この深刻な状況を一刻も早く何とかする必要があります。
日経新聞より。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
厚生労働省や警察庁によると、2022年の児童生徒の自殺は514人で、それまで最多の20年(499人)を上回った。新型コロナウイルス禍の影響が指摘される。
文部科学省の「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」は21年6月の審議まとめで「保護者の自宅待機などで家庭内の葛藤が顕在化した」「学校の長期休業で息抜きの場や教員に相談する機会が失われた」などの可能性を挙げた。
2023年に関しては、10月までの暫定値で352人と若干の減少傾向ですが、
「ほぼ毎日のように全国どこかで悲劇が起こる状況に変わりはない」
との記事の指摘はまさにその通りだと感じます。
これから長い人生があったであろう子どもたちが自ら死を選ぶという、
これ以上ないほど悲惨な出来事は1件たりともあってはならない、
と思います。
ではどうすれば防げるのか。
記事にはとても興味深い調査結果が掲載されていました。
少々長いのですが引用させていただきます。
希死念慮や自傷行為のリスクが高いのに、周囲に気づかれていない子どもが約1割いる――。そんな知見が最近明らかになった。東京大学と東京都医学総合研究所が23年12月に発表した「東京ティーンコホート」と呼ぶ疫学研究の結果だ。
02年9月から04年8月までに生まれた2344人の集団を追跡。10歳・12歳・14歳・16歳の4時点で子ども本人と養育者(保護者)にうつや過敏、いらだちといった精神症状に関するアンケート調査を実施した。
得られた大量のデータを、パターン認識が得意な人工知能(AI)を用いて分析したところ集団は5つのグループに分類された。①おおむね健康②子どもが抑うつ・不安などの問題を抱え保護者も認識③問題を抱えるが保護者に認識がない④問題が行動となって表れている⑤複数の症状領域で慢性的・重度な問題がある――の5群だ。
それぞれの割合は①60%②16%③10%④10%⑤4%。③の子どもたちは希死念慮や自傷の割合が他の4グループより高く、助けを求めない傾向も強かった。
分析した東大の安藤俊太郎准教授(精神医学)は「親が問題をキャッチできていない子たちの自殺リスクが、重度の問題を抱える子たちより高いという結果に驚いた」と指摘。「子どもが親以外の大人に助けを求められる環境と、そうした子どもに周りの大人が関わる体制をつくっていくことが大事だ」と話す。
ではこれまでどんな対策がなされてきたのでしょうか。
2006年の自殺対策基本法成立を受け、
文科省は教員に必要な知識を獲得してもらうための啓発や研修を進め、
2014年には子どもを対象に予防教育を行う際の手引となる
「子供に伝えたい自殺予防」を作りました。
2017年には政府の自殺総合対策大綱が改訂され、
子どもへの「SOSの出し方教育」の推進が盛り込まれました。
取組が先進的とされるさいたま市では、
「『いのちの支え合い』を学ぶ授業」として、
小1〜高1の各学年で「出し方教育」を必修にしているそうです。
例えば中2では「生きていても仕方がない」という気持ちへの対処を学びます。
友達の相談にのること、そしてそこで深い悩みを聞いたときは
大人に確実につなぐことも教えています。
さらに高1では心の健康を扱い、心の不調と対処について
正しい知識を持つことを目指します。
ただ、今回の記事では「こうした取り組みは一部にとどまる」と指摘。
文科省が2016年度に公立の小中高校を対象に実施した調査結果では、
保護者と合意形成した上で「死ぬこと」や自殺を明示的に取り上げて
心の危機への対処法などを教えた学校は全体の1.8%。
合意形成なく明示的に取り上げた学校は30.7%。
取り上げずに実施した学校は60.5%。
十全な形での自殺予防教育はほとんどの学校で行われていない、
との評価がなされています。
調査年度も古いですし、公立校のみの調査結果ではありますが、
さて私学では異なる結果になるでしょうか。それとも…
どんな理由であれ、命が脅かされる状況は絶対に避けねばなりません。
学校として何ができるのか、と考えた場合、
当然そこには限界もあるでしょう。
ただ、その限界に達するまでの活動が果たしてできているでしょうか。
尊い命を守ることは、何よりも優先されるべき事柄だと感じるのですが。
(文責:吉田)