本日と明日のブログでは、日経新聞に先月掲載された
「教育の経済学」というテーマの記事から続けてお届けします。
まずは共働き家庭のニーズへの対応についてです。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
記事に登場するのは、東京都にある私立東京農業大学稲花小学校。
授業を終えた子どもたちが、校舎の中にある
「第2の学校」に向かう様子が描かれています。
第2の学校とは、お察しの通り「学童」です。
この稲花小は、東京23区内の私立小学校としては
実に59年ぶりに新設された学校で、2019年に開校しました。
2024年度入試では72人の募集枠に対し、879人の応募が集まっています。
その人気の理由の一つが学校直結の学童「アフタースクール」の存在。
学校が委託するNPOが運営し、最長で午後7時まで児童の面倒をみてくれます。
授業料とは別に料金がかかるものの、生徒の入会率はほぼ100%。
さらに、入学式の翌日から給食ありの6時間授業が開始されるため、
お弁当を作る必要はありません。
保護者への配布物も、プリントではなくオンライン対応を徹底。
共働き家庭を意識した施策が実行されているようですね。
私立小学校は、限られた裕福なご家庭の選択肢にしか上らない、
というのが一般的な認識ですし、私も基本的にはそう考えていますが、
文部科学省の統計によれば、
国内の小学生の総数は30年前から3割減った一方で、
私立小に通う生徒は2割増えたそうで、
その割合も一貫して上昇しているとのこと。
その要因として、上記の例にあるような共働きニーズへの対応が
鍵を握っている、というのがこの記事の見立てです。
それはお弁当作りや学童だけではなく、
こんなところにも見え隠れしているようです。
子どもの中学受験を経験した都内の会社員女性(44)は「塾から出される膨大な量の宿題を家庭で見るのは不可能だった」と振り返る。
中学受験は共働きでは難しいのではないか、だったら小学校受験にしよう――。そう考える親が増えている。受験情報サイトを運営するバレクセル(東京・渋谷)の野倉学代表は「今や私立小学校受験者の6~7割が共働き世帯だ」と語る。
上のグラフにもあるように、すでに日本社会は
共働き家庭が圧倒的多数を占めるに至っています。
今回の記事には、
「共働き世帯の増加は教育業界にもビジネスモデルの変革を促した」
とあり、確かにそのような傾向は確認できると感じます。
一方で、学校はあくまでも教育機関であり、
「子どもを預かる」「生活の面倒を見る」といったところに
どのくらいの経営資源を割くべきなのか、悩ましくもあります。
共働き家庭が一般的になる中で、家庭の役割が変化することは
やむを得ない面もありますが、その役割がすべて学校に移る、
というのは教育自体の質低下につながらないか、少し心配になります。
さて、こういった環境変化を貴校園ではどのように受け止めますでしょうか。
ニーズを意識しつつ、ぜひ自らのなすべき教育活動をも大切にして、
今後の活動を組み立てていただければと思います。
(文責:吉田)