リーダーの役割について改めて考えてみます。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
今回の記事は、文部科学省の教員勤務実態調査に関わった
東北大学・青木栄一教授によるものです。
22年度の調査は携わって3回目にして初めて長時間労働の改善が強く推測できる結果となった。1日の勤務時間に当たる在校等時間(速報値)は16年度比で校長、副校長・教頭、教諭の全職種で減少。教諭では平日は小中ともに約30分、休日は小学校で約30分、中学校では約1時間減った。
これは過去3回の調査に携わってきた筆者ならではのご感想、
といえるかもしれません。
平均でこれだけ減ったのは大きな改善であり、
特に部活動休養日を設定した効果は如実に表れた、と筆者は続けます。
しかし、です。私はまるで異なる感想を持っています。
つまり、直近の調査はまさにコロナ禍中が対象期間となっており、
その影響を強く受けたことが勤務時間の減少につながったのだ、と。
もちろん、その活動態様がその後も継続されるのであれば
それもひとつの大きな成果と言えますが、
そうはなっていないのが現実、ではないでしょうか。
筆者もこう指摘しています。
注意しなければならないこともある。中学教諭全体の8月平日の部活動は1日平均2時間だ。夏休み中にこれだけ部活に従事しているようだと、給与が何に対して支払われているかが問題になる。学期中の休養日の設定だけで満足してはいけない。縮小した行事がコロナ禍の終息で復活するかもしれず、改善のみられた業務でも気を抜くことはできない。新型コロナウイルス禍での行事の縮小なども改善につながった可能性がある。
長時間労働がなかなか減らない学校現場。
その根底に何があるのか、筆者は
「教員文化や学校の職場風土にメスを入れる必要がある」
とも指摘しており、記事では筆者が携わった
教員の気質に関するパイロット(試行)的調査の結果も
紹介されています。
この調査で明らかになったのは教員の極めて強い平等意識である。加えて、学校管理職は過酷な長時間労働を耐えて勤続年数を重ねた「サバイバー」だ。
公立学校は女性管理職比率の低さが問題になる業界だが、当然である。男性並みに働けない限り管理職に登用されることはない。調査では管理職の方が一般教員よりもメンタルヘルスが良好でストレス耐性が高く、仕事の進め方が上手であることが分かった。
記事ではここから先、重要な示唆が多くあります。
いくつか箇条書きでご紹介します。
- 病気休職者に占める精神疾患を原因とする教員の割合は若手ほど高いが、これは若手のストレス耐性の低さが問題なのではなく、管理職は耐性の低い教員がいても仕事ができる職場をつくらないといけない
- 全職種の中で最も労働時間が長い教頭・副校長が相互監視の場である大部屋(職員室)にいて、平等主義が強い教員同士が集まって仕事をしている中では同調圧力によって巻き込まれ型残業が生まれ、効率性やタイムパフォーマンス(タイパ)は考慮されない
- 長時間労働は労働者の心身ひいては生命を損なうリスクがあり、学校においては児童生徒指導の質が下がり、ミスが発生するのみならず、授業準備がおろそかになったり、ささいなことで生徒に当たり散らすようになる危険もある
長く働くほど頑張っている、という価値観は
いまだにどの職場にもあると思いますが、
学校現場は特にそのような傾向が強い職場のひとつ、
と言えるかもしれません。
そのような中で、管理職の役割は非常に大きいと考えられます。
公立校の場合、それは首長や教育長を含むことになるのは必然ですが、
私学の場合にはやはり理事長や校長の意識や言動が重要だと感じます。
貴校園の職場環境が改善していくことを願ってやみません。
(文責:吉田)