先日、地方教育費に関する調査結果が公表されました。
現段階では中間報告ですが、大まかな傾向はここで知ることができます。
平成28年度地方教育費調査の中間報告について:文部科学省
地方教育費にはその内訳として「学校教育費」「社会教育費」「教育行政費」の3種類がありますが、このうち「学校教育費」について見ておくことにしましょう。
ちなみに、「学校教育費」の定義は以下の通りです。
地方公共団体が公立の幼稚園,小学校,中学校,特別支援学校,高等学校(全日制・定時制・通信制課程),中等教育学校,専修学校,各種学校及び高等専門学校における学校教育活動のために支出した経費
お分かりの通り、公立学校の数値、ということですね。
ですが、私の勝手な感想としては、この数値、
私学においても参考になる傾向が見て取れる、というのが
今回採り上げた理由です。
まずは総額の傾向から。
平成27年度に支出された学校教育費は,13兆6,263億円。前年度と比べて1,151億円(0.9%)増加した。
子どもの数が減っている中、金額は増加しています。
そしてここにはこんな注釈も付いていました。
※ 今回調査より「幼保連携型認定こども園」が調査対象に追加された。幼保連携型認定こども園の学校教育費は551億円であり,また,幼稚園は2,079億円(前年度比9.6%減少)となった。これは主に,一定数の幼稚園が幼保連携型認定こども園に移行したことによるもの。
また,幼稚園及び幼保連携型認定こども園を除いた全校種の学校教育費は,13兆3,633億円(前年度比0.6%増加)であり,幼保連携型認定こども園に係る影響を除いてもなお学校教育費は増加した結果と言える。
なるほど、認定こども園の影響ではなく、純粋に増加した、
ということなんですね。
ではその原因は何なんでしょうか。その答えも書かれていました。
学校教育費を財源別に見ると,地方債を財源とする学校教育費支出の額は過去最高となっている。これは主に,教職員の退職手当に係る地方債の起債が増加したためと考えられる。
学校教育費を支出項目別に見ると,消費的支出(人件費,教育活動費など,経常的に支出される経費)は,前年度と比べて1,588億円(1.5%)増加した。
一方,資本的支出(建築費,設備・備品費など,将来に残るもの(資本の形成)に対する支出)は,前年度から689億円(3.8%)減少した。資本的支出の減少は4年ぶり。
いかがでしょうか。
こうやって見てみると、施設等への投資が減少している一方で、
退職金がかさんでいることが推測されます。
ということで、人件費について分析した以下の記述も見ておきましょう。
■ 学校教育費のうち最大の割合(69.1%)を占める人件費の状況を見ると,前年度と比べて297億円(0.3%)増加した(ただし,これは幼保連携型認定こども園が調査対象に追加された影響が大きい)。
■ 学校種別に見た場合,小学校は前年度比154億円(0.4%)減少,中学校は同30億円(0.1%)増加,高等学校(全日制)は同5億円増加でほぼ横ばいと,いずれも大きな変動はない。
■ 各学校種の退職手当の状況を見ても,前年度から大きな変動はないが,近年の教員の大量退職を背景として,依然高水準で推移している。
人件費総額としてはそれほど増えていないようですね。
とすると、先ほどの記述と併せ考えた場合、
「教育活動に使われるお金」が増加している
ということが言えそうです。
事実、統計を確認してみますと、
教育活動費:平成27年度 3,236億円⇒平成28年度 3,506億円(8.3%増)
補助活動費:同 5,548億円⇒6,599億円(18.9%増)
となっており、確かにそのような傾向がみられます。
ちなみに、資本的支出(投資)の減少についてもこんなコメントがなされています。
4年ぶりに資本的支出が減少したのは,建築費の減少が原因。建築費は前年度と比べて555億円(3.6%)減少した。
これは特に,小・中学校における建築費減少によるもの(小学校は前年度比3.6%減、中学校は同5.2%減)。公立学校施設の耐震化完了目標(平成27年度)を迎え,公立小・中学校の耐震化率が同年度終了時に98.1%に達するなど多くの地域で一定の目処に至ったため,支出額は減少したものと考えられる。
■ しかし,依然として高等学校では建築費支出が増加している(前年度比5.3%増)ことや,小・中学校でも急激な減少にはなっていないことから,引き続き学校施設等の耐震化や老朽化に向けた取組は進んでいることがうかがえる。
公立校は耐震化について概ね完了、といった状況のようです。
さて私学。
退職金の増加、教育関連費用の増加、耐震化の進捗…
御校でも気になる話題がここに現れているのではないでしょうか。
公立校が公費でこれらのことを着実に進める中で、
私学は自らの力で何とかしていかねばなりません。
経営のご苦労はいかばかりか、と思いつつ、
その経営の責務を担っていただき、将来にわたって
御校の存在感がますます大きくなることを願っております。
(文責:吉田)
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