労務関連の判決が続けて出てきたのが先月のこと。
今一度、ふりかえっておきましょう。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
定年後再雇用者の基本給減額の是非が争われた訴訟の判決で、名古屋地裁は(10月)28日、同じ仕事なのに基本給が定年前の6割を下回るのは不合理な待遇格差に当たると認め、名古屋自動車学校(名古屋市)に未払い賃金分の支払いを命じた。高齢者雇用が推進される中、他企業の賃金制度に影響を与える可能性がある。
再雇用者の基本給について、企業に正社員との格差是正を求める判決は
これが全国初、と記事は報じています。
再雇用は私学においても一般的なしくみになっていますので、
内容をしっかり押さえておく必要があるでしょう。
この裁判は自動車学校の教員2名が訴えを起こしました。
2013~14年に定年を迎えた後に再雇用を希望し、
65歳まで嘱託職員として技能講習や高齢者教習を担当したそうですが、
仕事の内容や責任の範囲は定年前と変わらないにもかかわらず、
基本給は定年前の月額16万~18万円から7万~8万円ほどに下がったそうです。
井上泰人裁判長は「年功的性格があることから将来の増額に備えて金額が抑制される若い正社員の基本給すら下回っており、生活保障の観点からも看過しがたい水準に達している」と述べた。
再雇用の際に賃金に関する労使の合意がなかった点も挙げ、定年前の基本給の6割を下回るのは不合理な待遇格差に当たると結論づけた。
嘱託職員への一時金が正社員の賞与を大幅に下回ることや、教習の時間数に応じた手当などの減額についても不合理と認め、計約625万円の支払いを命じた。
記事を読むだけでもいろいろと論点が含まれているように感じますが、
・若い正社員の基本給との比較
・生活保障の観点からの賃金水準
・再雇用時の賃金の労使合意
・定年前の基本給の6割未満
・一時金の状況
・勤務実態に応じた手当の状況
といったことが今回の判断の要素になったことが分かります。
そして、ここまでに出た裁判の結果をまとめた記事も掲載されました。
そちらもご紹介しておきましょう。
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記事に掲載された以下のまとめの表で、結論を確認しておきましょう。
ただ、結論だけが重要なのではなく、どんな事実が認定され、
それに対して裁判所がどう判断したのか、
その中身をきちんと押さえておくことが重要です。
以前のこのブログでも採り上げておりますので、
今一度内容の確認をしておかれることをお勧めいたします。
今回の判決に対して、お2人の専門家のコメントが掲載されていましたので、
そちらも参考までに引用させていただきます。
東京大の水町勇一郎教授(労働法)は「仕事内容が変わらなければ減額は6割まで、という目安を示した点で画期的だ。正社員の基本給が相対的に高い企業の中には再雇用者の基本給を定年前の4~5割にしている例もあり、大企業も含め影響が出るだろう」と話す。
労務管理に詳しい田村裕一郎弁護士は、基本給を6割にしても不合理ではないとした別の地裁判決を踏まえ、「他の裁判例との整合性なども意識した判決だろう。運送業をはじめ一般的に定年前後で仕事内容が変わりにくい業界への影響が大きい」と指摘。「企業は基本給や賞与を引き下げる場合、仕事内容や責任範囲の変化などを踏まえ、バランスの取れた金額設定をすべきだ」とした。
貴校園の労務制度について確認すべき点がないか、
ぜひチェックしておきましょう。
(文責:吉田)