寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

未踏のデジタル学校改革

コロナ禍で一気に進んだ学校のデジタル化。

ただ、そう言えるのはそれまでがあまりにもお粗末だったから?

そんな内容の記事が掲載されていました。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

学校教育のデジタル化を掲げる「GIGAスクール」構想。もともとその目玉にタブレット配布はあった。前倒しになったのは、新型コロナウイルスによる昨春の一斉休校で、海外ではリモート授業が行われているのに国内でできないという現実に直面したからだ。政府は補正予算で計3千億円の端末代を計上。4月からは高校にも配備される。「環境整備はあとから追いかける」(文部科学省関係者)にわか仕込みの政策である。

 

記事の書き出しから辛辣な表現になっていますが、

私たちは自校園、あるいは目の前の状況だけを見て

「かつてない進歩だ」と評価しがちなのに対し、

本記事の筆者が比較しているのは海外の状況です。

 

日本の立ち遅れは深刻だ。経済協力開発機構OECD)の調査では学校の授業でICT(情報通信技術)を活用する度合いは最下位にある。

学校へのICT導入に30年以上携わってきた内田洋行の大久保昇社長は2000年以降、学校のデジタル化で日本がシンガポールや韓国に追い抜かれるさまを目撃してきた。「学校だけではない。日本はついこの間まで経団連会長の机にもパソコンがなかった。あわてないで今こそ着実に進めるべきときだ」と話す。

 

経団連会長の机にパソコンがなかった、というコメントに失笑したのですが、

なるほど、学校だけでなく、社会そのものが

デジタル化に後ろ向きだったのかもしれませんね。

 

今後、学校のデジタル化をさらに進めるための課題を、

この記事は整理してくれています。

私学経営にも大きく関わる点かと思いますので、

以下見ておくことにしましょう。

 

まず1つめ。通信環境の課題です。

かなりの教室の通信環境がクラウドを活用できる水準に達していない。文科省の昨年3月の調査によるとWi-Fiが使える普通教室は48%にすぎない。すでにタブレット学習を始めている学校もあるが、子どもたちがWi-Fiにつなぐと回線が容量を超えて画面がフリーズする例が相次いでいる。

 

私学の場合はさすがにこれよりも高い数字になるのだろうと思うのですが、

それでも通信環境が脆弱というケースは私も見聞きしています。

施設面の問題もあるため簡単にはいかないという学校も多いでしょう。

下のグラフを見ても、まだまだデジタル機器の利用時間は短いのが現実。

通信環境整備が今後の大きな課題であることは間違いなさそうです。

 

 

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2つ目はデジタル人材が学校現場に足りないこと。

本記事の筆者はこんな経験をされたそうです。

筆者が経験したのはある教委とのメールのやり取りがすべてBCCで返送されてきたことだ。BCCは通常、送り先には知られたくない相手に同報する際に使う。そうではなく、自動的にすべてのメールをBCCにすることで、誤って別の人に同報してもアドレスが流出しないようにしているのだ。リスクは減ってもメールのマナーは育たない。

情報教育が専門で教委で働いた経験もある中川一史放送大教授は「何かが起きる前に『臭いものに蓋』の風潮がないとはいえない。それならば外部とつながらない環境で失敗する経験を積ませ、そのプロセスを学校で段階的に共有していくことが子どもの学びにつながる」と話す。

 

危うきに近寄らないだけでなく、何が危ういのかを知ることこそ学び、

とも言えるでしょう。

それをしっかり教えられる人材が学校には必要です。

 

最後の3つ目の課題は「ゴールの設定」。

このブログでも何度か書かせていただいていますが、

デジタル化は手段であって目的ではありません。

この記事にもこう書かれています。

端末の配布は、学校改革の始まりであって終着点ではない。デジタル化で得られる学習データを教育の高度化に生かす必要がある。

ゆとり教育で、東大生の学力は低下傾向が見受けられた。だが別の能力が上がっているかもしれない。学習データがあればそれがわかる。授業中に子どもがつまずいたところがわかり、即座に直すこともできるようになる」

東大生産技術研究所の退職記念講演で、喜連川優同大特別教授(国立情報学研究所長)はデータを活用した教育改革についてこう話した。

 

さてGIGAスクール構想は今後どんなふうに

デジタル化を進めることになるのでしょうか。

ハードの普及の先には、「確かな内容」が求められること必至です。

ぜひ貴校園でもソフトの充実に向けてお取組を深めていただければと思います。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp