寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

監事等による学長の業務執行のチェック機能の確保について

情報が少し古いのですが、本日は学校経営のチェック機能に関する情報をお届けします。

文部科学省HPより。

 

学長のリーダーシップ強化に伴う監事等による学長の業務執行のチェック機能の確保について(大学のガバナンス改革の推進方策に関する検討会議審議まとめ):文部科学省

 

大学においては先日、学長の権限強化が図られたところですが、権限を強化すると、そこが暴走した時のブレーキ機能が必要になるのは必然です。

そこで出てきたのが監事という役割。

学長の権限強化に伴い、監事の監査機能の強化についても制度変更がなされています。

 

今回ご紹介する検討会議での審議まとめは、監事の業務と発揮すべき役割についての整理となっています。

上記リンク先にはまとめ資料の全文が掲載されていますが、その中から今後に向けた課題の部分を引用してみます。

ア)監事の選任
(前略)監事は各大学の意向を踏まえた上で文部科学大臣が任命しているが、今後、幅広く人材を確保を行うために、例えば、公募であるとか、選考会議を設けるなどの工夫が必要ではないかという課題が挙げられる。これについて、本検討会においては、以下のような意見があった。
○ 監事にどういう人を任命すべきか、整理が必要である。
○ 監事の役割として、学長に徹底的に物を言える素質のある人を選任すべきである。
○ 学外から人選を行い、当該大学に利害関係がなく、学校会計を把握できる人を選任すべきである。
○ 特に常勤の監事は、企業の監査をやったような人が適正である。ただし、給与差があるのが課題である。
○ 監査される対象の人が監査する人を推薦する現状は、国立大学のガバナンスの体制としては課題がある。他方で、大学の関係者が何らかの形で監事の候補者を考えるというのは妥当ではないかという意見もある。
(後略)

監事は学長に気兼ねなくものが言える、利害関係がない、学校会計を把握できる人…なかなか条件が厳しいですね。

ただ、私が個人的に評議員会や理事会に陪席させていただいて感じることのひとつに「学校会計を理解している人材の少なさ」が挙げられます。

監査、という立場を考慮すれば、企業会計+αは期待したいところではあります。

イ)監事の数
監事は、法人の規模にかかわらず、2 名置くこととされている。複数名置くことにより、より広範な観点から適切な監査業務が行われることを期している。2名のうち、1 名は学外者を任命することとされており、具体的には、1 名は会計監査に精通した者、もう 1 名は当該大学の行う業務に精通した者としている。監事の機能が強化されていく中、2 名の体制は十分か、大学の規模によっては、2 名以上置くことも許容すべきではないかという課題が挙げられる。これについて、本検討会においては、以下のような意見があった。
○ 企業は、監査会として物を言える体制を作っており、大学においても工夫が必要なのではないか。

ウ)監事の勤務体制等
現在、小規模の大学を中心に、監事が 2 名ともに非常勤である大学は、39 大学である。常勤・非常勤については、各大学が判断しているが、少なくとも 1 名は常勤とすべきではないか、また、報酬額は適切か(平均 11,612 千円(平成 26 年度))という課題が挙げられる。これについて、本検討会においては、以下のような意見があった。
○ 少なくとも1名は常勤にして、日常的に監査業務を行う体制が必要ではないか。
○ アンケート結果からは監事は必ずしも常勤である必要がないという意見や、監事の予算措置は十分であるという意見が大半となっているが、学長のリーダーシップが強化されたことに伴い、学長の業務執行についてのチェック機能の責任をとるためには不十分ではないか。

組織の監査を本格的に行おうと思えば、2名で足りるのか?というのは私にとっても素朴な疑問です。

加えて、その方が非常勤ともなると、時間の確保以上に日常の状況把握が可能なのかという疑問もわいてきます。

そうなると、必然的に報酬額を上げる必要も出てきますが…

果たしてこのような考えの流れが実態に合っているのか、せっかくの審議ですからその点を詰めて意見交換していただきたいところです。

エ)監事の業務を補佐する体制の整備
各大学では、例えば、監査室などにより、監事の職務を補佐する体制を整えている(大規模大学で 7 名、中規模大学で 3 名、小規模大学で 2 名等)が、大学によっては十分な人数を配置できない等の課題がある。また、各大学の中では、会計等の業務に携わってきた者が担当していることが多く、大学間の人事交流もあまり多くはないため、専門性のある人材の育成・確保に課題がある。これについて、本検討会においては、以下のような意見があった。

○ 本来、内部監査室というのは、学長が大学内で指示したことがそのとおり守られているかどうかを監査するものであり、監事の補佐業務を兼ねることは問題ではないか。

最後のコメントに引っかかってしまいました。監事監査を実施する際、補佐する体制は必須ではないでしょうか。

監事がすべての資料に目を通し、関係者にヒアリングし…というのは非現実的です。

この内容を読む限り、やはり建前重視の議論?と疑問を感じざるを得ません。

 

…と、珍しく?辛口批評してしまいましたが、それでもこれはあくまでも大学法人の話。

高等学校法人など、より小規模の法人を想定した場合、監事監査の実効性はさらに担保が難しくなるように感じます。

 

個人的に考えるのは、学校経営の健全性のためには監事監査に頼り切るのではなく、内部牽制が働く組織づくりに努めるべきではないか、ということです。

例えば、理事会を評議員会がチェックする、理事会事務局たる法人本部を各学校種及びその事務室がチェックする、事務室内の資金担当者を複数化する…など、現存の人員をうまく組み合わせることによって仰々しい監査以上の成果を生むこともできるのではないか、と思うのです。

 

一方で、監事監査があまりに形骸化しているとすれば、その是正は図られるべきであろうとも思います。

監事として必要な資質と技術をきちんと有したうえで監査に臨む、それだけで学校経営はより良い方向に進むのではないでしょうか。

 

経営健全化のためのしくみ、工夫してみませんか。

 

(文責:吉田)