以前に落雷事故をめぐっても部活動の危険性について考えてみましたが、
今回は雪崩事故の判例から改めて考えてみます。
まずは先日の裁判による判決をふりかえっておきましょう。
日経新聞より。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
2017年に栃木県那須町で登山講習中の高校山岳部員ら8人が亡くなった雪崩事故で、業務上過失致死傷罪に問われた引率教諭ら3人の判決公判が(5月)30日、宇都宮地裁であった。滝岡俊文裁判長は「相当に重い不注意による人災」などとして、3人に禁錮2年(求刑禁錮4年)の実刑判決を言い渡した。
記事では、裁判上の争点を以下の表で整理してありました。
この判決ではかなり厳しい言葉が多くみられ、
雪崩発生の危険性を予見することは十分に可能だったと認定したうえで、
引率教諭ら3名が事故を回避する措置を怠ったと強調、
栃木県内では講習会が慣例として実施されていたことをもって
「正常性バイアスが影響した可能性がある」とも言及。
「重大な危険を看過し、相当に緊張感を欠いたずさんな状況の下で
漫然と(訓練が)実施されるに至った」と指弾し、量刑についても
「雪崩発生の確実な予測が困難であることを踏まえても、
相当に重い不注意による人災だった」として、
刑の執行を猶予する特段の事情がないと結論づけています。
そしてこの記事の横には以下の記事も付いていました。
同じく日経新聞より。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
今回のブログで採り上げた上記那須雪崩事故では
高校山岳部の生徒7人が命を落としました。
また先日のブログで採り上げた4月の宮崎市内でサッカー練習試合では
高校生18人が落雷で搬送され、うち1人が意識不明となりました。
日本スポーツ振興センター(JSC)によりますと、
2019年度に中学・高校・高等専門学校で起きた運動部活動中の事故は
実に約29万件に上っています。
そのうち重傷事故は約10万7000件で4割弱を占めています。
JSCでは2022年に事故防止パンフレットを作成し、
事故予防のポイントを紹介しています。
また、スポーツ庁も2024年2月、準備運動の徹底や
用具を日常的に点検することなどを求めています。
しかしながら、やはり最大の問題は「意識と行動」にあると言えそうです。
学校現場の対応には差がある。日本体育大の南部さおり教授(スポーツ危機管理学)は「自発的に事前に対策を練る指導者もいれば何も準備をしない人もいる。各自治体が安全講習の受講後のテストに合格しないと部活指導に携われないなどの仕組みを作ることが重要だ」と指摘する。
欧米では資格を持った指導者が報酬を得て活動しているとして「日本も部活は『無償』という意識を変えて予算を投入すれば事故が起きにくい質の高い部活指導が広まるのではないか」と話した。
日本の部活動は曲がり角に来ているはずです。
これまでがどうであったか、よりも、将来に向けてどうするのがよいのか、
を軸に、真剣にあり方を議論する必要があると感じます。
公立校も私立校も、同じ土俵で競技する可能性があるのが部活動ですから、
その垣根を越えて、少なくとも自治体単位で「あるべき姿」を
模索していかねばならないと思うのですがいかがでしょうか。
(文責:吉田)