コロナ禍の中で、子どもたちの安全を図ることは
学校にとって大きな課題です。
しかし、それは感染リスクを防ぐことだけではありません。
心身の健康のために、留意すべきことがありそうです。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
まずは事実の把握から。
子どもの体力・運動能力は近年若干の改善傾向を示していたが、スポーツ庁の2019年度の全国体力テストでは再び低下傾向へ転じた。
このインパクトは大きく、改めて対策が強化されることは間違いない。低下の要因としてテレビ、スマートフォンなどのスクリーンタイム(ST、画面視聴時間)の増加が指摘されている。
調査対象は「2019年」、つまりコロナ禍前です。
その時点で低下傾向に転じたとすれば…
2020年度はさらに厳しい結果が予想されそうです。
ということで、記事の筆者である中野貴博・中京大学教授は、
子どもの体力・運動習慣などとST、コロナ禍の中での生活の変化を
2020年12月に調査されました。
対象は岐阜県多治見市の全小学校の2、4、6年生児童と保護者。
2352人の有効回答が得られています。
ちなみに同市では緊急事態宣言中を含む2020年3月2日~5月30日まで休校、
学校作成の課題プリントや動画などによる学習支援コンテンツを活用し
家庭学習を支援したそうです。
この調査の結果が下のグラフです。
STの合計時間平均は学年が進むにつれ増える傾向が見え、
6年生では男子224.5分、女子194.1分となっています。
3時間~4時間というのはいかにも長い気がしますね。
全体の5~6割前後を占めていて、いずれも女子の方が高かったとのこと。
体力の低下も女子の方が目立つそうで、両者に関連があるかもしれない、
と筆者は指摘しています。
またコロナ禍における生活の変化については、
「友達との交流の減少」が最多の45.1%、
次いで「体力の低下」(26.4%)、
「不安やイライラの増加」(16.3%)、
「生活時間の夜型化」(12.2%)の順だったと紹介されています。
大人と同じ状況と言ってもいいのかもしれません。
筆者らの研究では、子どもの運動実施や体力が物事への意欲や協調性、リーダーシップなどと関係することもわかっている。運動やスポーツは精神面や人間形成にも欠かせないのである。このことを保護者や教育者が改めて考え、その重要性を正しく認識して取り組んでいかないと、子どもにとっての運動の価値自体が下がってしまう。
コロナ終息後の社会において、運動がゲームやスマホに取って代わられ、子どもの体力低下がさらに進むことや、何より運動を通した人間形成の場が減少することが強く危惧される。
学びを止めないように、との意識はついつい机に向かう勉強に向かいがちですが、
運動や他者との関わりもまた大きな学びであることを
忘れないようにしないといけませんね。
学校はそのためにも重要な存在意義があるような気がします。
(文責:吉田)