細かいニーズを取り込んでお客様の信頼を獲得する。
その結果、事業規模が拡大し、業務量も拡大する。
それこそが是、とされてきた商売の世界にも転換点が訪れています。
朝日新聞より。
ヤマト、時間帯指定の配達を見直しへ 運転手の負担軽減:朝日新聞デジタル
ヤマトは、荷物の受け取りを指定できる時間帯として、午前中▽正午~午後2時▽午後2~4時▽午後4~6時▽午後6~8時▽午後8~9時の六つを用意している。配達が特定の時間帯に集中すると、ドライバーの負担は重くなるため、指定が比較的少ない正午~午後2時と、時間帯の幅が短く多忙になりがちな午後8~9時の二つの時間帯の指定をとりやめ、正午~午後4時のように時間帯の幅を広げることを検討している。ドライバーの負担軽減につなげる狙いだ。
利用する側からすると便利な時間帯指定の配達。
一方で、細かなニーズに対応すると運営側のコストが上昇するのは火を見るよりも明らかです。
本来ならそれを価格に転嫁するべきですが、現代は「低価格礼賛」の世の中ですから、価格を高く設定することは本当に勇気がいることです。
そこでしわ寄せが行ってしまうのが人件費。
特に残業代は経営陣にとって「払いたくないコスト」の代表例ですから、それを縮減しようという気持ちはどの経営者にも働くものでしょう。
となれば、本来は「残業そのものを減らす取組」をすべきところですが、そうはならずに「残業代をカットする」という方法を選んでしまうことも、昨今ありがちな結論です。
同じく朝日新聞より。
ヤマト、サービス残業常態化 パンク寸前、疲弊する現場:朝日新聞デジタル
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先ごろから大きなテーマとなっている「長時間労働」への対応も、今回の決定に拍車をかけたのではないでしょうか。
サービス低下やむなし。
それよりもサービス提供者の環境整備を優先せねば。
人口減、しかも人手不足が深刻な日本社会においては、このようなケースがこれから多く発生するのではないでしょうか。
時代の転換点、のような気がしてなりません。
翻って学校はどうでしょうか。
やはり保護者のニーズは多様化し、その分だけ教職員の業務量は増えています。
一方で、これまでやってきた業務が減っているかと言えば決してそうではなく、業務量は「純増」状態が続いているのが昨今の状況でしょう。
授業料をはじめとする納付金を上げようにも市場がそれを許さないかもしれないとの心配に加え、学校の場合には売値の自由度も一般事業に比べるとはるかに低く、コストが上がったので売値に転嫁する、ということは簡単にはできません。
となると教職員の皆さんに頑張ってもらうしかない、とばかりに、増えた業務量を「何とかして頑張れ」という解決法に頼ることになれば…
先ほどと同じ原因が、先ほどと同じ結論に至るような気がしてなりません。
業務効率化のためには、忘れてはならない視点が2つある、と私は考えています。
1つは業務「遂行方法」の効率化。
担当している業務、遂行している業務が「今よりももっとスムーズにできないか」と工夫する、「やり方」の改善です。
同じ担当者が長いこと同じ業務に携わることが多い(≒異動が極端に少ない)私学においてはあまり進んでいないことですので、こちらで効率化は相当程度進むだろうと感じます。
ただし、これだけだと限界があるのもまた事実。
もう1つの効率化は業務「量」の効率化。
端的に言えば、「何をやり、何をやらないかを決める」ということです。
学校でも特に教員の皆さんには「時間の許す限り最善を目指す」という過多もたくさんいらっしゃいます。
その精神は尊重されるべきですが、その一方で「許される時間」を甘く考えがちであることには十分な留意が必要です。
あることに時間をかけてしまうと、他のことには時間が回せません。
業務の優先順位は本来は教員が決めるべきではなく、学校が決めるべきことです。
本当にそのことにそれだけの時間を使っていいのか、それをまずは考えねばなりません。
そしてその結果、優先度が低い事柄には多くの時間を使わない、あるいはそれ自体をやらない、という決断が必要です。
これもまた、教員が自ら決定するのではなく、学校としての判断、決断が必要でしょう。
ニーズに対応することが全てではありません。
むしろ、教育の専門家として、あるべき姿を保護者に対して明確に示せることもまた重要でしょう。
ただ、ニーズを無視しろということではありません。
ニーズを把握したうえで、学校自身が実施したい、実施すべき内容との整合を図りながら取捨選択する、ということが必要ではないか、ということです。
今朝の日経新聞1面にはこんな記事も。
ヤマト、27年ぶり全面値上げ アマゾンと交渉入り :日本経済新聞
「多少高くてもヤマトを使いたい」
「多少不便になってもヤマトを使いたい」
そう思っている消費者は少なくないでしょう。
これがサービス提供者に対する信頼の証です。
さて御校の保護者は、御校が少しばかりのサービス低下をしようとした際、それを許して下さるでしょうか。
日々の活動で信頼を勝ち得ていれば、学校の苦しい事情はきっとご理解いただけることでしょう。
私学の業務効率化が進み、より質の高いサービス提供がなされることを心から願っております。
(文責:吉田)
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