昨日に続いて同一労働同一賃金の話題です。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
昨日ご紹介した記事は、法改正のタイミングに合わせて
同一労働同一賃金に関する留意点を示す記事だったのに対し、
本日ご紹介するものは制度の不備について指摘する内容が
主となっております。
筆者はこのたびの法律について、
「内容面でも、政策の方向性でも問題がある」
としており、特に3つの要因を用いて説明しておられます。
まず第1に「趣旨も義務内容も明確でない」こと。
趣旨については不合理な処遇格差を解消するという理念自体は明確だが、格差があることが問題なのか、非正社員の労働条件が低いことが問題なのかがはっきりしない。前者なら正社員への手当廃止によっても問題は解決する。
また労使の自主的な判断を尊重したうえで、著しい格差のみ禁止する趣旨なのか、格差をつける場合は常に均衡のとれたものにせよという趣旨なのかも明確でない。
正社員の処遇を下げることによって目的を達するのはいけない、
というお達しも出ていましたよね、確か。
付けてもよい格差、という点についても、
何だかよく分からないところもありますしね。
契約形態による格差は下の図に示されている通り、
決して小さくはないのが現状です。
ではそのような差が不合理かどうか、という点について、
このたびの法律はどう規定しているのでしょうか。
法律が不合理性の判断要素として挙げたのは「職務の内容」「人材活用の範囲」と、内容が特定できない「その他の事情」だ。これではどのような場合に不合理となるかがはっきりしない。行政は指針を出し、不合理性の内容の明確化に努めているが、不合理である場合と不合理でない場合の典型例を示すにとどまる。
例えば特殊作業手当のような趣旨の明確な手当を非正社員にだけ支給しないことは不合理だと示せても、基本給、賞与、退職金など複数の趣旨が混在する賃金の格差については不合理性の基準を示せないでいる。
例えば学校法人で実際の制度設計をしようとする際、
上で示されたような点は確かに悩ましいと感じるかもしれません。
制度はまだまだ不十分なのかもしれませんね。
そして第2の問題点は、昨日のブログでも少し指摘させていただいた点です。
正社員と非正社員の賃金格差の論拠として挙げられる同一労働同一賃金は、職種による産業横断的な賃金決定をするという社会基盤を前提として成立するものであり、そうした社会基盤がない日本には当てはまらない(中略)…日本型雇用システムは職種に関係のない非ジョブ型であり、採用も賃金も雇用の継続も職種を基本とするジョブ型社会の欧州とは根本的に異なるのだ。
同じ労働の価値に対して同じ賃金を、という考え方は、
そもそも賃金を労働価値に対する対価として位置づける職務給だからこそ
成立するのであって、年齢給ではそもそもその前提がありませんから、
ここで論理矛盾がどうしても出てくるんですよね。
最後に、3つ目の問題点をご紹介して、本日のブログを締めましょう。
貴校園の未来の賃金制度を考えるうえで、本日の内容もまた、
参考にしていただける観点があるのではないでしょうか。
不合理な格差を是正するには、まずは正社員と非正社員の格差が日本型雇用システムの構造に起因するという認識を持つことが必要だ。不合理な格差の禁止は構造的な原因にメスを入れるものではないので、根本的な解決につながらない。これが3つ目の問題だ。
(文責:吉田)