昨年、大阪と近隣府県で大きな話題となった「高校授業料完全無償化」。
その結果に関する記事が年末に出ておりました。
日経新聞より。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
大阪府の高校授業料の完全無償化制度を巡り、府は(2023年12月)21日、近隣1府4県(京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山)の私立高などのうち約7割が不参加の意向と明らかにした。全国有数の進学校、灘高校(神戸市)も参加しない方向だ。府の制度は補助額に上限を設けて超過分は学校側が負担する仕組みで、参加しない学校の多くは費用負担を敬遠したとみられる。
高校授業料の無償化制度を巡っては、このブログでも採り上げましたが、
東京都も所得制限の基準引き上げや撤廃を予定しています。
が、東京都や奈良県の政策は
「補助額の上限を超えた分は保護者が負担」
する形が想定されています。
「補助額の上限を超えた分は学校側が負担」
する大阪府の制度とは、似て非なるものです。
大阪府では、補助上限を2024年度から年63万円に引き上げ、
所得制限を順次撤廃することとしています。
そして、この制度を利用するためには
「学校側が参加の意向を示す」ことが必要とされていますが、
今回は大阪府下の各私学に対しては、
参加の意向がありますか、という明示的な問いかけはなかった、
とも耳にしています。
当然参加しますよね?という、府の驕った態度が見て取れます。
さすがに大阪府外の私学に同じことはできませんから、
近隣府県には意向を確認したようですが、結果は以下の通りでした。
府は近隣府県の全日制私立高や定時制高校、専修学校などを対象に、制度に参加するか意向調査を実施し、(12月)21日までに結果をまとめた。全186校のうち参加を「希望する」は24校にとどまり「希望しない」が127校と全体の68%を占めた。「検討中」も35校あった。
記事にもありますが、参加意向は地域間で差があります。当然です。
私学には、立地等によって授業料に差があるからです。
京都府内の全日制私立高39校のうち洛南高校(京都市)など36校は不参加と答えた。一方で和歌山の全日制私立高は9校のうち8校が参加を希望した。
不参加の意向を示した学校には補助の上限超過分を学校が負担する仕組みを懸念する声が多い。和歌山の全日制私立高は全て授業料が上限を下回るが、他の府県では5割が上回る。ある私立高の担当者は「制度に参加すれば経営が悪化する恐れがある」と話す。
私学の価格設定の自由は、これまでも行政指導を甘受したうえで成立してきました。
が、ここへきてそれすら脅かされる事態となっています。
各私学におかれましては、改めて経営の本質に立ち返り、
中長期的に自校園の裁量権が維持されるように深慮いただきたいと思います。
そして、各家庭の保護者各位にも、
「負担なしで私学に通う」
ことが果たして良いことなのかどうか、
目先の損得にとらわれずにお考えいただければと思います。
(文責:吉田)