不登校の子どもたちが増えているようですが、
その対応についてヒントになりそうな記事です。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
この記事は横浜市立鴨居中学校・斎藤浩司校長の寄稿です。
横浜は文明開化の発祥の地でもあり、多くの方が開放的なイメージを持つだろう。実際、横浜の教育には常に新しい風が吹いている。私が校長を務める横浜市立鴨居中学校(生徒数521人)は進化に前向きな教育風土を基盤に、情報通信技術(ICT)を積極活用することで新しい不登校対策の実現に取り組んだ。
まずは記事の中に掲載されていた、不登校生の数を示したグラフを
確認しておきましょう。足元でかなり増えている印象があります。
記事に登場する中学校は、現校長着任時、すでにICT活用が比較的進んでいた、
とのことですが、それも自然にそうなったということではなく、
いろいろと仕掛けがあったのだろうと思います。
記事にはこんなことが書かれています。
まず教職員の意識変革に取り組み、民間の力を借りて数々の研修を行った。一例を挙げれば計5回の企業訪問がある。初回は若手を含む6人が東京のグーグル日本法人を訪ね、社員の話を聞いて大いに刺激を受けた。校内ではWi-Fi環境の整備やグループウエアの導入を進めた。
翌19年、課題だった不登校対策に着手した。着任以前は30人を超えていた不登校生徒は減少傾向にあったが、登校しても教室に入れない生徒や在宅で学習している生徒へのきめ細かな支援ができておらず、何とかしたいと考えた。その頃、市教育委員会から企業が開発したICT学習教材を紹介され、実証することになった。この教材との出合いが、本校の不登校対策を劇的に変えた。
利用されたのは生徒が自学自習するオンライン学習システムで、
当時は画期的だったかもしれませんが、
今となればそれほど珍しくないもののように思われます。
そのシステムを活用し、一時的に在籍学級を離れて、
落ち着いた環境で学習するためのスペース=和(なごみ)ルームで
学習するという流れを作られました。
当初、利用した生徒は3人。使い始めると前年度はほとんど登校できなかった生徒が毎日登校するようなった。ほかの生徒も熱心に取り組んでおり、有用性を実感した。
取り組みは開始後、デジタル技術と民間の力で教育を革新する経済産業省の「未来の教室」実証事業に採択され、「学校内オルタナティブ教育に関する実証」として本格化。より民間の力を取り入れることになった。
和ルームには当初、教員が輪番で詰めていたそうですが、
週2日は民間の支援員が常駐する形にし、
教材会社の支援を得て、生徒一人ひとりの学習計画を作成。
2020年度からは、NPO法人から派遣を受けた民間支援員による
不登校生徒への家庭訪問(アウトリーチ)も開始しておられます。
こうした校内と校外両方での学習支援は、デジタル教材と民間人材の活用がなければ不可能だった。デジタル教材とネットワークがあれば、生徒がどこにいても学習状況を把握し、計画的に指導することができる。常駐の講師は生徒と人間関係を築き、安心感を与える効果が大きい。
いかがでしょうか。
記事に登場する中学は公立校ですが、
私学でも参考になる着眼点がたくさんあるように感じます。
デジタル教材はすでに一般的になってきていますが、
その活用が発展的に図られているかと言えば…どうでしょうか。
そして民間企業のノウハウの活用についても、
ともすれば閉じがちな学校組織の中で消極的に考えてしまう風土が
妨げになってはいないでしょうか。
最後に、斎藤校長のこの言葉で締めたいと思います。
ICTの活用は目的ではなく選択肢の一つだ。学校にはカリキュラムマネジメントをはじめ特別支援教育、不登校支援など様々な課題がある。
校長をはじめとする学校管理職は取り組みのアイデアや選択肢を増やすため、民間、地域、保護者を含む志を持つ人々が集い、共に考え、協働する仕組みを学校の日常活動に取り入れる努力をすべきだ。そして、学校が何を目指すかを明確にしたビジョンを持つことが重要である。
ビジョンの大切さ、そしてそれを実現しようとする強い意志が、
管理職には求められるような気がします。
(文責:吉田)