遠隔授業の話題が続いてしまいますがご容赦ください。
通常授業がままならない状況だからこそ、
学習履歴の記録と保存に焦点を当てていただきたいのです。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
記事は情報工学を専門にされている九州大学の安浦寛人副学長による提言です。
今春から多くの大学、学校では施設の閉鎖が続き、
遠隔授業を余儀なくされているケースが多くなっています。
当初はその円滑な実施と内容充実が最優先になりますが、
この機に学習履歴データを収集・活用する仕組みを整えることが重要、
との指摘は私も強く共感するところです。
遠隔授業は教育のデジタル化の第一歩である。そこでは教育と学習のプロセスが自動的に記録される。具体的には授業の録画や小テストの成績、課題への対応、学生との質疑の記録、教材へのアクセス記録などだ。
これらは客観的なデジタル教育データとして容易に収集、解析、活用できる。従来の対面授業との大きな違いである。
上の表にまとめられている通り、教育と学習の履歴が記録されることで、
多方面にそのデータが活用できます。
生徒は学びの足跡を確認することで、学び方を変えたり、
学習プランを作ったりすることができます。
教員は教授法や教材を改善し、それを実践することで
生徒の学習行動の変化を検証できます。
効果はこれらにとどまりません。
学校は、客観的な教育効果のデータを得られ、
同時に教員の教育力の評価、あるいはカリキュラムの改定にも生かせます。
そしてそれらがビッグデータになれば、
国家レベル、世界レベルでの教育施策や環境整備にも活用できるのです。
注意すべきはやはり個人情報の管理でしょう。
データ活用に当たっては学生のプライバシー保護が重要だ。九州大学ではコロナ禍による遠隔授業の実施に際し、緊急措置として、教育目的の学内利用に限ってデータの収集を組織的に行うことを認めた。
恒久的なデータ利用のガイドラインを策定する作業も進めている。本人の特定ができないように匿名化されたデータを他大学の教員や研究者も利用できるようにしたい。プライバシー保護の手法や自分のデータ提供を拒む権利を学生に保証する手段(オプトアウト)などを検討中だ。
学習履歴の記録についてはまだまだスタート段階なのかもしれません。
しかし、ひとりひとりの歩みが記録され、適切に活用されれば、
事実誤認による不当な評価を受けるリスクも小さくなるでしょう。
就職活動などでも説得力のある自己開示ができそうな気がします。
デジタルツールが教育現場に導入されていく中で、
学習履歴をどう記録し、どう活用するかということが
深く研究されていくことを願っています。
(文責:吉田)