日経新聞で、かなり長期の連載テーマになっている「教育岩盤」。
先月からは「子どもが消える」と題したシリーズが掲載されています。
その初回は大学が余る、という話です。
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記事に最初に登場するのは、共愛学園前橋国際大学。
徹底した教育改革で一時苦境に陥った経営を立て直し、
全国の大学トップから注目される私立大学です。
地域密着・学生中心を旗印に、群馬の若者を地域と一体で育てる方針を強化、
地元企業や市役所での半年間の就業体験や企業の海外拠点での研修を進め、
入学者数を増やすことに成功しました。
ところが、その学長がこうおっしゃっているとのこと。
「局面が変わった。これからは個々の大学の自助努力ではどうしようもない。
頑張っている大学でもあらがえない状況になった」
その最大の要因は少子化の加速、のようです。
少子化が教育界の予想を超す速さで進む。2022年生まれの日本人は77万747人で統計開始以来初めて80万人を割った。この子らが大学に入る40年の18歳人口も77万人と、中央教育審議会が18年に公表した推計を11万人下回る見通しだ。
記事のタイトルにある「240校が余る」というのは、
大学進学率を中教審の予測による57%とした場合の学生数(44万人)と、
現状の入学定員を比較した場合に、全約800校の平均定員で換算して
約240校分が過剰となる、という計算です。
上智大や龍谷大の短期大学部が学生募集をやめると公表するなど、
その事業体の数は減少の方向へ変化してきているのかもしれません。
一方で、記事はこうも指摘しています。
公立が多い小中高校は行政主導で再編されるが、私立が4分の3を占める大学は各校の自主性・独自性が尊重される。司令塔は不在で統廃合が進むかは見通せない。
日本以上に少子化が深刻な韓国は、国が大学の教育研究の成果や定員充足率を評価して不振だと財政支援を削るなどし、15~22年で入学定員の9%(約5万8千人)を削減。25年までにさらに約1万人超を減らす。
日本も追随する可能性は高いが課題は多い。大学の入学定員は大規模約60校が4割近くを占め、小規模約600校は3割。「大手が定員を減らさない限り、小規模校が200~300潰れても供給過剰は改善しない」(大学などを持つ白梅学園の井原徹理事長)
私学は自ら事業の継続可否、要否を判断しなくてはならず、
かつそのリスクは小規模校ほど顕在化しやすいにもかかわらず、
マーケットに与える影響はそれほどでもない…
なんと哀しい現実でしょうか。
需給バランスが今後より失われていくことはおそらく間違いないでしょう。
そのような中で、貴校園が永続するためには、
まさに論語とそろばんの両方が必要でしょう。
貴校園の社会的存在意義は何なのか。
そして、経営基盤を確かにしつつ運営を続けられるのか。
組織内で厳格な検討と先を見据えた対応をお願いいたします。
(文責:吉田)