寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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東京都が高校「実質」無償化

「無償化」が流行りのように唱えられていないか、心配になります。

題目よりも、中身に着目してまいりましょう。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

東京都は私立高校を含む全ての高校の授業料を2024年度から実質無償化する方針を固めた。現在は世帯年収の目安が910万円未満の世帯を対象に授業料を助成しているが、所得制限を撤廃する。

 

このニュースが流れたのは今月5日(記事はその翌朝のものです)。

この日開会した東京都議会で、小池百合子知事は

「高校授業料の実質無償化や学校給食費の負担軽減に大胆に踏み出し、

 スピード感を持って子育て世帯を全力でサポートする」

と表明しました。

 

これまで東京都は、年収910万円未満の世帯に対して、

年間の授業料相当額を上限に助成してきています。

これが本件施策によって、所得制限が撤廃されます。

これって、こないだ大阪が先駆けてやった政策ですよね、

と思う方も世間にはまだまだ多いのですが、それは違います。

記事に「実質」無償化、とある点に注意が必要なのです。

 

大阪府が実施を表明している無償化は「完全」無償化。

東京のものは「実質」無償化。

比べるなら「完全」のほうがよさそうに見えますが、さにあらず。

 

大阪府はキャップ制、すなわち一定上限を超える授業料は

私学自身が負担する形での政策となっています。

これは実質的に授業料の上限を行政が定めるしくみですから、

私学自身の価格決定権を奪うことになります。

東京の場合は都が補助する金額の上限を超える分は

各家庭が負担することになりますが、これでも十分、

家庭の負担は軽減されています。

行政施策として許容できるのはこれが目いっぱい、

と考えるのが自由主義経済の下では妥当でしょう。

 

率直に申し上げて、完全無償化とか、実質無償化とか、

分かりにくい言葉に逃げるのではなく、その本質を見据え、

マスコミの皆さんにも適切な報道を求めたいところです。

さらには、各家庭でも教育機関のあるべき姿をしっかり見つめ、

無償という耳馴染みのいい言葉と目先の利益に流されないでほしい、

と心から願います。

 

そしてそれ以上に、各私学が自分ごととしてその本質を捉え、

経営体としての権利を守っていくことが重要だと感じます。

私学が私学らしく、経営を永続していくために。

 

(文責:吉田)

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