改正私学法の施行は2025年度から。
改めて論点整理しておきましょう。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
この記事の執筆は、学校法人ではおなじみでしょうか、
TMI総合法律事務所・大河原遼平弁護士が担当されています。
記事はこんなふうに始まっています。
私立学校はわが国の教育・研究の拠点として重要な存在だ。その私学を運営する学校法人を規律する私立学校法(私学法)が4月に大改正された。私学は極めて大きな変革期を迎える。
前回2019年の改正からさほど時間はたっていない。しかし社会福祉法人、公益財団法人など公共的な法人のガバナンス制度が近年次々に株式会社に類似した制度になっていることに加え、私学経営陣の不祥事が後を絶たないこともあり今回の改正に至った。
法改正にまつわるドタバタ劇を念頭に置けば、
これが「極めて大きな変革」と言えるのか、
個人的には少々首をかしげるところもあるのですが、
ただ、私学ガバナンスにおいて留意せねばならないことが出てくるのは
間違いありません。
以下、改めて改正内容を確認しておきましょう。
なお、この記事は最も厳しい規制が適用される大学、短期大学を設置する法人、
それ以外で事業規模・区域が一定基準以上の法人が前提となっていますので、
高等学校法人等では義務となっていない内容を含んでいることを
ご了承ください。
コンセプトは理事会、評議員会、監事という3つの機関の間で執行と監視・監督の役割を明確化し、分離することだ。主な狙いは理事長、業務執行理事などの経営陣の不祥事を防ぐためのチェック機能、すなわち「守りのガバナンス」の強化にある。
今回の改正では、経営陣をチェックする評議員会の機能強化が最大の目玉です。
改正法では評議員会の独立性を担保するため、理事との兼任を一律禁止とし、
理事・理事会選任の評議員は2分の1以内、
教職員評議員は3分の1以内にするなど評議員の構成にも制約が課されます。
この点、直近の評議員改選においては、その人選に十分な留意が必要でしょう。
また、解散・合併などの特に重要な事項では評議員会の決議を必須とし、
理事の解任・行為の差し止め請求などに関与する権限を設けるなど、
評議員会に「伝家の宝刀」を与えています。
一方で、評議員の義務・責任を明確化する規定も新設されましたので、
評議員会自体の暴走の抑止も図られています。
また、監事についても独立性を担保するため、選任権者を評議員会としました。
そのうえで、子法人に対する調査権限が認められ、
法人・理事間の訴訟では監事が法人の代表を務める規定が新設されるなど、
監事の権限・職務は従来より明確になり、強化されています。
さらに理事会については、理事長を選定する機関であることを明確にし、
外部理事の増員、重要な意思決定を特定の理事に委任することを禁止、
経営陣の職務報告義務なども盛り込み、
理事会自身による経営のチェック機能も強化しています。
さてこういった内容を踏まえて、筆者は今後の課題を以下の2点としています。
1つは人の問題だ。役員・評議員の役割がますます重要となるが、その重さに見合う適任者を確保できるのか。その役割を十分に認識し知見を深めるため、各法人で役員・評議員向けに定期的な研修を実施することが欠かせない。将来的には研修や候補者の人材バンクのような機能を担う公的機関のニーズが高まるかもしれない。
もう1つは「攻めのガバナンス」である。少子化の急速な進展で私学の経営環境は日に日に厳しくなっている。今までのやり方をただ続けているだけで経営が安定する時代ではない。
おそらく貴校園でも改正法を踏まえたガバナンスについて、
そして今後の経営についていろいろとご検討をされていることと思います。
以前であれば成行でも何とかなってきた私学経営は、
今後さらに多くの難局を迎えることが想像されます。
経営陣の適材適所を実現し、貴校園が維持発展されることを願ってやみません。
(文責:吉田)