弊社経営情報誌連載記事、「給与制度改正の手順と心得」のご紹介です。
第2回は「賃金の決定要素を考察する」。
ご関心がありましたら是非どうぞ。
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給与制度、とひと口に言っても、その中身は様々です。前号でも触れましたが、「何に対して給与を支払いたいか」という問いに対する答えが給与制度ですので、賃金の決定要素にもいろいろあって当然だとも言えます。
ただ、いろいろな要素があるからこそ、貴校園でどんな基準で給与が決まるのか、というのは経営方針と密接につながる大変重要なテーマなのです。例えば、年齢に比例して給与が高くなるような制度が運用されている場合、「この組織は年齢を重視するのだ」という、教職員への強烈なメッセージとなります。仮にこの学校が「年齢を問わず人材登用する」という方針を持っていたとしても、どちらのメッセージがより強く伝わるかと言えば、処遇に直接影響する前者のほうになってしまいます。こうなってしまうと経営のロスは計り知れません。賃金の決定要素は、メッセージ性の強い経営方針であることを忘れないでください。
貴校園が大切にしたいと思っている意識や行動を指針として言語化し、それが賃金の決定要素として採用されていれば、貴校園の建学の精神-教育理念-経営方針-給与制度がひとつのまっすぐな線でつながります。こうなることで給与制度は単体としての効用を超えて、経営に対する安心感や納得感をもたらしてくれることでしょう。給与制度のコンセプトが明確になった後は、賃金の決定要素に関してご検討いただくことをお勧めいたします。
さて、賃金の決定要素にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものを以下にまとめてみましたので、ご検討の際の参考になさってください。
それぞれの項目が指す意味は概ねお分かりいただけることでしょう。厳密な定義はいったん横に置いて、貴校園としてどの要素を重視したいか、どの要素の影響度を上げたい(あるいは下げたい)か、といったことをまずはご検討いただくのが良いと思います。
ここで気をつけていただきたいのは、これらのうち1つだけを選んで制度設計する、というのではなく、何を重視するかを整理することが重要だということです。
例えば「年功序列は日本の特徴であり、海外では年齢という要素が完全に排除されている」と思っている方が多いかもしれませんが、25歳のAさんと40歳のBさんでは、原則としてBさんのほうが給与が多い、というのは海外でも同じでしょう。ただ、年齢ごとの給与差が大きすぎはしないか、つまり年齢以外の要素の影響が小さすぎるのではないか、という点で、日本は年功序列型賃金制度が主流、と言われるのでしょう。貴校園の給与制度が年齢に偏りすぎてはいないか、という点を考えてみるだけでも、望ましい制度設計が見えてくるかもしれませんよ。
なお、昨今は同一労働同一賃金の流れや、新型コロナウィルス感染症予防のため一気に普及した在宅勤務やリモートワークにより、職務給、すなわち「どれだけの仕事をしたかによって賃金を決めるべきだ」という考え方が以前より強まったように感じます。私学における賃金の決定要素としても、職務という要素を重視したいという考えを持つ方は少なからずいらっしゃるようにも思います。さて貴校園の賃金の決定要素はどんなふうに整理できるでしょうか。
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(文責:吉田)