寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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群馬・堀越学園:県が生協に解散命令 清算法人に移行へ

今日は、少し古い記事になりますが、一度採り上げておきたい内容ですのでご容赦下さい。


群馬・堀越学園:県が生協に解散命令 清算法人に移行へ


この記事自体はそれほど大きな意味を持つものではありませんが、これに先立つ「学校法人の破産」が非常にショッキングな事象だっただけに、皆さんも記憶に新しいところではないでしょうか。


本件、これまでの流れについて振り返ってみましょう。

まずは2012年10月12日、文部科学省が大学設置・学校法人審議会に対して以下の通り諮問。

学校法人の解散に関する諮問文

「学校法人堀越学園は、平成19年度以降、これまで再三にわたり管理運営上の様々な問題について指導してきたが、現在まで改善が見られず、以下の事項について、私立学校法等に違反している」との内容で、具体的には、

・設置する学校に必要な施設及び設備又はこれらに要する資金並びに設置する学校の経営に必要な財産を有していない

・組合等登記令に基づく必要な登記を行っていない

・監事のうち1名が欠けており、補充されていない

・適正な財産目録等を作成しておらず、事務所に備え付けていない

・学校法人の教職員に対して毎月支払われるべき賃金が支払われていない

といったことが並んでいます。

ちなみにこの諮問に至るまでの経緯も、同じwebページに記載がありますのでご参考までに。


そしてこの諮問に対し、同年10月25日、大学設置・学校法人審議会から「解散を命ずることは妥当である」との答申がなされます。その記事がこちら。

学校法人に対する解散命令について(答申)


さらに、2013年3月29日の毎日新聞の記事。

群馬・堀越学園:文科省が解散命令 創造学園大など廃止

これは、文部科学省が同校に対してに解散を命じた、という記事。

本件で解散命令は4件目とのことですが、在籍者の転学・転園が伴うのは初めてで、事の重大さを物語っています。

ちなみに毎日新聞のwebページには、この日に至るまでのいくつかの記事項目が以下の通り列挙されています(筆者が時系列に並べ替えました)。

堀越学園>給与未払いで書類送検 「徹底的に追及を」 教員、バイトし授業 /群馬 (02月27日 11時34分)

堀越学園>解散命令後も不透明 ずさんな経理、事態複雑化 /群馬 (03月06日 11時55分)

<1968開校>高崎保育専門学校、男女6人巣立つ 44回目、最後の卒業式 /群馬 (03月09日 12時59分)

スタインウェイのピアノ>堀越学園・解散命令へ ピアノ2台が競売 楽器販売経営者が落札 /群馬 (03月14日 11時44分)

創造学園大>最後の卒業式 証書に学長名なく式辞もなし /群馬 (03月17日 12時32分)

堀越学園・解散命令へ>元理事長に12億円債権 11年7月議事録作成 /群馬 (03月19日 11時25分)

各項目の本文ページはすでに削除されてしまっていますが、上記項目を見るだけでもその影響の大きさがうかがえます。


そして2013年6月6日の毎日新聞の記事。

群馬・堀越学園:破産手続き開始

さらに本日冒頭で引用した記事につながる…というのが顛末です。


なぜここまでに至ったかという点については、以下のYOMIURI ONLINEの記事が参考になります。

大学開学後黒字なし10年度「ほぼ破産状態」


この記事にはいくつかの示唆が含まれています。

まずひとつは、「いかにして学校は破産まで追い込まれてしまうのか」という下りのスパイラル(螺旋階段)。

まとめて言うならば、

回収可能性を無視した過剰投資→思ったような学生の確保ができない→違法行為→イメージダウン→さらなる募集の低迷→収入の激減…

といった流れ。

金額の多寡こそあれ、投資の計画性を思い知るには十分な事例と言えます。


もうひとつは、「学校法人の財務諸表を読み誤ることの怖さ」。

記事にもある通り、「07年度末の資産は58億円、負債は34億円で余裕があるように見える」のが学校法人の財務諸表の厄介なところ。

ですが、これまた記事にある通り、「固定資産の学校施設は換金できず」「負債は現実の借入金で返済しなければならない」、これが現実です。

単に「資産-負債」がプラスなら大丈夫、ということにはならないのが学校法人の財務諸表であることを、今一度強く認識する必要があります。


最後に、情報公開の重要性。

当該学校法人は学生生徒数や財務情報などを一切開示していなかったようです。

確かに、学校の良し悪しはそのようなことでは決まらない、という向きもあるでしょう。

が、どんなに素晴らしい教育内容であっても、それが継続されなければ本当の意味で「良い学校」とは言えないのです。

経営の継続性はどんな環境においても守られねばならない、それが学校というものの社会性、また生徒・保護者各位への最低限の務めであると私は考えます。

その学校を選ぶための情報を積極的に開示することの大切さが再認識されました。


以上、学校法人の破産というニュースでしたが、これを「他人事」と思っていいはずがありません。

永続的に学校を続けていくために、ぜひ他山の石としてご参考にしていただければと願っております。


(文責:吉田)

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