賃金に関する今後の世間の動きには、
私学もしっかり着眼しておく必要がありそうです。
日経新聞より。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
民間シンクタンクの試算によると、個人消費を左右する実質賃金をプラスにするには2024年に3.6%の賃上げが必要になる見通しだ。中小企業が価格転嫁しやすい環境を整え、賃上げの波を広げることが欠かせない。日本経済が物価上昇と賃金の好循環を築けるかの分水嶺となる。
上のグラフは記事に付いていたものです。
ベア、すなわちベースアップの実施率を示すもので、
教育・学習支援業は下から2番目の率になっていますね。
これだけを見ると、ベースアップの必要性が高いのでは?
と思ってしまうのですが、果たしてそう判断してよいのでしょうか。
賃金水準を高める、という場合に、ベースアップとは別に、
「定期昇給」というものが存在している場合があります。
定期昇給は、私学においては当然と受け止められることが多いものの、
私自身の肌感覚としては、中小企業では制度的に存在しないことがむしろ多く、
毎年の昇給があるかどうかは業績に応じて変化する、
というケースが相当程度あるのではないかと感じます。
加えて、物価高騰は確かに家計を痛める要素になっているのですが、
その痛みの大きさは、これまでの賃金水準によって異なるとも言えます。
私学の賃金水準は他業種や同規模の企業等と比較した場合、
高めで推移してきたことは事実です。
昨今少子化が一気に進んだこともあり、これまでの賃金水準を
維持できないケースも多く出てきていますが、
少なくとも現時点での賃金水準が他と比べて低い、
さらには生活を維持するのが苦しい、というところにまで
至っている例は決して多くはないようにも感じます。
ただ、以前との比較で家計に余裕がなくなっていることは間違いないでしょう。
そこで、各校園ではどんな選択肢を持てるのか、について
確認しておかれることをお勧めします。
給与増の選択肢としては、
- すべての年齢においてベースアップが可能である。
- 一部年齢においてベースアップが可能である。
- 今回限りの一時金の支給が可能である。
といったものがあり得ると考えられますが、気を付けないといけないのは、
物価高の影響はむしろ貴校園側で大きくなっていて、
給与増を実現するための余力がないかもしれない、という点です。
もしそうだとすれば、上記選択肢を実施する場合にはむしろ、
定期昇給の幅を落とさなくてはならないかもしれませんし、
賞与の水準を下げなくてはならないかもしれません。
貴校園の永続を期したうえで、教職員各位の家計の状況に
ご配慮いただければと思います。
(文責:吉田)