こういう地域差が生まれているんですね。
日経新聞より。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
地方で中小企業の賃金が都市部を上回る勢いで伸びている。従業員100人未満の企業の5年前との増加率を比較すると、上位10府県は地方がほとんどで、東京都や大阪府を大きく上回る。実態は人手を何とか確保するための受け身の賃上げだ。持続的に賃金を上げるには価格転嫁や生産性向上が重要になる。
賃金は都市圏ほど高いもの、と思ってしまいがちですが、
その上がり方に目を付けると、こうも構図が変わるのかと驚きました。
ここ5年に限ったことではありますが、
小規模企業の賃金上昇率のトップは宮崎県。
2023年における従業員10~99人の企業の所定内給与は、
2018年と比べて実に13.2%増となっています。
ただ、この要因は私学をめぐる環境とは少し異なりそうです。
これまでは「陸の孤島」とも呼ばれた宮崎県では、
2016年ごろに交通網が整備され、県外企業との人材争奪戦が激化したうえ、
熊本県に台湾積体電路製造が進出するなど九州に大型投資が相次ぎ、
小規模企業の賃上げのように見えて、
実は大企業による人集めの構図がありそうな気配です。
ただ、大企業と比べた時の中小企業は賃金水準が低く、
さらに都市圏と比べた場合の地方もまた、賃金水準が低くなっています。
宮崎県を例に取れば、2023年の実額は月244,300円で、
東京とはなんと12万円以上の差になっています。
実はこれでも5年前から2.7万円縮まった、と言いますから、
過去のその差は歴然であったと言えるでしょう。
さて、こういったことを見てくると、
私学でも賃金水準について似たような点に留意が必要な気がします。
ひとつは、他の業界との人材競争力がどうか、ということ。
目の前では競合他校園の賃金水準が気になるかもしれませんが、
教職免許を持つ人材すら教職を離れていく世の中で、
業界の垣根を意識しすぎることは避けたほうがよさそうです。
そしてもうひとつは、私学平均値、というものに惑わされすぎないこと。
私学にもいろいろな規模の大きさがあり、立地地域があります。
さらには今回の記事にあったように、
賃金の絶対額がどうか、という観点と、
どのくらい賃金が上がっているのか、という観点を
きちんと区別して検討を進める必要があるように思います。
昨今の物価高等で賃金アップが求められる校園もあるかもしれませんが、
現状の賃金の絶対額にもきちんと着眼して、
経営の永続を可能にするラインを見出していただきたいと願っています。
(文責:吉田)