寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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整理解雇、下がるハードル

裁判所における判断基準に少々変化がみられるようです。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

企業による従業員の整理解雇について、裁判所が認めるハードルが下がる兆しが出ている。今年に入り最高裁の決定など、経営判断による解雇を容認する司法判断が続いた。半世紀近く定着していた「整理解雇の4要件」が柔軟に運用され、人員減の必要性や解雇回避の努力などを総合的に評価する傾向が出ている。「労働者に不利」との声もあるが、当面は各社の事情で司法判断が割れる状況が続きそうだ。

 

まず最初に記事で紹介されているのが、今年9月30日の判例です。

ユナイテッド航空グループの子会社で働いていた4人の元客室乗務員が、

整理解雇の無効を求めて争っていた裁判で、最高裁は原告側の上告を棄却。

この裁判では、4人の従業員の解雇の必要性について、

ユナイテッド航空グループ全体の業績と照らして判断するか、

従業員が直接所属していたコンチネンタル・ミクロネシア航空の状況で

判断するかが焦点となりましたが、

東京高裁は「子会社は独立して業務を遂行している」とし、

「グループ全体で客室乗務の人員を再配置すれば削減の必要はない」

との従業員側の主張は通りませんでした。

判例では、経営判断による人員削減を認め、

「高コスト要因になっていた成田ベース閉鎖と客室乗務員の解雇は、

 経営判断として合理的かつ相当」と結論付けています。

そして最高裁による上告棄却で、この司法判断が維持されました。

 

これまで裁判の判断基準とされてきた「整理解雇4要件」ですが、

昨今少し変化してきているとのこと。

下の表に要点がまとめられていますので引用させていただきます。

 

 

記事で採り上げられているもう一つの判例が、

今年4月の東京地裁におけるクレディ・スイス証券の元部長の解雇事案です。

元部長は初年度の年俸1850万円で同社に移籍しましたが、

業績不振による部の廃止で2019年に解雇。

これを不当として地位確認を求める裁判を起こしたところ、

東京地裁は「商品販売開始から4年過ぎても成果が上がらない事業への予算投入を、

相当でないとする経営判断は不合理といえない」と判断し、

人員削減の必要性と解雇を認めました。

こちらは現在控訴審が進行中とのことです。

 

そして、ユナイテッド航空クレディ・スイス証券の両裁判には

共通点がある、と記事は指摘しています。

それは、裁判所が「4要件」のうち、

「人員削減の必要性」と「解雇回避努力」の2つの組み合わせを重視した、

という点です。

ユナイテッド航空子会社は、年収維持を前提に地上職への異動を提案。さらに通常の退職金に基本給の20カ月分を加え、1人1544万~1824万円を払う退職条件を提示した。クレディ・スイス証券は、元部長に割増退職金を含め1885万円強の退職パッケージや、社内公募で異動できる可能性がある複数のポストを示すなどしていた。

両ケースとも、従業員側は会社提案を受け入れなかったが、裁判所は「会社は解雇回避のため努力を尽くした」(クレディ・スイス証券判決)などと認定した。

 

さて、貴校園ではこのような状況をどう捉えられますでしょうか。

仮に解雇要件が緩和されたとしても、経営上、

解雇を安易に位置づけることは避けねばなりません。

ただ、判例からの気づきの一つとして、

仮に人員の余剰が発生し、経営の永続を脅かす事態になった際にも、

学内での異動によってその力を発揮していただくことができないか、

さらには退職を選択肢に含める場合には最大限の配慮ができているか、

といったことをきちんと検討することが重要であることを改めて覚えます。

 

今後、私学においては学校規模の縮小を余儀なくされるケースも

決して少なくないだろうと推察いたします。

できるだけ長期の計画を早めに立案し、無理のない雇用の調整を

時間をかけて実施できるようにご準備いただければと思います。

 

(文責:吉田)

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