寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

高校無償化、大都市で先行

このブログでもたびたび採り上げてきた「無償化」施策。

地域差にとどまらない、根源的な問題がそこにあります。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

大阪府や東京都が先行する私立高校の授業料無償化制度が、周辺の学校や自治体に困惑を広げている。大阪府は府内に住む生徒を対象に完全無償化を2024年度から導入するが、参加を呼びかけた周辺府県の私立校の7割は不参加の意向を示した。戸惑いの背景には同じ学校に通いながら、生徒の居住地によって支援の手厚さが異なる「不公平感」も透ける。

 

今回ご紹介する記事は上の文章で始まり、

続けて大阪府の制度が紹介されています。

生徒の居住地による不公平感が主眼かと思いきや、

ここからしばらく、記事は大阪府の制度の特徴である

「キャップ制」をめぐる問題点が紹介され、論点が変化しています。

少し引用が長くなってしまいますがご容赦いただき、

記事原文を見てみましょう。(太字の加工は筆者によるものです)

 

大阪府は現在、所得制限を設けたうえで生徒1人あたり年60万円までを公費で補助し、超過分は学校が負担する「キャップ制」を採用する。

24年度から上限を同63万円に引き上げ、所得制限を順次撤廃する。学校が参加を希望すれば原則、大阪など関西2府4県に通う同府在住の生徒の授業料が無償となる。

府は近隣府県の私立校にも参加を呼びかけて意向を調査したが、23年12月までに約7割の学校が「(参加を)希望しない」と回答した。

「驚きはない。当たり前だろうという印象だ」。兵庫県私立中学高等学校連合会の和田孫博副理事長は語る。「(制度に加われば)学校に負担が生じ、独自教育に十分な費用を割けなくなる恐れもある。参加を求めるのは無理筋だ」

府が完全無償化の方針を決めた同年8月以降、連合会は見直しを求め続けたが、納得できる回答はなかったという。

不参加校が敬遠したのがキャップ制だ。補助に上限が設定され「事実上の価格統制」との指摘も根強い。年間約70人が京大に進む東大寺学園奈良市)の幹部も昨年10月に面会した大阪府職員に「私学の公立化を図っているとしか思えない」と制度見直しを迫った。

 

 

 

大阪府はこれまで、公的な助成=経常費補助が

全国最下位レベルに低く抑えられてきました。

そこへさらにこのキャップ制が導入されると、

学校が自由に使える資金はさらに限られてしまいます。

 

ですがこの制度に参加しないとなれば、

各家庭は当然、参加校への進学へと希望が傾きます。

これでは生徒が集まらない、という結果になってしまうのです。

 

しかし、この制度に参加すれば、

一定の教育水準を保持する、あるいは環境の維持改善を図る理由で

学費を上げようとしても、キャップ制がある以上、

結局その上昇分も自ら賄わねばならないこととなり、

値上げの意味は全くありません。

価格統制よりももっとたちが悪い制度ですよね。

 

さすがに大阪府は今回、経常費補助を増額

(生徒1人あたり年約2万円)するとの方針を示し、

これによって大阪府下の私学の多くはこの制度に参加することとなりました。

が、これは私学の経営の自主性を大いに損なわせる施策であり、

基本線として私学は丁寧に抗っていくことが大切だと感じます。

 

さて、記事では最後のほうに地域差のことに言及がなされています。

高校授業料の無償化を巡っては東京都も24年度から所得制限を撤廃する方針を決めた。現在は年収910万円未満(目安)の世帯を対象に授業料を実質無償としている。

都の制度は公費補助の上限(私立の場合は年約47万円)を超えた分は保護者負担となっている。(中略)

東京都の動きに周辺では困惑の声も上がる。国が各世帯に向けた授業料の支援制度を10年度に導入して以降、都道府県はそれぞれに補助を上乗せする仕組みを整えた。

埼玉は年収720万円未満(目安)の世帯を対象に私立高の平均授業料相当を上限に補助、千葉は同640万円未満に授業料全額を補助するなど各自治体で制度が異なる。

 

自治体の予算規模はそれぞれに異なりますので、

こういった差異が生まれてしまうことはやむを得ないのかもしれません。

がそもそも、私学の存在意義はどこにあって、

学費をどのように考えればいいのか、という点は

より根本的な検討や考察が必要なのではないか、とも思います。

 

本件を他山の石とするには当事者でありすぎるわけですが、

ただ、改めて貴校園が徴収する授業料や入学金、教材費等に加え、

補助のあり方や受け方について考える機会にはしたいものです。

個人的には、私学は自律的に運営を続けられるように

それぞれが経営の仕組みを整えるべきだと感じております。

さて皆様はいかがでしょうか。

 

(文責:吉田)

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