賃上げのニュースが多く流れている昨今。
きちんと実態を押さえておきたいところです。
日経新聞より。
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日本経済新聞社がまとめた2023年の賃金動向調査で、定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた平均賃上げ率は前年比1.54ポイント高い3.89%だった。31年ぶりの高水準で、ベア要求があった企業の実施率は9割に迫った。人手不足や物価高に対応する形で賃上げが広がったが、欧米企業の水準にはなお追いつかない。低迷する生産性を上げ、消費につながる好循環を生み出せるかが焦点だ。
まず、この調査自体の概要を押さえておきましょう。
本調査は3月31日〜4月20日に実施されたもので、
対象は前年と比較できる308社、と記事にあります。
日経新聞の調査ですので、基本的には大企業が対象だと考えられます。
そして、上記引用箇所に記載のある通り、
賃上げ率3.89%というのは「定昇+ベア」での数値。
ベア=ベースアップというのは、その名の通り、
賃金の計算のベース自体を上げることを指しますので、
例えば俸給表を用いて各年度の本俸が定まっている場合であれば、
その俸給表自体を上方修正して初めてベア、ということになります。
ベアをこのタイミングで行った私学はおそらく多くないと思われますが、
一方で定昇=定期昇給はどうでしょうか。
年齢給を採用されている私学が多い中、
前年度よりも本俸が数%アップした、という教職員さんが
おそらく圧倒的多数だろうと思います。
例えば前年度の本俸が30万円で、本年度が31万円であれば、
賃上げ率は(31万円-30万円)÷30万円≒3.33%となります。
ベアがなくても2~3%程度、あるいはそれ以上の昇給が
定昇で織り込まれている、というのが
私学の給与制度では多いのではないでしょうか。
ちなみに、今回の記事には中小企業の賃上げ率にも言及があります。
従業員300人未満の中小企業の賃上げ率は3.57%と全体平均は下回ったが、集計可能な過去22年間では最高だった。人手不足や原材料高でぎりぎりの対応を迫られている。部品製造のエイケン工業の賃上げ率は6.61%で、金額ベースで前年比約2倍と大幅に引き上げた。23年度の業績は「大変厳しい状況になる」とするが従業員のモチベーション向上や人手確保を考慮して一律1万円の昇給を実施した。
中小企業でも、過去と比較すれば大きな賃上げは実施されているようです。
物価高によって、従業員さんの生活が脅かされていることが
その主な要因かもしれません。
実質賃金算出のベースとなる消費者物価指数(持ち家の家賃換算分除く総合)は22年度に3.8%増と41年ぶりの水準に達した。生活水準を保たなければ人材のつなぎ留めもままならない。そのため業績が振るわなくても待遇を改善せざるを得なくなっている。
貴校園の賃金水準を今後どう変えていくべきなのか。
正解のない問いですが、こういった経営環境を踏まえて、
ご検討いただくのもよいのではないでしょうか。
(文責:吉田)