少し以前のものになりますが、学校法人制度の改善について
着眼点をまとめた記事が掲載されました。
小委員会の委員として参画された弁護士さんによる文章です。
日経新聞より。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
記事のタイトルになっている「守り」と「攻め」とは何か。
守りは「経営陣に対するチェック」です。
具体的には、理事の違法行為に対する差し止め請求権など監事権限の強化、役員(理事と監事)の責任の明確化、評議員会への諮問が必要な事項の増加、利益相反行為の対象の拡大などが提言された。提言を受けて、私立学校法の改正などガバナンス制度の強化が図られることになろう。
そして「攻め」とは…
もう一つのポイントは、中長期計画の策定の推進や、私立大学版ガバナンスコードの策定など、学校法人のさらなる成長・発展のための"攻めのガバナンス"的方策の提言である。
ガバナンスの強化は複数の方面から実現される必要がありそうです。
その中に「事業計画」が位置付けられている点も
ぜひご留意いただきたいと思います。
一方で、今回の方策には課題も残った、と指摘されています。
制度をいくら構築しても、適任者がその仕組みを適切に動かさないと、絵に描いた餅に終わってしまう。経営陣へのチェック機能強化という今回の観点からすれば、特に外部理事・監事のなり手をどのように発見・育成するかという問題がある。これには役員研修の充実はもちろん、人材供給の仕組み作りも必要となる。役員の責任を明確化したことで、適任の人材が就任を避ける事態を招かないように、役員賠償責任保険の充実なども欠かせない。
私学においては、教職員の確保もさることながら、
役員のなり手を探すことは簡単でなくなってきています。
理事のみならず、監事や評議員など、
私学経営を主体的に考える立場の方々をどう確保するのか。
これは待ったなしの大きな課題だと私は痛感しています。
ちなみに、評議員会の位置づけについても確認しておく必要があります。
学校法人と同様に財団法人に由来する社会福祉法人や財団型医療法人では、評議員会を意見具申のみを原則とする諮問機関から役員の選任や一定事項の議決を行う議決機関に位置付け、評議員と役職員との兼任を禁止する制度改正が行われた。
一方で、今回の報告では、学校法人の評議員会については議決機関化も兼任禁止も見送られた。そのような状況を前提に、評議員会の役割や活用方法を改めて検証する必要があろう。
ということで、学校法人における評議員会のあり方については、
現段階では方向性が示されませんでした。
社会福祉法人を見る限り、ではありますが、
評議員会の議決機関化は手間ばかり増えて形式的なものになっている、
というケースも多いので、ガバナンス強化からなおいっそうの策を
模索する必要があるように思います。
ちなみに、この記事にはこんなことも書かれています。
少子化の進行で、学校法人を取り巻く環境が今後ますます悪化することを考えると、経営強化や破綻処理手続きの明確化も待ったなしである。
私立学校の多様性や伝統を維持するためには、撤退よりも連携・統合の道を模索することが基本となろうが、持ち分がなく非営利法人という特質ゆえに、これまであまり活発な動きはなかった。
(中略)
今後は私立学校の自主性を尊重しつつも、他の法人制度も踏まえながら、公共性を十分に満たし国民の信頼を得るに足りる仕組み作りが求められる。何よりも学生が誇りを持って学校に通い、安心して勉学に取り組めるための土台作りとなるよう願っている。
将来に向けた構想をしっかり持たないと永続が難しい時代です。
自律的な私学経営が今こそ必要ではないでしょうか。
そして、この記事を総括した記者からはこんなコメントも。
本日の締めとして、転載させていただきます。
優れた学長や理事長人材を選ぶのは当然として、外部理事や監事など、経営をチェックして透明度を高める役割を期待される人材についても、その役割にふさわしい人材を起用できなければ、いくら制度をいじっても意味がない。
外部人材の起用が、有力OBや元企業経営者の"名誉欲"を満たすお飾りになっている私立大学もある。大学経営に関わるには相応の覚悟と見識が必要だ。
(文責:吉田)