公立校でも面白い探究の授業があるようですよ。
日経新聞より。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
東京都渋谷区は今年度から、
「全」公立小中学校で「毎日」午後を探究の時間としたそうです。
なかなかの力の入れようですね。
今回の記事は、渋谷区教育委員会の安部忍教育指導課長の寄稿なのですが、
冒頭から考えさせられることが書かれていました。
子どもにはもともと学ぶ力が備わっており、環境さえ整えれば自ら問いを見つけ学びを創っていくことができる。それは幼児期の姿を見れば分かる。遊びは学びそのものであり、興味のあることや好きな遊びに没頭しながら知識や技能、人との関わり方など生きる上で必要な力の基礎を身に付けていく。
幼稚園の教員は子どもの興味関心に合わせて環境を整え、必要な声かけや援助をする。ところが、義務教育が始まると教科や時間割の枠の中での一斉授業が主流となり、皆が同じペースで学び、同じようなやり方で決まった答えを導く授業が多くなる。
これからの時代を生きていくために必要な力は、
一斉授業では身に付けづらい、と分かっているのに、
なかなか形を変えられない、授業内容を変えられない、
というケースは公私問わずまだまだあるのではないでしょうか。
渋谷区ではこれらをがらりと変えようと、
学校空間をハード・ソフト両面から変えていく
「未来の学校プロジェクト」という大改革に着手されました。
ハード面では学校の環境を子ども主体の学びにふさわしいものに、
ということで、区内全27施設のうち22施設を2041年までに順次改修。
教室は可動式ホワイトボードを導入し、
グループ対話や協働的な作業がしやすい可変性のある空間に変えるそうです。
もし今後施設整備を考えておられる校園がいらっしゃれば、
こういった取組は参考にされてもいいかもしれませんね。
ただ、ハード面は先立つものが必要、ということで、
まずできることというのはソフト面です。
タイトルにもある「シブヤ未来科」とは何なのでしょうか。
具体的な内容は下の図をご覧ください。
1年の前半は探究の基礎を学び、企業や外部人材と連携して多様な体験活動を実施。
中盤は学年や学級で共通テーマによる探究に取り組みます。
後半(10〜3月)は自ら問いを見つけ、テーマ設定した「My探究」に挑戦。
目的はグローバル社会で活躍する自律した学習者を育むことである。誰もが幼児期に経験した遊びに没頭するワクワク感や好奇心、一人一人に備わった自ら学ぶ力や創造性を発揮し、学んだ知識を生かして新たな知見を創造していくことを目指す。
学校にとっては「受け身の授業」から「自ら学ぶ授業」への転換を加速し自己調整力や創造力、挑戦力を伸長させる場の構築への挑戦である。
平日午後がすべて探究となる、という思い切った施策ですが、
実際、国語や算数・数学などの時数を1割削減してその時間を確保しているそう。
主要教科の時数減らして大丈夫なの?という声も聞こえてきそうですが…
学力の保障に関して懸念の声も聞かれるが、学習指導要領が定める各教科で学ぶ内容は減らさない。全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)では、能動的・探究的な学習活動に多く取り組んでいる児童生徒は平均正答率が高く、特に活用力を問う問題でこの傾向が顕著に見られるという結果が出ている。
私はこの記事を読んで、授業時数をどうするか、
という課題よりも、これを担当する教員各位の力量が問われる点が
最大の課題になるように感じました。
この点についても記事には言及がありました。
教員の役割も変わってくる。先回りして教えすぎないことがポイントで、一人一人の学びの状況に合わせて必要な支援を行いながら、一緒に楽しむ姿勢が求められる。
23年度は校長や探究コーディネーターの研修、学校訪問などあらゆる機会をとらえてシブヤ未来科の授業づくりの研修に取り組んできた。長年培ってきた従来型の指導観の転換はたやすくないが、こうあらねばならないという指導を改め、子どもに寄り添い共にワクワクしながら学ぶよう教員に働きかけている。
同年度から全小学校で毎週水曜日の午後を「ティーチャーズラーニングデイ」とし、教員同士が探究について学び合う時間を確保した。中学校は月に一度、主に水曜の午後を同様に使っている。
教員が安心して探究を創造できるよう、教員向けのハンドブックも配布した。専門家の助言を得ながら区が独自に作成したもので、探究のプロセスや探究で必要とする基礎的なスキル、授業の事例など各学校の学習を充実させるためのヒントを盛り込んだ。
公立校でもここまでやっていらっしゃいます。
貴校園ではいかがでしょうか。
主体的な学び、という掛け声をどう実現するかは、
各校園がまさに主体的に考えないといけないところだと感じます。
特に教職員の意識や意欲をこういった活動に向けられるかどうかが、
成否のカギを握るだろうと思います。
(文責:吉田)