日経新聞で先日まで連載されていた「漂流する入試」。
お読みになった方もいらっしゃるかもしれませんね。
今週のブログはこの記事からの気づきについて、
改めて考えてみたいと思います。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
連載の初回の記事、タイトルには大きな期待?を感じて読み始めたのですが、
どうやらそうでもなさそうな内容が展開されていました。
新年を待たずに合格を決める「年内入試」が主流になり、受験生の3分の2が第1志望の大学に進む――。受験地獄といわれた入試環境が18歳人口の減少で激変し、偏差値で大学が序列化される時代が終わろうとしている。人材育成の新たな道筋が見えぬまま漂流する入試と変化を阻む岩盤の実態を追う。
まず、大学入試の現状に関する統計データがグラフで登場。
いわゆる一般入試以外の形態が半分を超え、
メインストリームが変化する様子が見て取れます。
そして記事には大学が系列校を増やそうとする動きが書かれています。
明治大は2026年、中高一貫校の「日本学園」を系列校とするそうで、
この中高一貫校は老舗ながら、
近年は中学入学者が定員を下回っていたとのこと。
来年の中1が高校を出る2029年には、
卒業生の7割が明大に推薦で入る体制を目指すそうです。
従来型の一般選抜(一般入試)で10万人超が志願する明大。定員の7割は一般入試だが、他の有力大がその比率を下げる動きに危機感は強い。渡辺友亮副学長は「10年後に受験生が激減してから系列校化に動くのでは遅い」と話す。
一般入試が減っている背景はこういった囲い込みによるところもあるのですね。
タイトルにある「偏差値時代の終幕」の実情が、
激しい顧客争奪戦にあるのであれば、
そこで教育の本質が果たして維持されるのか、大いに疑問を感じます。
学校経営の永続をテーマに活動する弊社としては、
現状の規模を無理に維持しようとするのではなく、
あくまでも教育環境の維持発展を目的に据えながら、
将来に向けた規模の再設定をし、それに見合った募集活動を、
と思わずにはいられません。新たな競争の過熱にならないことを願います。
一方、送り出す中高の側はどうか。
高校も年内入試に活路を見いだす。横浜女学院中高(横浜市)は高3約100人に対し大学の指定校推薦の枠を400人分以上そろえる。銀行出身の井手雅彦副学院長が私大を回り、中堅大以上だけでも10年間で5倍に枠を増やした。「指定校推薦を増やすことが生徒募集の強みになる」
受験生も一発勝負の一般入試より、早めに合格できる年内入試を選ぶ。一般入試で複数校を受けるより推薦1校で決まれば受験費用も安く済む。
学校も生徒も安全志向、ということなのでしょうか。
中長期の進路を描き、それを叶えるための進学、
という観点が置き去りにならないことを願うばかりです。
さて、本来の入試改革は目的を異にしていたはず。
記事にも、そのいきさつとして
「日本社会が成熟し、欧米のお手本に頼れない時代には、
正解があるかどうかも分からない問題に取り組む力が重要になり、
思考力や学習への意欲を多面的に評価する入試への転換が
求められるようになった」とあります。
ところが、現実は総合型の選抜試験では新たな課題が浮上。
有力私大幹部は「総合型の受験生が増えるにつれて丁寧な選考ができなくなり、学力不足の学生が増えた」と明かす。21年のベネッセ教育総合研究所の調べでは40%の学生は入学後に高校段階の補習を受けていた。
偏差値輪切り型の価値観は早くに脱却したいものです。
一方で、本当に必要な学びを実現し、志す進路を実現するための
教育機関の存在は不可欠です。
ものさしを増やす努力とともに、学校経営を安定的に行うための
収支構造について、改めて考えてみたいものです。
(文責:吉田)