退職金制度自体の重要性が経営上、下がりつつあるのではないか、
と感じていた矢先のこの記事にハッとさせられました。
日経新聞より。
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労働者派遣事業所の約77%に派遣社員向けの退職金制度があることが、厚生労働省の集計で分かった。同一労働同一賃金の実現を意図し、2020年4月に施行された改正労働者派遣法の効果があらわれているといえそうだ。
今回の集計は2022年12月に実施されたもので、
労働者派遣法で全ての派遣事業主に作成が義務付けられている
「労働者派遣事業報告書」の2022年度提出分から、
400事業所を抽出して分析したそうです。
結果、400事業所のうち、退職金制度があると判断できたのは
全体の約77%、307カ所でした。
抽出による調査とはいえ、かなり高い割合ですね。
記事には派遣法改正の効果が以下のとおり記載されています。
法改正前は、有期雇用派遣で退職金制度の導入例が9%だった。制度が急拡大したのは、改正派遣法の新規定「労使協定方式」が効いたとみられる。労使協定方式は、派遣事業所と派遣社員の間で、厚労省が示す賃金や退職金、交通費の一般水準以上の労使協定を結べば同一賃金規定を満たしたことになる仕組みだ。派遣事業所の9割超が同方式を採った結果、退職金制度の普及に弾みが付いた。
同一労働同一賃金は近年の労働法においてかなり重視されてきていますが、
記事にある「労使協定方式」という方法で条件がクリアできる、
といった詳細な内容を私自身は十分把握していませんでした。
実際、退職金の支給方式別に今回の調査結果を見ますと、
退職金と言いながら毎月の賃金への一定率の上乗せで支払っている
ケースが56%と過半数になっています。
おそらくこれが労使協定方式で許容されている方法なのでしょう。
ちなみに上乗せされる退職金相当額は賃金の5%とのこと。
仮に貴校園が派遣労働者をこのような条件で活用されているとすれば、
その分だけ支出が増加しているものと考えられます。
さて貴校園でもおそらく退職金制度をお持ちのことでしょう。
多くの学校法人は、外部団体に資金を積み立てて、
教職員の退職時に所定の支給率でそれを払い戻してもらっている、
という形を採っておられると思います。
ただ今後を見据えれば、退職金制度の維持にはそれなりにコストがかかり、
果たして月例給や賞与とのバランスがこれまでと同じでいいのか、
といった疑問を持たれるケースも増えることでしょう。
実際、弊社にもそのようなご相談が多くなってきています。
今回の記事では、適用される退職金制度として
「中小企業退職金共済制度」に加入する、といった例もありました。
掛金の総額と給付金の総額のバランスはどうか、
今後に向けて掛金や退職時の追加給付が適切な水準にあるか、
といった点はぜひとも早めに検証していただき、
対処が必要となればこれまた早めに動いていくことが必要だと感じます。
(文責:吉田)