日経新聞の記事をご紹介することが多いこのブログですが、
採り上げることが比較的少ないのが社説。
が、今回は日経新聞の社説で、気になる内容を見つけました。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
以前のこのブログでも、国立大学の学校債発行要件緩和のニュースは
採り上げたことがあります。
限定的に取り扱われてきた学校債が、各大学の独自財源のひとつとして、
経営判断による起債が可能になったというこの制度変更。
債券発行には市場、投資家からの信頼が不可欠ですが、
社説にはこんな指摘がなされています。
市場の信頼を得るには、課題もある。大学の組織や経営を規定する国立大学法人法や大学設置基準には時代にそぐわない制度が多い。例えば情報開示だ。
投資家が大学のホームページにある財務諸表を見ても、経営実態を把握しにくい。国立大の会計基準では、損益計算書に減価償却費や職員の退職給付引当金などが反映されていない。国が資金の面倒を見るという建前があるからだ。
しかし、財政難でその約束は揺らいでいる。企業会計原則による財務諸表の作成や、教育、研究、付属病院など部門ごとの収支の開示は投資家に対する責務だ。
企業会計に馴染んだ投資家にとっては公会計そのものが読みにくいところ、
国立大の会計基準はなおのこと実態が分かりにくい、
というのはその通りだと感じます。
このような状況の中で果たして学校債が投資対象になるのか、
今後注意深く見守っていきたいと思います。
そしてこのことは、学校法人会計基準についても指摘できます。
特に「基本金」の存在は、一般の方々からは非常に分かりにくく、
むしろ経営実態を歪めてしまっていないかと心配になります。
もしそのようなことが原因で、寄付や学校債への協力が得にくいとしたら…
少し考えすぎかもしれませんが、
学校に子どもを預けるご家庭からすれば、
その経営の安定性はもちろん、お金の使われ方や収入状況など、
気にならないはずはないでしょう。
今回の記事はあくまでも大学債をめぐるものではありますが、
私学経営においても重要な観点かつ指摘ではないかと感じた次第です。
最後に、記事が鳴らしている警告をご紹介しておくことといたします。
最悪のシナリオは、国立大が自前の収入で償還原資を確保できない事態だ。大学の研究成果を活用した起業支援など、社会貢献の対価を得やすくする仕組みや、優秀な人材を処遇する人事・報酬制度も併せて検討すべきだ。
大学が持つ知的財産の使用料としてベンチャー企業の株式や新株引受権を得て、株式公開後に売却するケースも想定される。大学が株式の議決権を行使することは妥当なのか、など様々な論点がある。透明性の高いルールが必要だ。
国の制度そのものを変えることはなかなか難しいところですが、
関係者が等しく理解できる、そんな情報提供を心がけたいものです。
(文責:吉田)