとも、対処療法では難しい、という結果になるでしょうか。

 

究極的には、働く現場に魅力がなければ、なり手は増えないでしょう。

教員はやりがいがある仕事だけに、

それを続けていけるだけの働き方の確保が何より重要な気がするのですが

いかがでしょうか。

 

(文責:吉田)

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財務の持続可能性と安定性

明日から弊社は夏季休暇に入ります。

ブログも少しだけお休みさせていただきます。

皆様、よいお盆休みをお過ごしくださいね。

 

さて、たびたびご紹介している日経新聞の以前の連載記事、

「ポスト・コロナ時代の大学経営」。

今回は財務の話題です。

 

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(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

大学の使命は教育研究であり、利益が目的ではありません。しかし、教育や研究の成果が表れるには長い期間が必要です。そのため持続的な活動に必要な財務的資源を調達し、管理しなければなりません。

 

大学以外の教育機関では「研究」より「教育」が中心的な活動になる、

とは思いますが、それでも教育活動が成果を生むまでには

それなりに時間がかかる、というのは大学と同じです。

そして何より、学校には卒業生が常にいますから、

その卒業生の「帰る場所」「原点」が学校である、とも言えます。

 

そんな場所がなくなってはいけない。学校は社会的存在である。

だからこそ、永続が基本であり、財務・財政の健全化は重要課題なのです。

 

支出(経費)を上回る収入を大学全体で調達するための予算を策定し、執行を管理しなければなりません。部局単位で収支は均衡しないので、内部の配分計算(収入の帰属や本部・情報基盤経費の分担など)が求められます。それぞれの部局が収入を増やし、経費を抑制する責任と誘因を制度化し、努力を還元する仕組みが大学全体にとって有効です。

 

書かれていることはごく当たり前のことです。

が、以前は私学でもこの考え方はなかなか受け入れられませんでした。

「良い教育にはお金がかかるのだから、経費をコントロールするなどもってのほか」

といった考えがむしろ本流だった、と言えるかもしれません。

私もこの業界に15年間関わる中で、

ずいぶんとその空気は変わってきたことを感じます。

 

次のステージは「だからどうするのか」ということに解を見つけること、

ではないでしょうか。

支出が収入の範囲内にとどまるようにする、

それを中長期的に実現するという目的を掲げたうえで、

それをどう実現するのか、各校園なりの解を見つけるのが

ここからの私学経営ではないか、と思うのです。

 

少子化が進み、社会的なコストアップも進む中で、

収支バランスを保ち、財政を健全化することは簡単ではありません。

収支構造をしっかりと見つめ、何にどう手を付けるのか、

それを具体的に考えていくことが求められます。

 

教学には苦手意識もおありのケースが多い、財務の話題ですが、

今こそ全学的に議論を深めていただければと思います。

 

(文責:吉田)

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教育の概念、激変の可能性

コロナ禍で大きく前進したのがオンラインでの学びです。

これからの教育の概念は大きく変わる可能性がある、

とこの記事は指摘しています。

日経新聞より。

 

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(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)


オンライン教育が可能にしたこととは何でしょうか。

学校に来ずとも、家にいても講義が受けられるようになったことはもちろんですが、

それ以上に重要なのが「教室の人数制限を受けない」ことだと

筆者は指摘しています。

 

たとえば、東京大学で入試を廃止してだれでも入学できるようにしたら、教室が足りなくなってしまうだろう。しかし、オンラインならば、人数を制限することなく受講させることができる。選抜を行うことなく、日本中のあるいは世界中の希望する人に、教育を受ける機会を提供できるのだ。

  

なるほど、入試というものの存在意義が変化するかもしれない、

というのはとても興味深いですね。

記事には以下のような図示もありましたので転載いたします。

 

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一つあり得るのは、オンラインで幅広く講義を提供して受講者のすそ野を広げ、その講義で良い成績を修めた受講者に、キャンパスに実際に来て少人数の討論型授業に出る許可を与えるという形だ。このような学校のあり方は、世界的にはコロナ禍の前から発想され、一部の大学では行われていた。それが、オンラインの経験によって、一挙に具体的な姿となって表れてきた。世界の主要な大学は、世界中の様々な境遇にある人々に対して無料でオンライン授業を提供し、そこで探し出された優秀な学生をキャンパスに呼んで学習させる。そういう方向性に変わっていくはずだ。

 

このような形へと授業が変わっていくとすれば、

リカレント教育もまた変化する、と筆者は述べています。

すなわち、仕事を持ちながら学校へ通うのはなかなか大変ですが、

オンラインで授業やセミナーを覗くことができれば、

社会人の学びの機会は大きく膨らみます。

事実、私自身も外出自粛期間にはオンラインでの学びがとても充実し

(コンテンツが一気に増えて、アクセスできるものも大幅拡大した印象があります)、

その恩恵を受けた一人だと思います。

 

そしてリカレント教育が気軽に可能なものになるのであれば、

新卒での就職に今ほどの力点が置かれずともよくなるのでは、

と筆者は指摘しています。

 

いっそ、就職活動だけにとどまらず、卒業を待たずに就職をして、ある程度働いてみた後に、自分が必要と感じる時期に大学に戻って必要と思う科目を履修し卒業をするというやり方がもっとあってもよいのではないか。なぜならば、特に社会科学の分野についていえば、社会人としての経験を積んでからのほうが、はるかに理解しやすい講義内容も多いからだ。

 

新たな学びの形について、今回の記事は大学を中心に考察されていますが、

大学以外の学校種においても、根本的な学びの意義やその形について、

改めて考える機会が今回のコロナ禍ではないかとも思います。

中高等でのこれからの学びのあり方について、

この夏休みにいろいろ考えてみることもまた大切なのではないでしょうか。

 

(文責:吉田)

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中3、英検「3級」以上44%

英検の取得率は上がっていますが目標には及んでいない、

という記事が掲載されていました。

日経新聞より。

 

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(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

文部科学省は(7月)15日、全国の公立小中高校を対象にした2019年度英語教育実施状況調査の結果を公表した。「英検3級」以上の力がある中学3年は44.0%、「英検準2級」以上の力がある高校3年は43.6%だった。それぞれ前年度より1.4ポイントと3.4ポイント増えたが、50%としている政府目標には届かなかった。

 

この調査は2019年12月時点で実施したものです。

中3で英検3級程度以上を取得した生徒は25.1%でしたが、

成績などを基に教員の裁量で「相当する力がある」と判断した生徒18.9%を加え、

44%という結果になっています。

同様に、高3で英検準2級程度以上を取得していた生徒は26.7%で、

教員の判断で認めたケースが16.9%となっています。

高校では学科が分かれていることも多いですが、

英語や国際関係の学科は91.2%とやはり高かった一方、

工業や商業などの専門学科は15.8%にとどまったと書かれています。

 

ちなみに、今年4月から英語が教科化された小学5・6年では、

学級担任が外国語の授業を担当する割合は前年度より10ポイント減り、

「専科教員」らが教える学級が29.5%に増えたそうです。

とはいえ、担任が実施しているのが全体の7割。

きっと私学では専科教員の割合がずっと高くなるのだろうと思いますが、

それでも小学校の先生のご苦労が垣間見えます。

 

コロナ禍で国際教育の機運もややしぼんでいるような気もしますが、

これからの子どもたちが世界を視野に入れて人生を送ることは

間違いないでしょう。

英検資格はさておき、幅広い価値観を育てられる

教育の実践を続けていただければと思います。

 

(文責:吉田)

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「資源」をマネジメントする

先日来、紹介させていただいている日経新聞の連載、

「ポスト・コロナ時代の大学経営」。

今日は学校経営においても重要な、経営資源の話です。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

連載の中でも、今回の記事は大学以外にはやや縁遠い内容を含んでおりますが、

他校種でも考え方は参考になるはずです。

 

大学は、その使命達成に向けた教育研究や社会貢献の活動目標を、戦略計画としてまとめます。例えば既存の学部を再編成し、新領域で国際的な教育研究拠点を目指すといった組織目標をたてたとします。その実現には、活動の基盤となる教職員スタッフや施設、資金、学術情報の確保や整備が必要となります。

しかし、戦略計画は企画部門を中心に策定するため、裏付けとなる予算や人材獲得方策の合理的検討は後回しになりがちです。

 

学校では教学と経営が機能的、あるいは感情的に分離されていることが多く、

さらに経営部門の中でも計画と予算と人事がバラバラに動いていることも

決して少なくありません。

戦略や計画を作っても実現できないという原因は、

実はこのような点にあるといっても過言ではないのです。

 

我が国の国公立大学では、基本的な施設整備は国や自治体が意思決定主体です。このため中期計画で詳細な内容を記載することは困難で、有力大学の中期計画でも財源が明示されていない例が見られます。学術面の活動計画と、ヒト・モノ・カネおよび情報という資源の調達・管理計画の連動が曖昧なまま、という例が多いのです。

 

上の文章をお読みになって、私学との違いを感じることができますでしょうか。

私学は各校園が経営機能をすべて担っていますから、

その分大変ではありますが、同時に自由度も高いといえます。

ですから、私学の中期計画には、ヒト・モノ・カネといった

経営資源を存分に絡めながら、実現に至るストーリーを作ることが肝要であり、

私学であればそれは十分に可能なはずなのです。

 

学校が永続するために必要なのが経営計画、事業計画。

常にそれを更新し続けながら、よりよい学校経営を進めていただければと思います。

最後に今回の記事の末尾に掲げられた文章をご紹介しておきます。

 

すべての資源の価値は時間や環境とともに変化するので、調達と管理・更新によって水準を維持する必要があります。スター教員を採用しても、後継者の育成・採用のほか、状況に応じて活動分野の重点を移す検討をしておかねばなりません。大学の本務活動と資源を結び付けて考え、実行する仕組み(教学と経営の協議調整)が重要です。

 

(文責:吉田)

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